一章 七話 起床
────冬陽視点
「ん、んぅ?」
なんか近くに居る気がする……てかねむい。
『おはよう、やっと目が覚めたんだね』
「ん?誰?」
あー、まだ目のピント合わない。しかもなんか眩しい。カーテン閉めっぱのはずなんだけど。
『君のナビゲーターだよ。ちなみに君は二ヶ月も眠ってたんだよ?しかも、能力が完全に適合している。そして、能力が育ち過ぎてる。君は一体何者なの?』
なにこのごちゃごちゃうるさいやつ。イライラしてきた。
「……後でいい?僕寝起きなんだけど」
『え?あ、ごめん』
「あとどうしてここにいるのか知らないけど、暫く家の外にでも行っててくれる?うるさい」
そう言って、僕は脱衣場に転移した。
──
『なんでこうなったのかなあ、僕はあの人の能力なのに。うう、2ヶ月も起きないから部屋でずーっと待ってたのに!……あーー!もうやだ!家出してやる!』
──
「ふう、さっぱりした」
なにか忘れてる気がするけど、まあいいや。忘れるぐらいなら重要じゃないんだろうし。しかし、随分髪伸びてたなー。取り敢えず前髪はてきとーに切ったけど、後で春に切ってもらおう。……邪魔だしゴム創って髪結ぼうかな。
冬陽は、風呂から上がり一心地着いて、そんなことを考えていた。そして、思い出した様に収納空間から薬を取りだし、とある事実を知った。新しく貰った薬を飲み忘れていたことに。
冬陽は取り敢えず薬を飲み、外がどう変わっているのかの確認のために準備した。準備と言っても、ただ着替えて、邪魔になら無いよう髪を結んで、光学迷彩を使い、外に出ただけなのだが。そして、冬陽は重力を操り空を飛んだ。
上空から街を見ると、以前より人が少ないことがわかった。これは秋斗たちに何があったか、また聞かないといけないらしいと感じながら冬陽は久しぶりの外を楽しんだ。
──
その頃、秋斗たちはカメラの前で喋っていた。
「皆さーん、お久しぶりでーす!」
「俺らは今、能力完全解放地区にいます」
「てか、そこに住んでるんやけどね」
「まぁ、そんなこんなで元気にやってます」
「これからたまーにこっちの様子を紹介するよー!よろしくねー?」
「それと、能力で困ってる人がいたら動画の説明文に書いてあるメールアドレスかツイッターで連絡してな。一気に全部は無理やけど、必ず助けに行くから」
映像を確認していた男が少し離れた秋斗たちに聞こえるように声を張り上げた。
「はーい!おーけーです!」
「はーい!お疲れ様でした」
「久しぶりにやったな」
「だねー。しかし、とうとう冬くん起きなかったね」
春は少し悲しげに呟いた。
「いや、起きたらしいぞ、メール来てた」
「ほ?!帰ろ!今すぐ帰ろ!!」
「や、今散歩中だって」
「うー。まじか。早く会いたいなー」
「なら、今のうちに説明する事整理しとこか」
「だな」
──
冬陽が散歩を続けていると、何故か周囲の空気が波打っていることに気がついた。地上に能力者が居るのだろうと考え、冬陽は高度を下げて、波の起点へ向かった。
波の起点には3人の子どもがいた。冬陽はまず子どもたちの様子を見てみることにした。彼らは会話をしてるようだった。
冬陽は彼らの手が届かない程度の高度まで更に降りて、少し風を操り彼らの話を聞いてみることにした。
「なー、鳥なんて何処にも見えないぞー?」
「ほんとなんなんだろーな?」
「……今日のところは鳥なんて諦めて食べ物探しに行きません?」
「でもよー、そろそろ肉くいてーじゃん!」
彼らはお腹がすいているらしい。食糧ならたくさんある。そして子どもを見捨てるのは……と思った冬陽は、風に自分の声をのせて彼らと話してみようと試みた。
「君たちお腹すいてるの?」
「あったりめーだろー!食べ物なんてここら辺じゃそうそう無いんだしよ」
「まって!誰、この声」
「え??」
「姿をみせろ!!」
「えー、僕のこと襲って食べようとしない?」
少し茶化しながら、敵意が無いことをアピールする。
「2人は黙っててね、もしかして空にいるのはあなたですか?」
「だよ、鳥じゃないよ」
「能力者……ですか?」
「うん、でも君らの敵じゃないよ?君らが僕を攻撃しないなら、僕と一緒にご飯食べない?」
この言葉を聞いた子どもたちは少し警戒を強めた。
「え??あ、え?」
「怪しい!!まずは姿をみせろ!!」
「あの、僕たちには攻撃できる能力はありません、お願いです。姿を見せて貰えませんか?」
