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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
40/81

一章 四十話 干渉

投稿頻度やっぱり下がります。ごめんなさい。そのお詫びで今回長めです。

────冬陽視点


僕の視界が暗転して、一瞬、遂に時間が来て気を失ったのかと思ったけど、周りに彼らの気配を感じる。まだ僕は眠ったわけじゃないみたい。取り敢えず、状況を確認しなきゃ。


『ねえ、皆いるよね?』

『ああ、大丈夫や。ノヴァに確認してみたんやけど、ここはさっきまでとは別の次元らしい。俺たちは誰かに招かれたみたいやね』

『招かれた、か。僕らは日々を楽しく過ごしたいだけなんだけどなぁ』

『だな。迷惑なもんだよ。……つか、いつまでたっても目が慣れないな』


ははっ、秋斗が春を誘導してる……すっごい不自然。取り繕うの辞めたんだ。いや、許そうとしてる、のかな?殺されかけたこと、少しだけ気にしてたもんね。……いや関係ないか。


しっかし、春も気づかないなぁ。称号にも書いてあったのに。もうそろそろ自覚してもいいと思うんだけど。


「不便だなぁ。……あ、みえた」


……半分気付いてない?

まあいいや。やっぱり、ここにも精霊はいるみたいだね。姿は見せてくれないけど。


さて、軽く辺りを見回してみたけど、本当に何もないな。

僕らは暗闇の上に立っているみたい。


『地面も見えないし、生き物の気配も無い、僕らを招いた人も見えないね』


どこにいるんだか。


『早く帰って布団に潜りたい』

『わかる』

『はは、危機感ねーな。俺もだけど』

『今日ばっかりはなぁ。色々あったからしょうがないと思うけど。しかしなんで大晦日に』


わかる。まじそれな。

あー、だるい。ここ、どこだろ。


『ねー。しっかし、ここ能力使いづらいね。頑張れば使える気がするけど、まだスタミナ切れてて辛い……』

『よく使う気になれるよな。流石にまだ使う気になれねーわ』

『よな。しかもさっきのでだいぶ能力の使い勝手が変わったし』


……春ってたまに化け物、というより、めっちゃおっきく見えるときがあるんだけど、何でだろ。


『だからこそ、少しでも早く慣れたいんだ。なにかあってから備えるよりは、ね? ……てか、冬くん扉作れそう?』

『……まだ無理。もうちょっと休ませて。てかさー、僕正直面倒な事とか気乗りしない事とかやっても無駄な事とかはやりたくないんだよねー』

『でもやらないといけないことはちゃんとやるだろ。冬陽はそんなもんでいいよ。基本的に俺が出来ることは全部やるから』

『ということで、冬くん、よろしくね?』


スパルタだなあ。今日ぐらい休ませてよ。僕毎年寝正月するような人間だよ。もっと甘やかして……。あーこたつでぬくぬくしたい。




『じゃ、扉作って帰ろっか』


扉作ってー、次元を繋げてー……まって、ここどこ? 無理。掴めない。ここ、もしかして《領域》かな?


『ごめん。現在地が特定出来ない』

『あー、そういえばそんな弱点あったね。便利すぎて欠点忘れてたや……』

「おまたせ。せっかく呼んだのに逃がさねーよ?」

「あ、れ。この声……」

「久しぶりに聞いたね」

『僕ら、《異変》の元凶に招かれたんだ……』


春、もう喋りながら念話使えるの?回復早すぎ。ってか、これが例の声?思ってたのと違う。


「……何故僕らを今日招いたんです?」

『流石にこれは笑えないよなぁ。せめてあと2ヶ月ぐらいは待ってほしかったわ』


夏希もいけるんだ。


「ごめん、気まぐれ。けど、もうそろそろ待つの飽きたんだよ。もともと、退屈してたから試験的に改変したんだし」


もしかして、同族かな……。違う。魔女の血を持ってるみたいだけど、そうじゃない。それ以外の要素を持ってる……?特定出来ない。てか、気配だけでも確実に王よりヤバいってのが伝わってくる。


「あの、あなたは……?」

『……秋斗、何か視えない?』


僕はまだ同時に出来なさそう。


「俺?ちょっと待ってね……よいしょ。俺は一言で言うと《証持ち》。異変の元凶で異変を起こした《例外》そのもの。あー、魔女界でも《例外》とか呼ばれてるらしいぞ?」


あ、姿を構築してくれた。わりと優しい人?


