二章 三十四 誰か
────冬陽視点
秋斗はリュスを手伝いに、夏希は吸血鬼としての役割を果たすために、春は神様としての仕事を片付けるために、それぞれが役割を果たすために行動。そうして僕が完全に一人になった頃、誰かが隣に現れた。
「本当に、これでよかったの?」
ニタニタと口を歪めて《彼》は笑う。
「いいんだよ。結果的にシステムは壊せたから」
「暴れ足りないくせに。《王界》で僕が君を目覚めさせようとした時だって、満ち足りないままで終わっちゃったし。……壊し尽くさなくて本当によかったの?」
「うるさいって。それよりも、君が僕の欠片なら、君も僕の罪に関係があるはずだ。もう罪はあらかた昇華されたんだから、君もとっとと無くなってくれない?ほら、黙って罪柘榴の糧になりなよ」
この宝石には秘密がある。まず、罪柘榴だなんて、もともとこの世界に存在しなかったということ。罪柘榴をこの世界に混ぜこんだのは僕とよく似た存在、分身のような存在だということ。この罪柘榴を合わせて生まれた宝石は、誰かを呼ぶための媒介であるということ。
封印は何故かまだ完全には解けてくれないけど、この宝石にもっと力を与えればそれも関係なくなるはずなんだ。もう元に戻っちゃったけど、さっき封印に穴を開けたときに色々思い出した。
「いいねぇ。その、《僕》を《自分》だと思っていない所、とても、とっても好きだよ」
『好きだよ』だけ、とてもねっとりと言いながら、彼は僕の頬をつー……となぞった。僕はその手を払う。
「僕は嫌いだよ。さ、《還って》くれ」
君は僕が作ったんじゃない。こんなものいらない。だから、早く糧にでもなればいいのに。
「おー……怖い怖い。でも残念、僕が還ることはないよ。それに僕は君の罪とは無関係なんだからね」
訝しげに彼を見つめる。
「……どういう意味?」
「まず、君は自分の罪に関わることを認識できないように縛られている。まあ、それも大分弱まったから、縛られていたと言おうかな。封印に縛られていたのに《始め》から僕が見えたなんておかしいと思わないのかい?」
「それは……」
口ごもる。今回だって、そこまで考えてはいなかったから。
「これが彼らが君を放っておけない訳だよね。まあ、わからなくもない。……とにかく、僕はある人に頼まれて、君の罪を背負わされずに生まれた存在さ。君の罪だけを背負っていない、使命を課された分身、人形だよ」
「それを頼んだのは、誰?」
何故か声が震える。
「言えるわけがないでしょ?なんたって、彼らは君の共犯者。封印にとても濃い関わりがあるんだから。さあて、ヒントはここまで。あとは夢に沿って動けばいいよ。きっと、君はまた夢を見るからね。んじゃあ、僕は役目を果たしたから、これは返すよ」
彼は何かを僕に渡したみたいだったけど認識することは出来なかった。罪に関わるシステムはなくなったはずなのに、僕を縛るものはまだ無くならないの?




