二章 三十三話 告白
────冬陽視点
「リュス、会いに来たよ」
「ここにどうやって来たのか知らないけど、帰ってくれ。今日は都合が悪いんだ」
「知ってるよ。前に君にも見せたでしょ。僕の血霊の能力は盗んで把握すること」
「なら、わかるだろ。帰ってくれ」
無気力なリュスは、こっちを見ようともしない。
「わかった、少しだけでいい。話に付き合ってくれたらすぐにでも帰るよ」
「……」
リュスうんざりした顔で、僕を殺そうとする。四方から黒い何かが僕を貫こうと飛んでくる。
「やめてよ。物騒だなあ」
「うるさい。もう一度貫かれればいいのに」
……あ。
『そういえばスピネルの能力ってなに?ノヴァは器になれることだったよね』
『さっき自分で言ってなかった?私の能力は盗むこと。記憶や思考を盗めるのよ』
だよね。いいこと考えた。
『それならさ、未来の記憶を盗んでよ』
『出来ないわよそんなこと。秋斗じゃあるまいし』
『継承した記録によると、精霊は自分に関わるもののデータをあらかじめ持って生まれるんだってね。それに、一説には全ての情報はもうすでにある場所に記録されてるというじゃないか』
『……アカシックレコードね。神々の図書館にそれの下位互換が存在していることは知っているわ。でも、アカシックレコードなんて存在しているの?』
ふふ、色々な情報を与えられている精霊が疑問視するなら無いのかもしれないね。でも、ね?
『あるよ。だって、僕がそう望むんだから』
僕には【干渉】の力があるんだから。
「やる気みたいだね。仕方ない、付き合うよ」
肩をすくめて挑発してみる。
「君の余裕綽々なその感じ、いらいらする。君たちは僕に一度負けてるんだよ?」
「関係ないよ。半年ちょっと経ったんだよ?さーて、折角邪魔なものが終わりを迎え入れたんだ。記念に名乗りでもしようかな」
『あなたは混の魔女、シオン・フィルリアータの一人息子。名前の意味をリュスに聞いて』
スピネルの先導にそって言葉を発する。
「僕は混の魔女。シオン・フィルリアータの一人息子だよ。さて、君はこの名前の意味、分かるよね?」
「フィル・リ・アータ……優雅なる、隠された王族……冗談は止してくれよ。君が王の血を引く王族なら、僕たちはきょうだいってことになるんだよ?そんな話、聞いてない」
えっ?まじで?なんでそうなるの?
『これマジの話よ。シオンの先祖は密かに一番始めの王、天の寵愛を受けていたの。ちなみに、リュスは正統に王族の血を引く一族、操よ。あと、魔女は一部でも血の関わりがある同世代の者をきょうだいと呼ぶのよ。よかったわね、一気に兄弟が二人増えたわよ』
『ええ……』
どういうことなの……。
「だって、隠された、だからね」
「絶対に認めない。きょーだいは1人いればそれで十分だよ。やっぱり、君にはここで死んでもらう」
えっと、思わぬ地雷を踏んでしまった気がする。
……まあいっか。本気のリュスと戦えるなんて、とても楽しそう。
あー、やばいゾクゾクする。折角だし色々と干渉
して準備しようか。
【笑声昇華、掌握】
……春、こんな楽しい能力貰ったんだ。いいなあ。始めから3本の剣が生まれる。春とは違って力は宿ってはいないけど、十分使える。掌握でこの領域と空に浮いている3本の剣を掌握する。……うん、いける。
「それ、僕が作った王から春くんや夏希くんに贈られた能力でしょ。君には使えないはず」
「僕の魔女能力は混と干渉。干渉の意味は他人のことに立ち入って自分の意思に従わせようとすること。つまり、僕以外の全てを、意のままにねじ曲げることが出来るんだ」
「兄弟だけあって似てるね。僕の力は前にも行った通り改変。正統な王族の力を見せてあげる」
きょうだいっていうの止めてくれないかな。むず痒いというか、変な感じする。
リュスが僕と僕の剣を改変して消滅させようとする。僕はそれに干渉して無かったことに。そのまま3本の剣にリュスを襲わせる、けど避けられる。
「ね、前みたいに何かを生み出して攻撃しないの?ほら、弾みたいに飛ばすやつ」
んー、つまらないかも。あ、剣が1本消えた。
よし、折角だし封印に干渉して一時的におっきい穴開けて力だけでも使えるようにしちゃおうか。もともと罪に侵されて弱ってたし。
はあ。……ふふっ、この全能感大好き。
「君1人に使うの勿体ない気がしてね。それより、その力まで使えるんだね。しかも面白い性質してる」
逆撫でちゃお。
「流石、この力の性質までわかるんだね、おにーちゃん」
「破壊に再生に創造。神様気取りの力だね。君と同じ」
