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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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一章 四十一話 昔の約束①

王界に呼ばれる以前の話です。

────夏希視点


『夏希、誕生日おめでとう。今年で18だったよな』


父さん……俺、


『この家では、18歳になると一族のことを知る権利が与えられるんだ』


俺、知ってるよ。父さんの秘密。


『と、言っても、夏希はもう両膝までこちら側に沈んでいるから知っているか』


昔、俺を影牢えいろうに閉じ込めた理由も。


『それで、そのまま沈む覚悟はできたか?』


贄のつもりだったんだろ。


『お前には素質がある』


呪いをたてるのには必要なことだったんだろ。


『闇と影に好かれているお前には、この一族の裏に立って欲しい』


知ってるよ。


「……はい」




今日も、また去年の記憶が夢になった。

目を開けて寝転がったまま、天井を見る。


「影狼」

『ここにいる』


呼べば答えてくれる。影に潜む大きな獣。


「なんで、俺だったんだ」

『……すまん』


この夢を見たときは、決まって込み上げてくる。手を伸ばしても、途中でいつも遮られるから。


「あの時、なんで贄として喰らってくれなかったんだ」

『すまん』

「なんで、俺を殺してくれなかったんだよ」

『約束だからだ』


わかってるよ。


「俺も約束してたんだ」

『……』

「すぐ行くよ、って」

『すまん』


この言葉の続きは知っている。


『だが、その約束は』


やめろ。


『当の昔に破棄されてるではないか』




「……んー、はぁ」


またこの夢。夢から覚めたはずなのに、その場所すら夢の中。今度こそ、現実に戻ってきた。


『おはよう。ナツキ』

「ああ、おはよう、影狼。今日も頼むな」

『ああ。だが、急になぜ沈み込もうと決心したのだ?』

「どうだっていいやろ。影狼はただ契約者の俺に使われてりゃいいんやから」

『ああ、そうであったな。では、いつものように』


部屋を出てリビングへ向かう。



「んおー、夏希、おはよー」

「おはよ。昼そうめんやから。タレにキュウリ使いたいから出しといてな。あと、今日もちょっと出掛けてくるわ」

「おー。……冷蔵庫の中に入れた」

「さんきゅ……あ、ごめんトマトもらっていい?朝ごはんそれにするわ」

「ん、夏希どーしたの……?元気ないの?」

「夏バテか?」

「んや、なんかそういう気分なんよ。だから、たまにはいっかなって」

「ほー。はい。冷えてるの」

「さんきゅさんきゅー」


……んー、おいし。




「んじゃちょいと行ってくるわ」

「あーい。いってらっしゃーい」

「おー」


三人のいってらしゃいの声を背に受け、家を出た。誰もいない道路を、宛もなく歩いていた。


あまり詮索のされない、今の距離感はとても心地がいい。俺が頻繁にどこへ行っているのかは多少不思議がられてはいるけど、今、それを明かすわけにはいかない。


いや、説明が面倒臭いだけなんやけど。それにわざわざ友達に言うような事ではないし。



適当に散歩をしてから、適当な路地に入り込む。建物と建物の間には影があるから。影の上を歩いて、暫く行ってから力を抜いて、落ちる。


影の中に落ちた俺は、影狼を呼ぶ。


「今日もいつも通り」

『ああ。毎度言うが、落ちるなよ』

「わかってる」


いつもの一言。気負わず返答する。たとえ影狼から落ちて影に体が投げ出されても、ここにいる奴らは俺に危害を与えることが出来ないから。


影狼の上によじ登り、長い毛をしっかりと掴む。


『では、行くぞ』


影狼は影の世界を猛スピードで駆け抜ける。目指す場所は俺の実家。

この話の続きはまた今度。

次話更新→7/23 19:00

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