二章 二十九話 大罪の雨
────冬陽視点
「あー、頭くらくらする」
完全に侵されてた。いや、僕が望んだことだし、少し色々と過激で極端な考え方になっちゃってただけなんだけどね。
「馬鹿。暴れすぎなんよ」
「そーだそーだー。痛かったんだぞー」
「ばっっかじゃねーの?てめーらやってること変わんねーだろ。ほら空に上がるぞ」
ああ、秋斗。空……って、空?!
「待って!空どうしてこっちにいるの?!!」
「こいつに呼ばれたんだよ。ったく、俺は子守りじゃねーのによ」
え、え??
「おー、やばいのじゃ」
「よくここまでやったわよね」
「……スピネルにノヴァ、人間になれたんやね」
「違うわよ。秋斗にやられたの。手が足りないから手伝えって。ったく。突然あんな陣書かせるんだもの。後で夏希にお腹いっぱい食べさせてもらうんだから」
「俺かよ……」
「陣ってなあに??」
「あー、修行の成果。対応する陣でなんでも召喚できるんだ。罪も金も人も命も気候も音も。まあ、陣を書くのに少し時間かかるけど」
「ほー……。あっ、秋斗久しぶり。てかこれ確かに酷いね」
「ん、ちょっとやばそーなとこで暴れてくるね。【逆ノ罪:真剣ルシラーダ、狂歌・喜歌】」
さっきと色違うね。そういえば昔凄い色してた気がするけど、こっちのほうがきれいでいいね。
「あ、今度は透明だ」
「こっちが本当の色なんだ!それじゃあまたあとで」
「俺はあっちで人保護してくるわ」
「いてらー」
「あーい」
春と夏希が飛んで行ったすぐあと、スピネルとノヴァは精霊に戻った。
……いつの間にか、天狗系の呪いで災いが日本の外に逃げないような結界張られてるね。暗躍してて忙しいんだろうなあ。
「冬陽、あの裂け目わかるよな」
「うん」
「あれ塞げたりしない?」
「やってみようか。さっきまでの罪解放して。だいじょぶ、ちょっと雨を降らすだけだから」
「あい。呑まれないように補助だけはするわ。【罪宿】」
「【大罪の雨】」
罪を丹念に精錬し直す。気持ちを切り離して昇華させ、純粋な罪の要素だけをもう一度練り直し、その罪で横笛を構築し、想造する。
さあ、《雨》を呼ぶために、罪から生まれた笛を吹こう。
『罪よ、罪よ。すべての罪よ。集まれ、宿れ。……こんな、どうせ罪だらけのセカイなら、みんなで等しく罪を背負おうじゃないか。集え、集え。集まれ集え。等しく降り注げ。地に、命に、世界に』
思いを乗せて曲を奏でる。音で世界を覆うように。罪で世界を埋めるように。溝を罪で隠すように。
これは、徹底的に世界を呪う歌。
ふふ、あははははっ!やっと、遂に終わりが来る。さあ、呑まれ《《ちまえ》》っ!こんな世界、壊してやるよっ!!
────???視点
「さあ、逃げずに見つめなさい。ここから見える景色を受け入れるの」
「世界が……壊れている?」
何故か、悲しい。私の悲しみを代弁するかのように、空から黒い雨が降り注いでいる。まるで人為的な雨のよう。分厚く広がったふわふわの雲は、時間とともにだんだんとしぼんでいく。
雨が当たった場所から、じんわりとなにかが広がっていく。……私はこれを知ってい、る。
「罪が降ってる」
「そう。これは私たちみんなが背負うべきもの」
「なぜ皆が背負わなければいけないの」
「神が致命的なミスを犯したからよ。だから、私たちも等しく背負わなければいけないの」
そんなこと、赦されないでしょう。神様にだって罪のない人々にだって。こんなことを望むのは罪を背負う人々だけ。
「それを許容出来なかったのよ。人も世界も。だから、世界にバグが生まれて、壊れてしまったの」
ああ、駄目。思い出す。今回は封じておかなきゃいけないの。
「もうそろそろ目覚めてしまえばいいじゃない。どうせあなたも罪に触れたんだから」
駄目。私は今までを無駄にする訳にはいかないの。私には……わ、たしに、は……もう、時間がない。




