#13 フィギュア化
「赤き大地の光の亜人・ガイア!」
俺んちの庭でレッド&シルバーのウエットスーツに身を包んだ女の子が訛み声でポーズを決めてる。
歳の頃は僕と同じ十六歳ぐらいか。頭頂部が金色の銀髪ショートカットが特徴的。身長百七十センチと女性としてはやや大柄。でも可愛い。
現実的ではない容姿ちだが、それはフィクションのキャラクターを現実の世界に呼び寄せたからと言える。
この場違いな少女は魔法の窯で生み出されたもの。それと言うのもスグルの連れて来た友人をフィギュアと融合させることになったからだ。
「勇者・COSMOS!」
とかなんとかしてる間にまたフィギュアが実体化する。
今度は身長百七十七センチのブルー&シルバーのウエットスーツ姿の銀髪ショートカット少女だ。これまた可愛いが、また濃いのが出てきたもんだ。
でも、揃いも揃って出て来る度に決めポーズするのだろう? 中二病か?
「できたでぇ~。ほな、次ぃ」
トトイスが威勢よく魔法の窯を動かし、志願者とフィギュアを次々と融合させていく。
人数が多めというのもあり、最初は難色を示していたトトイスだったが、全員自軍に加わってくれることを知るとけろっと態度変えてやる気になってくれる。
なんとも現金な奴だ。まあ、トトイスは俺の技術力を欲してに接近したりもしたので、打算的な性格の持ち主なのかもしれん。
「我が名は正義の騎士ジェダイ・スカイオーカー!」
そうこう物思いにふけってると、また新しい仲間が誕生する。今度は淡青色の髪をした発育のいいロリっ子。だんだん細かく説明すんのがめんどくさくなってきたからちょっと省略。
「ありがとうございますトトイス様」
ジェダイが堅苦しくトトイスに感謝の気持ちを表す。なんか騎士っぽいな。
最初のうちはトトイスを得体の知れないものを見るような目で見てた志願者たちも、今ではすっかり気を許しておだてている有り様。まったくもって現金な奴ら。
「感謝なんてええわ。その代りしっかり働いてぇや」
しかしトトイスは 「言葉より行動でしめせ」 みたいなことを言っている。意外とリアリスト?
◇
なんやかんやで志願者の半分の融合が完了しようとしていた。トトイスと代わり番こに魔法の窯を動かしているが、事は順調に進んでいる。
しかし志願者のなりたいものを見てるとこれが結構興味深い。多くの者は美少女になりたいのだが、中にはハンサムな男や男の娘、果ては人形劇の登場キャラクターみたいなのになる者もいた。
またスグルの交友範囲は広く、上は七十歳から下は九歳と多彩な年齢層。老いも若きも心の寂しい人は結構いるもんですな。
それからもう一点面白い点がある。それは名前だ。
融合が完了すると名前を融合したキャラと同じにする者が現れた。そうするとマネする者続出。スグルも自らの名前を 【フリーダム】 に改名した。けれどもそれに反して本来の自分の名前を使い続ける者や、融合したキャラクター名でも本来の名前でもない名前を付ける者もいた。
作業しながら観察する俺であった。
「ん!? 野火太じゃないか!」
作業を黙々とこなしていたが予想外の事態に遭遇する。それは志願者の中に知り合いが紛れ込んでたことだ。
まさか同じ学園のそれもクラスメートの野火太がいるとは思いもよらなかった。世の中狭いものだ。
「いやぁ……。これはそのぉ……」
殆ど喋ったことがなかったが、気づかないと思ったのか素性がばれると野火太はどぎまぎ。
「知り合いと分かってやってもらえないかも」 と、うろたえているのだろう。
「……。やってやるから、さっさと準備しろ」
んだが知り合いだからと言って特別扱いする気も除け者にする気もなく平等に接した。
「はい! 直ちに」
やってもらえると分かると野火太の顔は晴れ、すぐさま準備した。
そうして野火太を道着姿の凛々しい丸顔の少年 【ノービ=ノービ・オーカー】 にしてやった。
◇
「もうじき昼か」
作業が長引いたので時計を確認するともうすぐ昼。思ったよりも時間がかかってるようだ。
「てきぱきやるぞ! 次!」
気を改め、ピッチ上げて作業を進めるのだった。