二章 三話 謎の生き物
────冬陽視点
「キシャア!キシャシャシャシャ!」
どこからかそんな声が聞こえる。なんだろ?てかこんな鳴き声の動物知らないんだけど。
「夏希。なにこの声」
「……さあ?面白そうやし見に行かん?」
「だね」
声の方向へ向かう。夏希は歩いてるけど僕は少し浮いて『すいー』って感じで移動してる。なんか楽だからこの頃ずっと浮いてるんだ。
「あ、あれやない?」
「……ほんとだ。なんかいる」
何あれ。視力を上昇させて見てみるけどやっぱり見覚えがない。
「ってこっちきた?!」
「夏希、空に逃げよ!」
急いで空に逃げる。へんなのは僕らの真下でキシャキシャ鳴いてる。
「んー……なんやろ。あれ」
「リュスがまたなんかやらかしたのかな?」
「あ、ぽいわ」
「まじで?」
「あれはリュスの改変によって、世界に大きな歪みが生まれたことにより生まれた新生物。まあゲームで言うとバグがモンスターになって表で暴れてる、って感じやな」
「あーね。僕と違って世界に影響を残しちゃうんだ」
待って、僕は世界に干渉したことなんか無いのになんでこんなはっきり……。
え?なんか頭から抜けてった。なんだったっけ。まあいいけど。
「うわっ!?」
あ、夏希が落ちた。とりあえず急いで拾いに行って、地面に落ちる前に腕をつかむ。
「だいじょぶ?」
「あー、ありがと。こいつ完全に敵だわ。倒そ」
「え、いやそれはわかるけど、なんでいきなりそんなんなったの?」
「こいつ世界に、というかリュスがやった改変に乗じて……まあそれに侵入して、一部の情報を書き換えてる。そのせいで能力使用のルールが変わった。少しまどろっこしいけど声に出さないと能力使えなくなった」
は?こいつそんな面白くないことすんの?ゲームの戦略性が損なわれるじゃん。せっかく《あっち》で色々と準備してるのに。なら、魔女言葉で……。
『滅せよ』
うわあ何にも変わってない。しかも効いてないっぽい。魔女の祈りとか呪詛が効かないってどういうことよ……最悪。
「夏希、こいつの弱点は?魔女言葉が弾かれたんだけど」
「こいつリュスの改変で生まれた能力しか受け付けないんやって。しゃーない。俺やるわ。【限定・重力操作、可視化、具現化・重力剣】……よーい、しょっと」
夏希はなんかいつもより禍々しい剣を作ってへんなのを切った。切られたへんなのはぐしゃって潰れて周囲に溶けた。感覚的にやってた設定まで声に出さないといけないのか。ふーん。
「おつおつー」
「あーい」
「どーする?あれ片っ端から潰していく?」
「焼け石に水や。でもなんか不愉快やし遭遇したら潰す感じで良いんちゃう?」
「はーい。でも暫くはその役目夏希に任すよ」
「まだ無理そーなん?」
僕は今、リュスの改変で芽生えた能力が前みたいに使えない。でも何故か空は自由に飛べるんだよね。はっきり言ってそれで十分な気がする。
「感覚が掴めないんだよねー。というより、繋がりが切れちゃってる感じなんだよ」
一応使えなくは無い。ただ咄嗟のタイミングでは無理。タイムラグが結構ある。そのせいで第二世界にすら行きづらい。一回だけそれも無視して行ったけど、発動にめっちゃ時間かかったからね。一瞬でどういうふうに術の構成がされていたかっていうのがゆーっくり感じられるから勉強にはなるんだけど。
「んー、それなら早いうちに繋ぎ直せば?」
「そうなるよね。んじゃあさ、僕に不可視・不可侵かけてよ。ここから動かないから」
「わかった。【不可視・不可侵】」
……よし。んじゃあちょっと本気だそっかな。干渉で改変産能力の情報に干渉して…………うっし、いけた。次。
「【強制発動、完全無欠・部分掌握・感覚、負荷軽減】」
感覚は掴めた。糸がたくさん絡み合って出来た布に大きな穴が開いてる感じ。それとあれだね、繋げてどんどんやると辛いんだね。負荷軽減いれてもつらい。でも、まだ足りない。
「【限定・活性化、文字魔法『結・復元』】」
負荷軽減の派生、活性化で繋がりを元気にして文字魔法でなおそうとしたんだけど無理だった。まじか……本当にこれで足りないの?まあしゃーなし。もっと無理するか。
「【強制発動・指定『未取得能力:乗法』・能力生成・応用】」
強制発動と繋げた時ののコストやばいくらいおっもい。完全無欠もやばかったし、あとで調べとこっかな。入手したことも忘れてたぐらいだから慣れてないんだよね。さて、次。能力を畳み掛ける。これからこれから。
「【文字魔法『縁』・『修復』・『復元』・『回復』・『復旧』】」
うわこれでも無理とか。やば。てかこれ弾かれてるわ。まじか。それなら最低限でも使えるようにしないと。
「【改善】」
あ、効いた。
「【応用・乗法・改善・改善・改善・改善・改善・改善・改善・改善・改善…………】」
くっそ、つら。今は諦めよっか。けど、この部分の能力は発動したままで良い、かな。疲れるけど維持してなおさなきゃ。
「【限定・解除】」
「ふうー、夏希ー疲れたー引っ張ってー」
「あー、うん。お疲れさん。多少は使えるんやろ?紐出して」
やっぱそこらへんは見えてるか。魂自体にも負荷がかかってたのもバレてそうだし。それなら別にいいか。
「やっぱいい。運んで。背負って。【密着】」
お、ラグ無しで使える。楽し。けど疲労溜まるね。始めの頃みたい。
「能力使ってまで来んな。敵はどーすんの?」
「潰して。んで消滅させて。大丈夫。夏希なら出来る。【負荷軽減、活性化、全体化・能力向上、強化】」
「使えるようになったからってそんな重ねるな。いや楽なんやけどな?な?」
「なつきーぜんしーん」
マジ疲れた。あれ地味に気絶しそうな程ヤバかったからね。あまりやるようなものじゃない。頭というか、脳みそが悲鳴あげてて、首も鎖か何かで締め付けられてる感覚もあった。それに、魂が器ごとザリザリと。
うん。あれはまじでやばいやつだわ。まあ死なないしいっか。程々にきーつけよー。まあ、僕が壊れても彼らがいるから大丈夫だけど。
一瞬僕は、とても懐かしくて、でも見覚えの無い彼らのことを思い出していた。すぐかき消えちゃったけど、その感情だけは覚えている。
何気なく視界に入った空には、濃い虹がかかっていた。きっと、もうすぐ雨が降る。
次話更新→8/22 00:00