冬陽は地面に降りて、透明化の能力を解除した。
「なんか出てきた?!」
「……こんにちは」
「はい、こんにちは。まず自己紹介しよ」
「俺は大希、大きい希望でだいき!波作れるぞ!!」
男の子は元気いっぱいにそう言った。
「ちょっと大希!能力はだめー!」
「こいつ弱そーだから大丈夫!」
二人は兄妹なのか息ぴったりだ。
「えっと……先程から失礼なことばかり、ごめんなさい!僕は悠里です、悠な里でゆうりです」
一番小柄な男の子、悠里はあまり冬陽を警戒していない様子で、落ち着いて自己紹介をした。
「最後は私!望!希望の望でのぞみ!あなたは?」
冬陽は少し悩んでから、自分の名前を言った。
「僕は夜、昼の反対の夜でよる、よろしく。ねえ、早速だけど、料理出来る場所知らない?」
「姉ちゃん料理出来んのか?すげー!」
「ね、僕男なんだけど……!!」
「えっ?」「え?」「ええ??」
子どもたちは仲が良いようで、ぴったりと息を合わせてそう言った。
大希たちが暮らすマンションの一室まで連れてこられた冬陽は、とりあえず彼らの事情を聞いていた。
「へえ、君らは親と離れちゃったんだ」
「はい。暫くはカップ麺とか有ったんですけど、もうすぐ無くなりそうで」
この子たちは3人だけで暮らしているみたい。
「あ、アレルギーとかある?」
「牛乳きらーい!」
「んー、じゃあカレー好き?」
「好きー!」
「じゃあご飯炊かないとね」
こういう時にカレーって定番だよね。
「あ、僕やります」
「えらーい!」
「あっちで遊んでても良いんだよ?」
「大丈夫です」
悠里くんは僕との話に付き合ってくれるみたい。でもその前に、お米を出さなきゃ。
「そっか、お米これね」
「でてきた?!」
大希くん、元気が有り余ってるみたい。少し遊んでて貰おうかな。
「悠里くん、ちょっと待ってて。2人は隣の部屋で遊ぼっか。行こっ」
隣の部屋に移動して、部屋全体に空間固定と重力操作で……。
「浮いたー!」「うおー!!」
「暴れても大丈夫だからねー。物がふわふわ浮いてるけど、触ると簡単に動くよ。んで、どんなに頑張っても何も壊れないからねー」
「兄ちゃんやべー!」
うんうん。楽しいみたいでよかった。次は……。
「お待たせー」
「お帰りなさい、隣、凄いですね。……お米研ぎ終わりました」
「貸してー」
冬陽は米を炊飯器に入れ、収納空間の中に入れて、空間の時間を早めた。
「夜さん凄いですねー。沢山能力持ってるんですね!」
「まあねー。さて、カレー作ろっか」
「はいっ!」
「できたよ!」
「飯だー!」
「早く食べよ!」
「先に食べててもらっていい?」
「いいんですか?」
「うん。ちょっと外で電話してくる」
「もしもし、夏希?」
「おはよ。今どこにいるん?」
「さあ?何処だろう」
実はここがどこだかよくわかってないんだよね。
「まだ帰ってなかったん?」
「うん、ちょっと色々あって」
「なんか成果あったん?」
「子ども拾った」
「……はい?」
長くなりそう。先に食べ始めてもらっててよかった。
「あー、そういうことか。理解した。それなら警察に行った方がええな」
警察?
「どういうこと?」
「詳しくは会ったときに話すけどな、能力者の隔離が始まってから、警察で能力者であることを登録すると、食べ物が貰えたり、保護して貰えるようになったんよ」
「へー、ありがと。助かる。それとね、今日お昼ご飯いらない」
夏希のご飯が恋しい。
「そっか、わかった」
「また後でね」
「ああ。でも、なんかあったら電話してな。電話ならいつでも話せるんやから」
「ただいまー、まだご飯ある?」
……これってただいまでいいのかな?
「あるよ!」
「夜にいの分のこしたぞー!」
「ありがとー!」
残してくれてた!僕の遅めの朝ごはん!……朝からカレーって重くない?まあ普通に平気だけど。
「……美味しかった」
「だなー!」「ねー!」
「良かった」
作って良かった。なんかめっちゃ嬉しいな……夏希に料理教わろうかな。
「ありがとうごさいました!」
「どういたしまして、ねえ、もう食べ物無いんだったよね?」
「だよー?」
「そっか、ならさ、食べ物を貰えるように手続きしてこようと思うんだけど。いい?」
「ご飯貰えるのかー?いいぞー!」
「そっか、じゃあ、誰か一人ついてきてもらえる?」
なんか誘拐するみたい。しないけど。
「僕が行きます」
「わかった、ありがとう。二人とも、また後でね」
さて、警察署……か。




