#15 時間稼ぎぐらいにはなるだろ
「!」
ミカエルとの戦闘は続くが、また一人緑の兵士が殺される。
三十人の兵士も残すところあと三人。一方的な戦い。
これはミカエルの戦闘力が高いのもあるが、魔法の窯で生み出した模型の能力は模型の完成度によって上下する為、安物の大量生産品である緑の兵士の戦闘力は低く、普通の人間の八割程度しかないからだ。従って緑の兵士でハイクオリティーフィギュアであるミカエルに勝ち目はなかった。
「ヌワァ!?」
「クッ! 強い!」
苦戦を続けるガイアとCOSMOS。二人共強キャラだがミカエルのパワーはそれを上回る強さだった。
「ザコが束になろうと神に勝てるものか!」
いい気になったミカエルは上機嫌。自らを神とか言い出す。
しかし作品内での種族は天使なのに神とか言うと設定が無茶苦茶になるぞ。
「あんにゃろう! いい気になりやがって!」
ブロック塀からひょっこりと頭を出し、戦いを眺めるワタル。
しかし不甲斐ない戦いっぷりに激怒状態。とても声をかけられる状態ではない。けれども自分では何もしない小心者。
「ワタルさん」
そんなワタルに声をかけ、肩をぽんぽんと叩く者が。
「あん?」
それに反応して振り返るワタルだが、露骨に機嫌悪そうな顔で振り返る。愛想の欠片もない。
「誰だテメェ?」
そいつはスーツ姿の冴えない中年男だった。
「ミカエルを倒すために私が戦います。ですので私をこの人形と融合してください」
このおっさんミカエルを倒すとか言ってる。誠意は買うが、、抱き抱えてる人形はどう見ても人形劇のキャラクターにしか見えない。それもスーツ姿の中年太りのおっさん。
特徴的なカイゼル髭を生やしていたが、とても強そうに見えない。こんなひょっこり〇ょうたん島みたいなキャラクターでミカエルに勝てる訳がない。
「わかった。やってやる」
しかし他に対抗手段がある訳でもないので、やってやることにした。やられるにせよ時間稼ぎぐらいにはなると思ったからだ。
「ワタルさんありがとうございます」
頭を下げるおっさん。
「今はお礼とかいいから!」
こんな時に礼儀などと悠長な事やってられない。だからさっさと融合してやる。
「我が名はウラドラ!」
で、魔法の窯から出てきて決めポーズ。
その姿は蝶ネクタイ付きのスーツを身にまとった、三等身の人形劇キャラそのもの。
茶系の短髪、アンパンみたいな丸鼻、ウインナーみたいな唇、かまぼこみたいな耳、ドラ〇もんみたいな体型……。とても強そうに見えん。
「必ずやミカエルを倒してきます」
「おう、期待している」
そうは言ったが内心全く期待してない。時間稼ぎさえできれば上出来と思ってたからだ。
「それでは行ってまいります」
勇んで飛び立つ。てゆーか羽根ないのに飛べたんか!?
◇
「がはっ!」
ミカエルの右ストレートがCOSMOSの腹に直撃。
「COSMOS!」
ついにCOSMOSも倒されてしまう。緑の兵隊も全滅し、まともに戦えるのはガイアしか残っていない上、そのガイアもダメージで体も服もボロボロにされてる。
「もはやここまでか……」
ガイアは命運尽きたとその場に座り目を閉じる。
「その潔さに免じて一撃で楽にしてやらぁ」
ミカエルがガイアに止めを刺そうと拳を振り上げたその時である。
「待てぇーい!」
太陽の光を背に受けて、空から颯爽と現れる者が。そうウラドラだ。
彼はミカエルの前に着地すると待ったを掛ける。
「その子を連れて早く逃げるんだ」
またウラドラはガイアにCOSMOSを連れて逃げるように促す。
「はい!」
ガイアは機転を利かしCOSMOSをお姫様だっこして走り去る。
「誰だお前は?」
「我が名はウラドラ。お前を倒す者だ」
「はーーっはっはっはっは!! 俺を倒す? おもしろい冗談だ」
真剣に話すウラドラに対しミカエルはなめきった態度。身長差が約六十センチもあることもあって完全に上から目線。
今まさにミカエルとウラドラの戦いが始まろうとしていた。