二章 八話 監視と個人システム
────春視点
「ふう」
短く息を吐いて伸びをする。んー……。よし、あれからだいたい一時間くらい、だから三十分か。
「シュル(お疲れ様)」
「ありがと」
近寄ってきたもっふもふでふっさふさの神喰らいをわしゃわしゃ撫でる。幸せー……。
暫く神喰らいをもふもふしてた。満足。さてと、次は個人システムのアップグレードだね。体感時間を伸ばされてる分だけ、実際の時間に直すと早く終わると思う。だからその術を解かれる前にできるだけやっちゃわないと。
個人システムを起動して、エネルギーを無理やり混ぜこんで、馴染ませて、システムをじわじわと侵す。完全に侵せれば僕が自由に操作できるから。
よし。完全に侵せた。システムを構成する文字をパズルのピースに見立て、要素ごとに細かくバラバラにして、邪魔をする要素や、無駄な要素を消去する。そして、残ったピースで本来のものとは別のプログラムに組み換える。足りないピースはさっき取り込んだ情報を元に新しく作り出す。
少しずつ、少しずつ、立体的なシステムを組む。組みながら新しいピースをつくって、それをまた組み込む。知恵の輪みたいに、簡単に解けることがないように。複雑で、それでも綺麗な形になるように組む。作る。組む。作る。組む。
組んだシステムの中に、新たな要素を埋め込む。僅かな隙間をクモの巣のように展開するそれで埋めていく。
システムの増設と隙間を埋める工程を続けながら、他の存在からの干渉を弾く分厚い防護膜を、システムを覆うように生み出す。スライムみたいなイメージで、核を弾力のあるもので守る感じだね。
「しゅる……(どうだ?)」
「んー、だいぶ使いやすくはなったけれど、もうちょっとだけすごくしたい」
「……しゅる?しゅるるるる(すごくか。今までの情報だけでは足りなさそうか?)」
「うん。組めるところは全部応用が効くように組んだんだけどね、既存の技術じゃここが限界。クモの巣みたいなのは僕がつくったんだけど、ここに居座って作業する訳にはいかないからさ……かといって外じゃ邪魔が入る」
クモの巣ってか白巣って名前は付けたんだけどね……まあ、こちら側のプログラム自体にはほぼ影響しないんだけど、他者からの干渉を撹乱してくれる感じかな。うん。それがこちら側のシステムに思っていたよりもいい感じに機能してくれてるからこの感じでいけば少しの時間をかければまた新しいの作れるんだけどとにかく時間と余裕がない。それに図書館を長時間独占するのは流石に気が引ける。
「しゅるるるるるる……(そうか。邪魔された分成長するシステムなんてどうだ?)」
「……そうだね、それいいかも。与えられた部屋でそっちの方向で一つだけ作って《外》に出ようか」
自分の部屋に戻って作業していると扉がノックされた。来客のために集中を解く。
「どうぞー」
扉を開けて波瑠くんが部屋に入ってくる。
「小春くん、今までどこに行ってたの?」
「ちょっと図書館に行ってたんだ。教科書よりそっちの方が楽しいから!」
「はは。らしいや。懐かしい。それでいつもいい成績だったもんね」
「そういう波瑠くんも体弱くてあまり学校行けてなかったのに成績トップだったじゃん」
「そりゃ小春くんと勉強会たくさんしてたからね」
「ねー!楽しかったなあ」
「そうだね……。ああ、ごめん。指示をもらいに来たんだった」
「指示……そうだね、波瑠くんたちはフリーだもんね」
いっそのこと見守っててもらおうかな。心配だし。
「よし、波瑠くんたちは僕の友達を見守ってて。湊は神界で秋斗を。波瑠くんは地上で……」
個人システムのディスプレイを限定的に可視化して冬くんたちの現状を写す。
「この二人を見守って欲しいんだ。二人が別れるようなことになったらこっちの眼鏡かけてる方を追って。危なくなった時はすぐに報告して。接触は禁止。見失っても報告ちょうだい。それぐらいかな」
たぶん冬くんは追いきれないと思うからね。
「わかったよ。湊にも伝えとく」
よーし、これで心配は入らないね。あとはこっちでやれることをやらなきゃ。
これなら地上に出るのは大分遅くてもいいかな。このプログラムが完成したら図書館に残ってなかった情報を……何故か消されてる項目があるみたいなんだよね。だから、まずはそこを掘り下げてみる。それで、もろもろ片付いたら禁術使おうか。
次話更新→8/28 00:00




