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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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二章 二十二話 昔の約束④飢えと許し

────夏希視点


「ごめん。なんかクソ重い話になったな。んで、練習どんな感じ?」

「いや、ごめん。やってなかった。……にーちゃん、その笑顔、さっきより怖いかも」

「いや、内側からリードしちゃるだけやから。練習しよか」




「っぁあ!やばいっ、これ、やばいって!!」

『その感情で黒を白に塗り替えるんよ。出来るよな?』


肯祐の頭の中に入り込んで、深い所から誘導しながら、わざと脳内に声を反響させる。


「しゃべんなっ!くる、くるからっ!やめっ、ろ!っあ?……っはあ、はっ、はあ……」

「今の結構良かったよ。ご褒美あげようか?」

「それ、こわっ、い。でも、きゅーっ、けー、くれ」

「……ああ。腹減ったろ」

「それより、疲れた。つっら……。もっと、優しく」

『やだ』

「っ兄貴!!」


あー、楽し。


「ごめんて。ちゃんと休憩させる。よく頑張ったな」


頭を撫でるとやっと落ち着いてくれた。さっきの恐怖より簡単で強い感覚っていえばこれだからな。


「……まあ、サキュバスどもより、マシか」

「あれメデューサやなかったの?」

「どっちも」

「そか」


結局化け物なんな。




「なー、めっちゃ美味しいんだけどー。腕あげたー?」

「せやろせやろ。なっ、俺の味付け好き?」

「母さんたちの味付けよりも大好き。暫くこっちで一緒に住も」


さっきの受けてまだ言えるんな。今の俺おかしいのにそれでもなんかね。少し脅してみよか。


「狂わされたいん?」

「少し。てか部活でいっつもしごかれてるから息抜きしたい」


……もしや、弟がMに目覚めた……あれで?やっば。


「てかそれ髪切らんからやろ」

「もともと変なルールで従う意味がわかんねーから。しかも強くて抜けられたくないからって黙認するような所だぞ?絶対嫌だ。それに俺はMじゃないからな。たまにはって感じだからな」

「わかるわー」


半分くらいな。


「兄貴捩じ伏せるの大好きだもんな」

「気持ちよくない?」

「わかる」

「よなー」


さすが兄弟って言いたいところやけど、そんなところ似なくていいっつーの。


「ちと先輩たちに話してくるわ」

「ってことは?!」

「ああ。一週間な」


4日あれば完全に馴染むだろ。それに、一週間経つ前に息抜きにバテてリタイアするだろうし。




「あーにき、なに読んでんの?」

「書斎の本。肯祐はまだ読めないはずだから覗いてもいいぞ」


やるなら徹底的にな。


「それ文字なの?」

「ああ。飢文字きもじつってな、飢えた感情を満たす手法が込められてる。読めても理解できなきゃ意味がないんよ」

「それって……」

「肯祐、優しく焦らされる方がいい?酷く雑に扱われたい?それとも、激しく搾り尽くされるのがいい?」


ユウにバレたら絞められるな。


「兄ちゃん、さっきのまたやんの?」

「もっと強いの。狂わされたいんだろ?壊してやるよ」

「このドS野郎が」

「にーちゃんな、もう人間止めてんだ。だからさ、肯祐も戻れなくしてやるよ。大丈夫。狂わせても、最終日には必ず全部戻すから」


でも。だから。一週間だけ俺にくれ。


「にーちゃん……いいよ。俺、我慢する。一週間でも、二週間でも。でもその間、昔の約束ことを忘れて欲しい」

「……ははっ、酷なこと言うなよ」


今だって、ユウが帰ってくればと思っての行動なのに。


「その代わり俺の血を飲んでいいよ。美味しい状態にして」


ほんと、どこまで教えられてんだろな。


「肯祐、おにーちゃんな、血嫌いなんよ」

「……もしかして」

「昔、ユウの血を目の前で見たから。話したことあったよな、ユウと俺の最後やくそくのこと」

「断ち切らないと前には進めねーぞ」

「いいんだよ。進めないままで。俺はここにいる」


まだ、鮮明に覚えてる。


『ナチ。もう、いいんだよ』


何度も何度もそう言う声は聞こえた。なら帰って来てくれよ。じゃないと、前になんか進んでやんない。俺はここで待ち続けるから。

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