二章 十三話 目的地と『かみしらべ』
────冬陽視点
胸の奥がざわざわする。また、罪が染み込んでくる気配がする。急がないと。この風景が見えなくなる前に。
「ね、目的を確認しよう。僕らってどこに向かってるんだっけ」
「秋斗と春がいる場所に行くための手がかりを探してる。んで、とりあえず神社とかの神が宿ったり寄ったりする場所を転々として罪柘榴を集めてた。そして、ついでに冬陽の能力集めもせんとなー、って感じやなかった?能力の方はすっかり忘れとったけど」
神様に二人は拐われたんだもんね。それなら、あいつが言ってた様に、この場所に行けばいい。
「そっかー……夏希飛んで」
「あーい。【重力操作・精密付与】」
「【負荷軽減】。ほら、あそこが亘さんたちの家がある森。右の方に結界で囲われてる山があるのわかるよね?」
「もちろん」
ありゃ、結界まで見えるんだ。この宝石凄いね。
「んで、山に街が面しているところ、あそこ。廃墟群があるでしょ。そこに向かって。そこから川沿いに山に入れば《結界》に阻まれないから」
「……なんでそんなこと知っとるん?」
「昔父さんに教えて貰った。父さんの親戚に神社に関係している人がいるんだってさ。どんな場合でも、必ず本当のお社とご神木の元に行ける抜け道なんだって。さ、降りよ」
「この山見た目より大きいんやな……」
「あの結界、色々な効果があるからね。ほら、橋が見えてきたよ」
「峡谷もあったんか……うわ、めっちゃ高い」
「あ、もうそろそろ切れる頃だ。3秒後全力ダッシュね」
「へ?」
「はあ、はあ……。この山絶対おかしいって」
「そりゃ天狗様とか、そういう方向のかたたちの住む山だからね。あっちこっちに呪いがかけられてるんだよ」
「この山、そんな噂聞かんかったけどな」
「そりゃこんな目にあうのは抜け道を知る人間だけだからね」
「うわあ……」
「こっちの方で昔よく遊んでたんだ。そこからくないが3本、5歩先に括りワナ、右から猪が来るから全部避けてね」
「え……?!」
「いや、え?」
「ほら、上見て。……これは身構えなくて大丈夫。ノーミスだと虹が見えるんだよ」
「ほんとや……ん?のーみす?これゲームなん???」
ん、風を切る音。
「夏希、左後ろだいたい55度ぐらいからなにか来るから避けて……無理か。【重力操作】」
夏希を重力で無理矢理動かす。
「うわっ!」
「やっぱり冬坊か!」
「あっ天狗にい!お久しぶりです!!」
天狗にーさんだ!
「よせやい!冬坊は昔の通りでいいんだよ。俺と冬坊の仲じゃねーか」
勘違いしてる。
「いや、父さんの方じゃないです。息子です」
「やー、どっちもここ極めてるからなー。気にしなくていーよな?」
「先代さま」
先代さまに言っちゃうぞっ、てね。
「冬陽!ハードモード作ったぞ!やってけ!!」
「まじ!?天狗にーさんまじ天狗!!」
「んじゃ右に半歩進んで落とし穴に落ちてくれ」
「はーい!!」
────夏希視点
ほんま意味わからん。なんやのここ。てか天狗おるし。
「ふう。初めてのわりに吸血鬼の坊主も動けてたじゃねーか。お前もハードモード行ってみるか?」
「いや、死にませんか?」
標準で既に死にかけてるんやけど。
「冬坊なにも言ってねーんだな。いきなりで驚いただろ。ここは現世とは少し違う世界だから人間は死なねーんだ。傷も治してやるから気にすんなや」
「……んじゃちょっと行ってきます。一応全力でやるんで、ケアはお願いします」
なんかこういう事に耐性がついてきた気がする。さて、訓練訓練ってか。ほんとは春との訓練でこの体を思いっきり試してみたかったんやけどね。