「僕は神様なんかじゃない。神様になんてなりたくない。ただ、僕らは遊んでいたいだけなんだよ。邪魔なものを無くして、いつまでも」
「それが神様気取りだって言っているんだよ」
諭すように、怒りをのせて言われた。けど。
「でも、君もそんな神様になりたいんじゃないの?」
「……ああ、イライラする。そんなに殺して欲しいの?」
来た。今回はナイフとフォークと幻か。折角だし避けずに壊しちゃおっか。
──
笑声昇華を発動したことで生まれた剣はとうの昔に消えた。もう、楽しさや全能感なんてなくなった。だって、こんな状況楽しめない。
「っ、僕は正統な王族だ、王族が、僕が負けるだなんてことはあり得ない。まだ、まだっ!」
「両腕、両足を切り落とされてもまだ負けを認めないんだね」
世界を改変して、僕を消そうと力をかけているけど、もう、これ以上はなにも起こらない。無駄だよ。もう、終わり。
『縛れ』
魔女の祈り言葉で、神の力で地にリュスを縛る。リュスは白い光で地に縫い付けられ、力さえも使えないよう縛りが与えられた。神金は朽ちたけれど宝石に加護が移ってるからね。とても楽に強い力を呼べていい。
「このまま本題話すね。君は血霊に名前をつけていなかったんでしょ?血霊を本来の名前で呼んでいたんでしょ?」
リュスが暴走し始めたきっかけの話。
「……」
「魔女はなにかを定義し直せるんだよ。君の能力ならジェットくんは生き返ることができるんだよ」
下を向いたまま、リュスは反応しない。少し、恨めしそうな顔はしてるけれど。
「どうせなら、僕が名前を付け足してあげようか。彼の、ジェットの古い名前はスザク。不死鳥の別名とも言われる朱雀だよ」
僕は世界とリュスに干渉して、ジェットの過去の名前として、スザクという名前を混ぜ合わせる。この変更によって、世界に副作用は生じない。たとえこれが禁忌《ルール違反》だとしても。
────リュス視点
『くぁ……あ、ふう。よく寝た。あ、リュス、久しぶり』
好奇心による実験で殺してしまった血霊。僕の背負うべき運命の代償が、色を変えて現れた。
「久しぶり」
命日に再会だなんてイカれてる。きっと、俺はもう一度罪を与えられるべきなんだ。ジェット。
『だよねー。おっきくなったねー』
「……ごめんな」
昔みたいに、ジェットを改変する。昔みたいに、ジェットが弾けとぶ。
「うわ……えっぐ」
それでも、もう一度ジェットが復活する。
『えーっと、どういう状況?』
「僕の罪は、俺が背負うべき代償だから」
もう一度、もう一度背負わなきゃ。僕の一部。雨に打たれたあの日。運命を背負わされたあの日、すべての対価として罪を与えられたんだ。それを無くせば、きっと終わってしまうから。
──
「『守れ』。ジェットくん、初めまして。早速だけど、君の能力を教えてくれる?」
『僕の力は名前の通り。忘却とか、心の沈静化とか、警戒とか、干渉から守ったりするよ』
「じゃあ、頼んでもいい?」
『いや、僕は僕のやることをやるつもりだったんだけどね。君が邪魔なんだ』
「それなら帰るよ。《また》遊ぼうね」
──
あいつは俺の体を治してこの世界から出ていった。
『リュス、僕はもう滅ばないよ。それと、君は罪を背負ったままだよ。一度背負ったものは消えない。だから、君が《あちら側》のことを気にしなくてもいいんだよ』
「……ジェット」
『ゆっくり、ゆっくり話し合いをしよう。ほら、昔みたいに』
────冬陽視点
暫く表の世界で待っていると、リュスたちが眼前に現れた。
「迷惑かけたよね。ごめん」
ジェットくんから全てを聞いたようでめっちゃ意気消沈してる。
「いや、君のお陰で楽しい思い出が出来たから気にしないで」
「ありがとう。……冬陽くん、君はこの世界を元に戻すべきだと思う?」
「今の世界は楽しいけど色々ときついから、能力が発現したぐらいの状況に戻してほしいかな。ほら、今はモンスターとかがたくさんいて、一般人にはとてもきつい世界だから」
まあ今はそれすら無いけどね。
「わかった。それなら少し頑張ってバグとか亀裂は消滅させるよ。でも、暫くしたら能力も消していくからね。外の人たちの記憶も書き換えなきゃ。それじゃあ、またね」
リュスは神様と話してきたり、世界をまた改変するために忙しいようで、手を軽く振ると裏の世界に戻っていった。
全部終わったら、今の力量のままで手合わせしたかったんだけど、無理そうだね。今なら、リュスを邪魔するものがさっきまでよりずっと少ないから、もっとずっと楽しい時間が過ごせたはずなのに。
まあ、それ以上に楽しいことを知っているから、そこにこだわる気もないし、別にいいんだけどね。




