二章 三十二話 崩壊の発端
────冬陽視点
灰崎さんはあの後、全てを更地にし終わるまで暴れ続けた。僕も障壁を張り続けたんだけど、障壁ごと竜巻に呑まれて空に打ち上げられたら流石に張り続けられないよね。ぐるぐる回転して吐くかと思った……。はあ。日本全土で生き残っている人は何人いるんだろうね。
まあ、僕たちは生き残ってるけど。んで、今僕らの目の前には土下座する神様がいる。
「本当にご迷惑をおかけしました」
彼の名前はアズゴル・アリルリート。その横で紐でぐるぐる巻きにされているのがゼルジィ・アリルリート。罪システムを強行採決した当時の最高位に座していた神。
「んぐぐぐぐぐんぐぐぐ、ぐぐんぐぐっぐっぐぐ んぐ」
「訳すぞ。こんなことになるとは思っとらんかったんじゃ。じゃと」
「んぐぐぐぐっぐぐっぐぐーぐっぐ?!」
「それに罪ってかっこいいじゃろ?じゃと。こやつは馬鹿かの?」
「ぐぐぐぐぐんぐっ!!ぐぐぐぐぐぐ!(馬鹿とはなんだ!!我は神ぞ!)」
「あ?」
「ぐぶっ」
春……勢いよく神の頭を地面に叩きつけないの。あんた神の中でも強すぎるって言われるほどなんだから。
「ぐぐんぐぐぐ」
「ごめんなさい、じゃと」
「何度もこのシステムを修正破棄しようとしたんですが、こいつあり得ないくらい固いプロテクト掛けてるんですよ」
「ほははひはへんはいはははは」
「そりゃわしは天才じゃからな」
「ねーこいつ殺していい??」
無邪気な笑みを浮かべられてもねえ?
「殺すのは何度も試みたんですが、本体を何処かに隠している様で死なないんです。本当にわし……私の父がご迷惑を」
……あれ、じゃあ殺してもよくない?
「やっちゃう?」
「やろうよ!!」
「やっちゃうか」
「んじゃあ、やりますか」
バグが消えたから声に出さなくても能力使えるようになって楽。一斉に能力を発動する。
【罪宿】【罪代】【逆ノ罪】【罪の涙・大罪の雨】
罪宿で罪人の体と魂を縛る。それだけで鎖は止まらず、細い鎖が口から入り体内を蹂躙した。そして、あらゆる箇所に罪を植え込む。
「喋ったら貫くぞ」
罪代で罪人の力を全て奪い、抵抗する意識だけを消す。そして本体の隠し場所を視る。
「意外と近くにあったで、本体。人間でいう胃の辺りに領域へのゲートがあるらしいわ」
【限定・固定化】
領域へのゲートのみを固定化してから大鎌で邪魔な部分を、全身の罪を切り、肉体ごと吸収する。そして、大罪の雨で罪人が生き残る未来の可能性を、因果を操作し完全に消す。
「この領域には誰が入る?」
「僕が。ちょっとやりたいことがあるんだよね」
「りょーかい」
【拡大】
────春視点
「やあ、あんたが本体?きっと、僕が生きていた時代よりも、もっと前から存在してた神様だよね?かつての僕の神名はファウ・ア・ルフ。ルサールカとリディルのその後が知りたい。だから記録の鍵を頂戴?そしたら、今ここで楽に殺してあげるから」
本体は鎖で口を塞がれていて喋れない。ここまで鎖が届くのってすごいね。流石秋斗。
逆ノ罪でゼルジィ本体の神としての力を全て解放し、喋るだけの余裕を与える。
「鍵は、やつの父親が持っていた」
「やつ?言葉には気を付けなよ。僕は断罪を司り地獄を治める神だよ?」
「ルサールカの父親さ。あのへ」
「そう。じゃあ死ね」
あーあ、喜歌をこいつに使う訳にはいかないんだ。てか、別に、過去形だろうがこいつが持っていない事が分かればそれだけでいい。もとよりこいつを楽に殺すことなんて考えていないしね。
逆ノ罪で、僕の神としての力を解放して、本体の体に宿る全ての力をゆるゆると奪い、そして急激に力を戻す。
虚ろな表情の中、本体は微かに苦悶を浮かべる。
「苦しい?それがあんたの背負うべき罪だよ。それに他の罪も混ぜてあげる。罪は便利だよ?溢れても纏わりついて、ずぶずぶ沈んで、自力じゃ逃げられないんだ」
だから拷問には最適なんだよね。
罪を領域外から集めて、少しずつ本体に流し込む。
「これは全部あんたの生んだものだ。全て流し込んで一緒になった後、そのままの状態で地獄の生活を謳歌してもらうよ。懲役は……そうだね。全ての罪があんたを赦して昇華するまでだ」
それじゃあ、さようなら。永遠に苦しめ。どうせ赦されることは無いんだから。
だって、絶対にボクの罪が赦さないから。
──
「ごめん!罪全部使っちゃった!! 」
「いや、正確には他者の領域内には残っとるから全部じゃないで。あと、俺達の中にもほんの少しだけ残ってるし」
「……あ!リュスのこと忘れてた。今日がリュスの血霊の命日なんだってね」
「あー、そういうことか。リュスは自分の血霊を自分で消滅させて、それを罪として背負ってる、と」
「それなら、その罪も昇華させた方がいいよね。それに、世界直すのにリュスの力はあった方がいいし」
「……ん、じゃあ、僕だけで行ってくるよ。後はよろしく」