えーっと、とても春が喜びそうなコースでした。いやほんとに意味わからん。冬陽はひょいひょい進むしなんなん?俺吸血鬼化して色々と性能上がっとるんやけど。
「ところで冬坊、今日は何しに天狗山に来たんだ?」
「ちょっと神様に友達を拉致されてね。神調べの間に行かせて」
「まだだ。まだならぬ」
「先代さま?!お久しぶりです!」
……かなりの強者やな。勝てる気がしない。
「……久しいな。元気にしておったか」
「それなりに。なんで神調べの間に行かせてくれないんです?」
「神調べの間に行く前に、お主らのことを聞かせてくれぬか。なぜお主らはそこまで大量の罪を背負っている?」
「ツ、ミ?僕たちが?」
冬陽は両手で首を絞めるように抑える。次第に目の光が失われていく。これがあの少女の言ってたやつか。……これ、誰かに無理矢理染められてるんやね。めっちゃイラつくんやけど。今すぐに染めてしまいたい。どうせ染められるなら俺の色に。
「これは、神の呪いがかかっておるのか。……とりゃっ」
先代さまと呼ばれた天狗は、札を冬陽に張り付けた。その札はすぅっと冬陽に馴染んで溶けていく。
「あれ、また……?」
「神の呪いは抑えた。安心せい」
っっ、はあー……。くっそ、こっちも何かに苛まれてたな。抑えられてはいるけど、早く解決策を探さんと。邪魔で邪魔で仕方がない。
「……自分にもわからないんです。罪の形が。だから、ちょっと待ってくださいね。天狗さまたちだけに見せましょう」
冬陽は息を整える。二、三度深呼吸をして、灰色の瞳に色を宿す。
『僕の知らない、僕の罪。僕らの知らない僕らの罪を、ここに、彼らだけに見える様に示せ。そして、出来ることなら鎖を元から裁ち切り、僕たちの力となれ』」
冬陽の声に応える様に、目の前に黒いモヤが浮かび出た。そや、これ染められんかな。
『ノヴァ。このモヤの一部を確保しといてな』
応答がないけど大丈夫やろ。
「…………そうか」
「見えました?」
「ああ。……すまんかったな。今は別だが、元を辿れば同族だ。同族が、迷惑をかけているようだ。本当にすまない。わしも知りたいことができた。神調べの間へ一緒に行こう。冬坊、苦労をかけるな、すまん」
────冬陽視点
天狗にーさんにお願いして、暫くハードモードで遊ばせてもらう約束を取り付けた。めっちゃ嬉しい。なんか夏希は神調べの間には来ないでそっちで先に遊んでるんだって。いーなー。ははは。
「今回はわしがやろう。あやつらの余罪も知っておきたい」
天狗さまは中央に祀られている丸い宝石に手をかざした。
「……!深冬を殺したのもあいつらだ。正確には、深冬を死ぬように仕向けたのはあいつらが作った欠陥品、罪システムだ。あれによって殺された罪人……被害者はとても多いようだ。これは《審議会》ものの事案だぞ?神が職務放棄して、何もしていない命を苦しめ奪っているのだから」
「そっか……僕にも見せて」
「もちろんだ」
「……やっぱり、僕はこの世界が大っ嫌い。先代さま、初代さまに手紙届けてくれる?」
「ああ」
──
初代さま。僕はこの世界が間違っている様にしか思えません。昔初代さまは僕に表の世界も楽しめって、案外悪くないぞって言ってくれたけど、あんな世界間違ってるよ。しかも、楽しい事なんか少なくて、苦しいことばっかりで。僕があの世界で生きていくなんて無理だよ。ごめんね。僕は僕の理想を求めるよ。それこそ、罪なんて存在しないように。たとえそれが無理でも、僕だけでも楽しめるようにするんだ。それなら、僕一人でもできるはずだから。
だって、ずっと封印されていたことを思い出したから。
──
手紙を書き、思い出したことを試す。ねえ、初代さま。あなたも、本当は初めから知っていたの?
次話更新→9/3 00:00




