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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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二章 十二話 罪と結晶

────冬陽視点


あれから、誰かによく似たあの人に会うことはなかった。そして、リストと地図に書いてあった罪柘榴を集め終わる頃にはもう季節はもう夏に変わろうとしていた。もうすぐ、僕があの病気を発症した日。


「亘さーん」


亘さんたちの家に来た。多分、亘さんなら何か知ってるんだろうなと思ったから。あと料理上手だしね。引き戸がガラガラと音を立てながら開く。


「よお。久しぶりだな。どうしたんだ?」

「……ご飯いいですか?」


本題よりも先に、僕はにっこりとそう言った。


「あがってろ。昼までちゃんと待てよ」




「徹さんこんにちはー。あ、パズルしてるんだ。チトセくんたちは?」

「チトセたちは山で釣りしてるんだ」

「ほえー……あれ、パズルの絵もしかしてこの家?」


……あれかな、白いパズルに絵を描いたのかな。え、でもめっちゃ上手。


「そーだ。上手に書けてるだろ?」


少し自慢げに徹さんは言った。


「ってことは徹さんが書いたの?」

「おう。昔から手は器用なんだ」


……きよう……器用?

もしかして、夢の彼女が言ってたのって徹さん!?




徹さんに事情を話すと、離れに連れていかれた。離れは工房になっていて、趣味で色々作ってるんだって。


「これなんだけどさ」


12個の罪柘榴をテーブルの上に出す。ついでに、何かを使えないかと神金ルチナも。


「……っあ!これなら俺も夢で見た!二人分、ネックレスでいいか?」


僕は頷く。すると、徹さんは罪柘榴を手に取って、別の罪柘榴に押し付ける。すんなりと罪柘榴は一つになって、ふたまわり大きくなる。


2つの大きな大きな罪柘榴が出来た頃に、僕らは工房の外に追い出された。




やっぱり亘さんのつくるご飯も好き。


ご飯を食べた後、徹さんに作っててもらったネックレスを身に付ける。全身が次第に軽くなり、宝石の中に黒いもやが吸収されていく。


もやの吸収が止まった頃、視界にはやつがいた。


「まずは、達成おめでとう。これでキミの罪は、かーなーりっ薄くなった。それでもまだ残っているから、僕のことはわからないだろうけどね」


たったったった、と彼は歩いてくる。亘さんたちは動かない。時間が止められてる?


「ここ、土足厳禁なんだけど」

「へーきへーき。僕は現実には存在していないんだから」

「は?」

「そーれーよーりーもー、罪を吸い取るバランサーを集めて、罪に晒されない場所に移したらどうなると思う?」


それはもちろん、世界の、罪のバランスが崩れやすくなる。罪が溢れやすくなる。


「どうなるか、もちろんわかるよね?」


彼はにっこりと嗤った。


「もうすぐ崩壊が始まるんだ。急いだ方がいいよ?折角思い出せるんだから、思い出せる内に、ね」


ニッタリと口元をつり上げて、僕の耳元に近づき、僕にだけ聞こえるような小声で、呟く。


「存分に楽しんでよ。これは、キミだけのための宴だ」


夏希も動けるらしく、重力剣を小声で発動し、小さな剣で彼に斬りかかる。


「おっと……やめてよ。ボクは指示にしたがっているだけなんだから。それに、今回の主人公は君じゃない。これは《キミ》が望んだコト。他でもない、キミのため。世界が終わった頃にまた会おう。それじゃあね」


彼は、再び空に馴染んで消えた。それを境に、時間も動き始める。


「夏希、剣」

「……すまん」

「なにがあったんだ?」

「亘さん、徹さんもいきなり来てごめんなさい。ありがとね。僕らは帰るよ」


たぶん僕は苦虫を噛み潰した様な顔になっていたんだろうね。怪訝そうな顔をしながらも、二人はなにも言わなかった。

次話更新→9/2 00:00

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