「あ、例外さんでしたか。初めまして。僕は蒼希冬陽と言います。ついさっき《証持ち》になりました」

『秋斗、どうしたの?』


秋斗からの応答がない。表情におかしなところはない。どうしたんだろ。


「へ?ついさっき?てことは、試験も?」

「はい。僕らはさっき、王にいきなり呼ばれて……今はそこから帰るとこでした」

「あー、ごめんね。そっかぁ。可能性の塊ってエルちゃんに聞いてたから、《改変》の1ヶ月後には《試験》を受かってたんだと思ってたんだ……。冬陽ちゃん、ごめんね」


《ちゃん》?誰が女だ。殺すぞ。……今僕は例外の領域にいる。みんなが危なくなるから殺気抑えなきゃ。


「ふぅー…………っ僕は!男です!!!ちゃんは!辞めて!下さい!!」

「あーあ」

「例外さんちょっとお話が……」

『夏希、春と一緒に冬陽ちょっと抑えてて』

『了解』


抑えろ、まだ殺す時期じゃない。相手が致命的な隙を生み出すときこそが確実に、安全にるチャンス。


「え?え?」


────秋斗視点


取り敢えず転移であいつらからは離れたけど……疲れてる冬陽にこれ聞かれたらやばいよな。ぜってー暴走するじゃん。リスキーだけど例外さんに頼んでみるか。


「あの、今から話すことを冬陽には聞こえなくして貰ってもいいですか?」

「あ、ここまで離れて尚、念には念をいれるんだね。いいよ……はい。どうぞ」


いいのかよ。マジか。そっちもそっちでつらいんだよな。……はぁ、まずは説明から。


「冬陽は本当に男です。ついてます。昔から女の人によく間違えられるので、本人はそれがコンプレックスなんです。しかも、今髪白くて長いじゃないですか」

「だね」

「あれ、つい最近魔女として目覚めたせいなんですよ」


ああ、面倒くさい。


「てことは地毛なんだ。かわいいよね。……あれがあの子の魔女化の代償なんだ……ふふっ、他にもなんかあるの?」


答えていいものか……けど、1人で敵わねえのはわかりきってるから答えるしかねえんだよな。


「睡眠時間が長かったです」

「へぇ。てことは、あんま長い時間動けなかったんでしょ。ならまだ育ちきってないんだー。残念。そういえば、君らの名前と証は??」


冬陽だけでも諦めてもらえるか?


「《僕》は神城秋斗です。証は《魔女の幼馴染》です。で、少し関西訛りのやつが須藤夏希。たしか、証は《精霊の宿り木》。で、冬陽は《次世代の魔女》と《守護し支える者》だったはずです。で、最後が結翔春。春は《王者の卵》の証持ちです。……さて、戻りますよ」

「あーい」




「いやー、冬陽くんごめんね?つい」

「……別に、いいですけど」


あー、拗ねてる。今年もたくさん間違えられてるからなー。可愛い。しかし、この短時間で二人が大分疲れてるな。……例外さん、頼むから暴れないでくれよ。


「ねえ、この子拗ねてるよね?どうしよ」


小声で聞いてきた。いい人っぽいんだけど、『色』が不安定なんだよな……。はぁ。


「こうなったら気にしない方向で。ところで自己紹介しません?」

「えー」


めっちゃ拒絶の色が濃くなった……おー、怖い怖い。


「例外さんの名前教えて欲しいなー」

「わかる」

「……なんで皆で声を潜めて話してるん?てかこの距離やと潜めてても聞こえるし」


聞こえてたか……。あ、でも色が少し和らいだ。


「あ、ははは、はぁ。僕の名前は……リュス。魔名まなだけど、これでいいかい?」

「名前、似合ってますね」

「あー、君はわかるんだ」


黄色が伸びた。興味、か。……たまに思うけど、夏希には何が視えてるんだろうな。


「……あれ?リュスさん眼綺麗」

「本当だ。……両目、違う色ですね」


待てよ、赤色が……!


