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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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二章 十八話 願い種②思い出せない記憶

────冬陽視点


楓さんはいつもふんわり微笑んでる。基本的に、そんな感じの穏やかな人。


「そっか、だからだったんだね。ありがと」

「いえいえー、お役に立てて嬉しいです」


でも、なんで見てきたみたいに全てを知ってるんだろ。楓さんは人見知りで恥ずかしがり屋。だからこそ隔離されたここにいるんじゃないの?


「ね、楓さん。なんでそんなに知っているの?」

「……秘密ですよ」

「えー、気になる」

「んと、それなら、1つお話を話してあげましょうか」


──


まだ、魔女が表の世界にいられた時代のあるところに、この物語の主人公となる親子がいました。


「おかーさん!今日ね、授業参観があったんだよ!」

「え?私お知らせの紙見てないよ?」

「えへへ、うーんとね、見せるの忘れてたの!」

「あー……今回はそっちだったか。ふーくん、お母さんに言いたいことは?言わなきゃいけないことあるよね?」


母親はしゃがみ込み、子どもの顔を覗き込みました。顔を覗かれた子どもは少し考え、口を開きました。


「?……あ!なんかね、みんなのおかーさんたち、目の色が変わったりしないで、ずっと同じだったの!おかーさんたちとは違うんだね!」

「そーだよー。ねね、ふーくんはどっちの目が好きー?おかーさんの目?それともみんなのおかーさんの目?」

「おかーさんの!!」

「ありがとー!お礼に、ご飯の時間まで一緒に遊んでいよっか!」


そういって母親は嬉しそうに子どもに抱き着きました。


「わぁわ!やったー!!おかーさんすき!!」




こんな平和な日々を送っていた親子は、降って湧いてきた絶望によって平穏な日常を失ってしまったのです。


「な、んで、深冬っ!……今ならまだ間に合うっ!まだ、まだ……」

「お、おかーさん、目が……」


母親は目を赤く染め、それを見た子どもはとある昔話を思い出しました。


『赤い瞳は禁忌の瞳。魔女が禁忌に触れるとき、大きな何かが失われる』


ということが書かれたお話です。


「冬陽、大丈夫。お父さんは死なせない」

「でもっ!それはダメなことなんでしょ!?」

「冬陽聞いて、魔女はね、本来目の色なんて変わらないの。いつからか、誰かがそう定義したから今の形になっただけなのよ」


母親は、覚悟の滲み出る眼差しを一瞬子どもに向けました。そして優しく微笑んだのです。

子供にも、その覚悟は伝わったのでしょう。


「おかあ、さん?」

「だからね、私はもう一度定義し直そうと思うの。自分達のことは自分達で決めるべきだと思うから」


そうして母親は、不思議な言語でこう呟いたのです。


『偉大なる魔者ましゃの血を継ぐものの瞳が染まるとき、それは大きな決断をしたときだ。その決断に我らの神は答えるだろう。神よ、貴方が育てた命は、今、変革の時を迎えた。……お願いです。もう一度、力を貸してください』


子供にもその言葉の意味は伝わりました。子供は母と父の様子をちらっと確認して、目を閉じ手を組みます。そして、願いました。


『神様、助けてください』


子どもが目を開くと、なんと、二人の祈りが神に届いたのか、父親の体を無惨に貫いていた木は消え、体の傷は姿を消したのです。


「おかーさん!!これなら、お父さん助かるよね!?」


子供が発した言葉に母親は答えず、ただ静かに涙を流していたのでした。


──


なんで、こんな話をしたんだろう。


「冬陽さん、覚えていませんか……?」


楓さんは泣きそうな目で僕に聞いた。


「ごめんね、多分僕の話なんだろうけど、終わった後からのことしか思い出せないんだ」


僕にも、よくわからないんだ。何があったかの記憶が綺麗さっぱり消えているから。


「まだ、なんですね……えっと、引き止めちゃってごめんなさい。みんながあなたを探しています。そこまで届けるので、またなにかあれば呼んでください……」


楓さんは、小屋に戻った。そして、僕が瞬きをすると辺りは平原に戻っていた。


────秋斗視点


「負けた……」

「な、もうそろそろ迎えに行こうぜ」

「誰を?」

「ほら、さっきの誰か」

「んー……そうだね。お迎えに行ってくるよ。みんなは待ってて!」

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