二章 十七話 願い種①幼馴染みは変わってる
────冬陽視点
僕の名前は蒼希冬陽。
父親が事故で死んじゃって、母親は《壊れかけて》消えちゃった。今は秋斗くんの家にお世話になってる。
秋斗くんは不思議な子。自分を保てなくて、しょっちゅう他の子に侵食されてる。
例えば、僕が友達の話をしていると、秋斗くんはその話に出ていた子みたいな性格になる。暫くすると、その性格すら保てなくて、気を失うんだ。で、気を失った後はもとの秋斗くんに戻るんだ。
最近秋斗くんは、自分を保てないことが減ってるみたい。僕と一緒の時はいつも《秋斗くん》のまま。でもそれ以外の時はまだ保てないことが多いみたい。
いつの間にか、秋斗は《逆》になっていた。僕といるときは別人格が出て来やすいみたいで、秋斗の性格は目まぐるしく変化する。一応、昔と違って自分がどんな性格かは定着したみたいだけど、そのままで保てないみたい。
僕は、気になって気になって仕方がなかった。
『秋斗の頭の中はどうなってるんだろう』って。
だから、秋斗が眠っているときに、そっと彼の頭を触って、中を見ようとしたんだ。
そしたら、いつの間にか眼前に大きなマンションがあったんだ。明かるい部屋もあれば暗い部屋もある。
ここはどこだろう、って辺りを見回してみると、空には満点の星空が。後ろにはなにもない草原が広がっていた。
なんとなく、マンションに近づくのは気が引けて、僕は草原を宛もなく歩いていた。
……はずだったんだけど、眼前には木で出来た小屋があった。辺りは木で囲まれていて、外への道も見えないけど、空はとても綺麗に見える。
「どーしてこんなところにいるんです?」
いつの間にか、小屋のまえには切り株があって、その上には僕と同い年ぐらいの少女が座っていた。
ここが秋斗の頭の中なら、一応声の主に心当たりはあるんだけど、確証が持てない。
「こんばんは。ちょっと迷いこんじゃって。ここは秋斗の中……だよね?」
「はい、秋斗さんの精神世界ですよ……あ、私は楓です。メープルシロップとかの楓です」
「楓さんかあ、よかった。……いつもと状況が違うから、自己紹介してくれてありがたいよ。それで、ここの事を詳しく教えてもらってもいい?」
楓さんは恥ずかしがり屋で、いつも表面に出てこない。秋斗たちも、楓さんのことは知らないみたいで、この子は僕だけと友達なんだって。
────秋斗視点
僕の名前は神城秋斗。妹と、お母さんと、幼馴染の冬陽くんと一緒に住んでる。お父さんは仕事で留守のことが多い。でも冬陽くんがいるから寂しくないんだ。
冬陽くんは優しくて頭がいい。血は繋がってないし、年も同じだけど、お兄ちゃんが出来たみたいで楽しいんだ。《みんな》も、冬陽くんの事が大好き。
僕は『自分』を保てない。僕の中にはいろんな子がいて、同じマンションに住んでて、みんなでイスを奪い合うんだ。椅子取りゲームは楽しいから。『イス』っていうのは体の支配権ってかんじ。よくわかんないけど、司お兄ちゃんが言ってたんだ。
最近、みんなを説得して、冬陽くんと一緒にいるときは僕の時間にしてもらったんだ。
『冬陽くんは何処にもいかないから、何時でも遊べるでしょ。ならその時間を僕にたくさんちょーだい』
ってみんなを説得したんだ。お兄ちゃんたちも協力してくれたんだ。でも、なんでお兄ちゃんたちは協力してくれたんだろう?
いつも僕だけが冬陽くんと遊んでるから、皆も冬陽くんと遊びたがって僕が外に出れる時間は少なくなった。冬陽くんが近くにいないと僕が出てこれるんだけど、僕だって冬陽くんと遊びたいし、たくさん話したいのに。
僕たち、夜はマンションにいて、皆でゲームをしたり本を読んだり勉強したりして遊んでいるんだけど……うーん、なんだろう。今日はなにかが違う。
ユイちゃんどうしたの?……え?外から誰か入ってきた?
んー、特に嫌な感じもしないし、もうちょっとみんなで遊んでいよーよ!ほら、ゲームしよ?えー、勉強嫌い。冬陽くんと一緒にやるからいいんだよ!




