二章 三十一話 ヒトのもたらす裁き
────冬陽視点
どこからか女の人……女の人?……え?あ、いや、灰崎さんの声が聞こえる。きっと離れているはずなのに、はっきり聞こえる。……空に響いてる?
「なんだこの状態は……これが、神の見守る世界であるというのか。人も人だが、神も神だ。なぜここまで多くの罪を抱えている。なぜ罪の無い生き物たちに無駄な死をもたらす。可笑しいだろう。いままでの時代は、世界は、この世界のように歪みによって壊れてなどいなかった」
きっと、どこかで思っていた以上の惨状を見たのだろう。彼女の声は静かに響き、声に答えるように瞬く間に空は雲に覆われた。風が渦巻く。ぽつぽつと、無色の雨が降りだす。
雨が全てに触れた頃、長い沈黙の後、彼女は再び声を発した。
「……今の私は神ではない。だからこそ、この世界のルールには抵触していないのであろう?それならば、今世の使命はこれなのだろう。さあ、滅べ」
声は平淡だが、言葉から意志が感じられる。とても強い意志が。それに呼応するかのように、天候はどんどん荒れていく。大きな雨粒は強風に乗って、まるで刃のように降り注ぐ。虚空から溢れ出たバグをどんどん切り裂いて消滅させていく。
『私は人であり神になることが決まっている存在。歪んだ世界よ。私の怒りを、裁きを受けろ』
灰崎さんの声に力が宿る。魔女の祈り言葉のように。神々の詠唱のように。
『【神嵐劫禍】』
神嵐劫禍という名が、全ての力を掌握し、操るための鍵なのだろう。荒れた世界はピタリと時を止め、1つの大きな稲妻に視界と音が支配された直後、姿を変えた。
とてもやばい予感がする。全力で化け物以外の存在を固定化する。
「【限定・固定化、障壁・指定・最大展開、範囲防護】」
大粒の霰が大きな音を立てて降り注ぐ。とても強い、意思の宿った風が吹く。大きな大きな雨粒が化け物を穿つ。また大きく力強い稲妻が落ち、視界が奪われた一瞬で燃え盛る竜巻や雷を抱く竜巻、そして、白く濁り、何を抱えているのかすらわからない竜巻が何本も何本も生まれていた。
いや、オーバーキル過ぎるでしょ。世界壊す気かよ。僕はシステムを壊そうとしてただけなんだけど。あ、さっき世界を壊そうとしたのは雰囲気でて楽しそうだったからなんだよね。ホンネジャナイヨ。
……うん。まあ障壁たくさん作っといてよかった。片っ端から破壊されてるから、暫く作り続けないと。




