二章 七話 出発とおやつ
────冬陽視点
今僕はキッチンの横で亘さんのお菓子作りを観察している。夏希は亘さんに指導を受けつつ、料理の腕を磨いている。憐ちゃんによると亘さんはクッキーを、夏希はご飯の仕込みしてるんだって。
あと、いつもは生地をそれなりに作っておいて、冷凍保存していつでもクッキーを焼けるようにしてるんだって。あー……生地の状態で既に美味しそう。
「おにーさん、食べちゃ駄目だよ?」
「この状態で食べても美味しいなら別によくない?」
「毒キノコって美味しいんだよ?食べたら治療しないと死ぬけど。」
え、なにこの子感慨深く言ってるの?
「憐ちゃん経験あるの……?」
「亘に拾われる前に何回も。焼きキノコって美味しいよね」
あっ、えっ……この子もしかして。
「もしかしてお腰に着けた袋の中にはたくさんの食料が?」
「きびだんごも入ってるよ。それ以外にもたくさん。袋の中身は徹おにーさんの能力で時間止まってるし。袋も劣化したり汚れたりしないように私が時間を止めてるから。例え家がなくなっても三年ぐらい余裕で生きていける」
この子プロだ……。
「やば。師匠って呼んでいい?」
「憐ちゃん師匠まじやばいっすよねー!」
「ナギやめて。このおにーさんまで頭が弱点になっちゃう」
「うちの冬陽はもともと頭が弱点や。こいつわりと感覚だけで生きてるから」
「……手遅れだった」
酷い言われ方してるけどなー、否定できないんだよね。周りに頼ってれば問題解決しちゃうし。うん。
「周りが強すぎるのがいけないんだよ」
「冬陽も大概やけどな」
「似た者同士っすか!いいっすねー……憧れるっす!!」
確かに似た者同士か。
「まあ気長に待ち。待ってりゃそれっぽいのがいるから」
「なんか扱い酷くないっすか?!」
「気のせい。こいつさっきもこんな感じだった」
「さっきっていつやろなー」
あれ夏希にもやったんだ。あー……鎖のことにはあまり触れたくないや。もやもやする。大切なことを忘れてるけど、全く思い出せない感じ。
「亘、クッキー」
「憐、もうちょっと待て。ほら、キャラメルやるから」
キャラメル美味しそう。夏希も見つめたらなんか出してくれないかな?
「…………えっ、何や。何も持っとらんて?あ、あー、冬陽マシュマロ好き?」
「可もなく不可もなく」
「やるわ。それで我慢しといて」
……少ない。足りない。
「お腹すいた……」
「お前見た目のわりに大飯喰らいなんだな」
「いや一昨日からなにも食べてなかったから」
「それにしたって限度が」
「ないんよねえ。ほんとびっくりするぐらい食べるからな」
「夏希の作るご飯美味しいからしゃーない」
「しゃーないってなに?」
「方言。しょうがないって意味」
「へー。私もお腹すいた。おにーさんたちと同じ。生きてるからしゃーない。亘、ご飯」
「ご馳走さまでしたー」
「こちらこそ、食料分けて貰ったからな。お互いさまだ」
「おにーさんたちまたねー」
「またねっす!」
「それじゃーねー」
なんとなく、歩く夏希におぶってもらって山を下っていると、声が聞こえた。
「おーい……おーい」
声はだんだん近くなっている。振り返る。あ。
「どーしたのー?」
「ちょっと、戻ってきてくれ!亘さんが話があるって!!」
ん??なんだろ?
亘さんの家に戻ると、ナギちゃんと憐ちゃんが生野菜を食べていた。
「すまんな。呼び戻しちまって」
「いえいえ、ぜんっぜん大丈夫です。でもどうしたんです?」
「いや、この野菜どうしたんだ?」
「めっひゃおいひいっふ!!」
「……ナギ、はしたない」
……あっ。
次話更新→8/28 00:00




