#16 嘘だああああああああ!!
「そうだサービスをやろう」
「サービス?」
戦闘開始早々訳分らんこと言い出すミカエル。
「そうだ。一分間サンドバックになってやるよ」
その絶対的な自信と余裕から「サービス」と称してウラドラにハンディキャップを与える。
「後悔しても知らんぞ」
ウラドラはそのサービスを飲み、ミカエルの横っ腹にパンチをお見舞いする。
「!!!!!!」
なんとウラドラのパンチが撃ち込まれるとミカエルの横っ腹にメキメキとひびが入る。
ガイアやCOSMOSがどんなに頑張っても傷つけることのできなかったミカエルにウラドラはたった一撃で傷をつけた。信じられない威力。
「う……うおぉぉぉっ!?」
それは誰であろうミカエルも驚いており。横っ腹の痛みにもがき苦しんだ。
「だから後悔すると言ったんだ」
一方ウラドラは至ってドライ。のたうち回るミカエルの前に立つと、まるでこうなることが分ってたような物言いで接する。
「サービスは終わりだ! ぶっ殺してやる!!」
ウラドラを脅威と感じたのか時間が二十秒も経過したないのにミカエルは自分が不利に陥ると即座にサービスを終わらせ右ストレートを繰り出す。とんだ約束破りだ。
「!」
ウラドラも右ストレートで対抗。互いの拳がぶつかり合い、大気が揺れる。
「ヌアアアアアアアアァッ!!」
ぶつかり合った瞬間ミカエルの拳が粉々に砕けた。一方ウラドラの拳は何ともない。
「ウォアアアアアアアアァ!!」
この差にミカエルは逆上。一旦距離を取り自らの右脚を突き出し、錐揉み回転しながらウラドラ目掛けて突っ込む。その回転力は掘削用ドリルのそれを遥かに上回る。
これにウラドラは微動だにせず。しかしその姿は恐怖で動けなくなっているようには見えない。むしろ 「真っ向から受けて立つ!」 とでも語ってるようにも見える。
「貫く!」
そうこう説明してる間にミカエルがウラドラの胸に激突。しかしウラドラの体を全く貫けない。
「ヌウウウウッ!」
次第にミカエルに焦りの色が見えてくる。
「無駄だ、ミカエル」
そしてミカエルのやってることが無意味だと強張った表情でウラドラが告げる。
「馬鹿にするなああああああああああああああああああああ!!」
だが、この言葉がミカエルの敵愾心に火をつけた。
彼は力の限り回転力を上げ、音速を越えるスピードを発揮。しかし音速を超えれば空気抵抗による摩擦熱が発生。炎が出る。
「「!?」」
ついには爆発し、二人は爆煙に包まれる。
「「……」」
五秒後、爆煙が消えると互いを見つめ合う二人の姿が見え始める。
ミカエルは全身ズタボロ。一方ウラドラはスーツの胸部分に穴は開いてしまったが本体は無傷。
明らかな差。攻撃したミカエルの方なのに之れは如何に?
「何故だ……」
自らの絶対的な強さを信じて疑わなかったミカエルも膝をつく。それはミカエルの心が折れた瞬間だった。
「それが私だからだ」
ウラドラはきびしい表情で自らの強さを見せつける。その瞳の奥には殺された仲間の怒りがこもっていた。
「あ、ああ……」
ミカエルは戦意喪失。顔は青ざめ池の鯉みたいに口をパクパクさせていた。
「お前の非情な行動はここで終わらせる!!」
ウラドラは腕をクロスさせてミカエル目掛けて殺人光線を放つ。
「ヌワァアアアアアアアア!!」
ミカエルは防御態勢をとるも勢いに押され空に向かって吹っ飛ばされる。その間徐々にミカエルの体を傷りながらドンドン高度を上げていく。
「馬鹿な。この俺がこんな所で……!」
しかしそのような状態でもなぜに自分が負けたかを理解できず、自分のした悪事を反省したそぶりは一切ない。
「俺が負けるなんて嘘だああああああああ!!」
成層圏に突入した時、ミカエルの体が限界を迎え上下真っ二つに割れて大爆発。ミカエルは跡形もなく消し飛んだのであった。
◇
「すげぇ……!?」
塀越しから事の一部始終を見ていたワタルは口あんぐり。
脅威去り安心していたが、ウラドラのあまりの凄さに頭がついていかないようでもあった。