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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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二章 二十五話 割れた世界と壊れた未来

────『雨』視点


「……おや、あまごいが近づいてきましたね。憐さん、私のローブの中に隠れていてもらえますか。はい、ありがとうございます。それで、なるべく背中にぴったりくっついていてください。決して外を覗かないように」


私の眼前に雩の者が来た。私にギリギリ当たる程までに雨は退けられている。この一族は私を退ける力を持ちながらも、《私の》雨に固着している。


「雨様、どうして私達に恵みの雨を降らせて頂けないのでしょうか」

「私はただ雨を降らせているだけですよ。それを退けているのは雩一族の能力では?」

「そんなこと!あなたの力であれば容易く覆せるはず……!それなのに、それなのにあなた様方は、どうして……?」


やはりこの一族は嫌いです。崇められても困るのですよ。私の力は特定の何かと雨を降らせるだけなのですから。


「ああ!わかりました……。貴方様の血を貰って、合の娘にでも、私の体に貴方様の血を合わせてもらえばいいのですっ!!」


この一族はいつもこう。勝手に崇めて、一方的な思い込みで《私》を殺す。今回も、いつもと変わらないのでしょう?


「ははっ、はははははははは!」


彼は懐から刃物を出し、徐々に歩みを早め、間を詰める。そして、笑いながら私に刃を突き立てた。


「っ!おにーさん!!【操罪鎖そうざいさ・マリオネット】」


雩は憐さんの能力で自我を失った様ですね。この子にぐらいは、私を『私』と覚えていて貰ってもいいでしょうか。……きっと、駄目なことなのでしょうが、まあ、最後の我儘くらい良いでしょう。


「憐さん、私の名は、『すばる』と、言います。……『かなた』に、貴女を任せました」


次の雨が、優しいことを願います。


「すばる、私の、本当の名前は、みらい!まだ死んじゃ駄目だよ!!」


ああ、みらいさん。……感情が流れてきました。貴女はどこまでも優しいのですね。


「みらい、さん。私の……運命は、ずっと、決まっていたの、です。いままでありがとう。さようなら」


最後に幸せな夢をありがとう。

また、どこかで会いましょう。


────憐視点


すばるおにーさんは透明な液体になって地面に染み込んで消えてしまった。雨はさっきより強くなって、雩の能力を飲み込んで、雲が空を覆った。

久しぶりに雲を見た。暫く、空を見ていた。


一色の空はいきなり裂けて、黒い溝から人が落ちてきた。人は静かに着地して、私に微笑んだ。……この人、こわい。


「初めまして。未來さん、貴女のことは先代の雨の記憶で知っています。暫く、私が貴女を守りましょう。それが先代の望みですから。さあ、何処に行くのですか?」

「……白いローブを纏ったおにーさん。雨ってなに」

雨一族わたしたちのことですね。私達は先の雨が生滅した時、一族専属の《刻知らず》から記憶を受け継ぎます。刻知らずは雨に宿り、触れた雨一族の記憶と感情を読み取ります。それを代々受け継いで、我々は存在しているのです」


やっぱりこのおにーさん、こわい。


「おにー、さん。さようなら。私は、帰るよ」

「送り届けましょう。それが彼の願いなので」

「いいよ。おにーさんは、真っ白なのに黒すぎてわかんないから。ばいばい。【操鎖そうさ・マリオネット】」


白黒のおにーさんを無理やり鎖で封じて、雩の人よりも先に鎖がほどけるようにして、私は急いでこの場を離れた。




すばるおにーさんがまだ死ななければ、もうちょっとだけ先に進めたのに。始めにみた幸せなみらいへの分岐はもう無いみたい。私はどこで間違えたのかな。


すばるおにーさん、ごめんなさい。私があの時着いていかなければ、きっとあなたはもう少し長生きできただろうから。

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