「……君ら、鋭いね。この空間で微妙な違いに気付けるなんて、面白いや。そういえば僕はね、精霊王でもあるんだ。精霊種は色彩。彼らはあまりいないけど、とっても綺麗なんだよ?」


諦めてなかったんだな……はは。


『冬陽、ヤバいぞ。こいつ狂気あかいろを纏い始めた』

『まじで?……皆、警戒して』


あー、早く帰りてぇ。


「君たちはさ、精霊に好かれてるみたいなんだよね。その中の何体かに、色彩もいるんだ。本当に癪だなぁ、ということで、ね?少し遊ぼうよ。大丈夫。流石に殺しはしないから」


本当に、殺さないでくれるとありがたいんだけどな。


「僕の魔女としての能力は改変。まぁ、せいぜい楽しませてよ」


改変の魔女……ああ、こいつ、さっきの主か。通りでやばい気配がする訳だ。




『どうする?』

『どうしよっか』

『前から3発、横から2発、少し遅れて上から4発』

『りょーかい。僕は少しずつ支援するよ。身体能力向上付与するね』

『俺はノヴァを武器としてやってみるわ』

『んじゃ僕は……』

『何迷っとんの?《いつもの》訓練みたいにやりゃいーやん』

『それも、そーだね。冬くん僕らの負荷軽減しといてね。夏希、いくよ!』

『ああ!』


次の瞬間、春は無色の風の剣を握りリュスに飛びかかり、夏希の手には黒く、湾曲した大剣が握られていた。てか流石だよな。もう能力を以前と同じように使ってる。



あれ反則だろ。リュスに体勢崩されても宙に足場作ってすぐ飛びかかってやがる。平衡感覚強すぎか。


「ははっ、まだまだいくよー!」


春はいきなり宙から2振りの紅い剣を生み出し、今まで使っていた風の刃をリュスに投げつけ、紅い剣を掴みながらも再び飛びかかった。


「春くんっ?!何その剣カッコいい!!!」


リュスの目は春に惹き付けられているのに、夏希の大剣は掠りもせず、攻撃の手は緩んでいない。


「僕の新しい能力だよっ!笑声昇華しょうせいしょうかって言うんだ。……くふふっ、まだまだ行くよ」


口許を吊り上げた春は自分の周囲にある数多の攻撃の弾を気にもせず、宙に立ったまま目を瞑り一息短くふうっ、と吐いた。瞬間、春の背後には6つの紅い剣が現れた。形はそれぞれ大きく違う。合計8つの刃達は春に降り注ぐはずだった銃弾を全て切り裂き無効化した。


「さあ!もっともっと僕を楽しませてよ!理性なんて溶けちゃうくらい、もっともっととばしてよ!この舞台は《あの人のため》なんだから、こんなんじゃまだまだ足りないよっ!」


春の動きが急に変わった。背後の剣を自在に操りながらなのに、今までよりも数段早い。


『秋斗、春見える?』

『……ギリギリ。春も春だけど避けきるリュスも化け物じみてるよな』

「っはあ、まだまだいけそうだね!それなら、次!!」


少し止まると、9振り目の剣が現れた。その一本は、なぜか真っ黒の剣だった。そして春は目から涙のような血を流していた。


────冬陽視点


戦いが苛烈さを増していく中、突如電話の着信音が鳴り響いた。……これ、今近づいたら問答無用で殺されるね。やばい気配がする。


「あ、僕だ。ごめんね。もしもし、イリシア。どうしたの?……え、来るの!?いや、やましいとかそういうんじゃな、あ」


切られたっぽい。


「あの、ここら辺で諦めてもらえません?疲れたんですけど……っ!なんだ、あれ」


黒い世界が割けて、上から光が落ちてきた。


「ここまで育った神の芽を殺させる訳にはいかないのです」


光の粒は春の両手を掴んだ。


「春!どしたん?!……この光は!」


夏希も心当たりがあるみたいだね。


「私たちは使者。神の使いです」

「……ごめんね。さっき、力が湧いてきたときに目醒めちゃったみたいで……僕の次の職業は神様みたいでさ。迎えが来ちゃった。皆ともっと遊んでいたかった。でも、皆への恩は絶対に返す。絶対に逢いに行くね。……もしかしたら、みんなの方から僕の管轄に入ってくることになるかもね」


時間がないみたい。春が矢継ぎ早に喋る中、少しずつ空の裂け目が塞がっていく。


「もうそろそろ、いいですか?」

「またね。今までありがとう。……ごめんね」

「春!」


スピネルのお陰で、聞こえるはずの無い例外さんの頭の中が覗き見られた。


『はあ、もーいいや。一人欠けちゃったし。流石に……飽きた』


これが彼の本音。そして、彼の目線の先には夏希がいた。とても、嫌な予感がした。

刹那、例外リュスは夏希に攻撃した。スピネルの能力で、一瞬だけリュスの思考を盗めたからわかったけど、その時もちろん、僕はそれを防ごうとして能力を使った。


僕は夏希の前に、いくつか木を生やしたんだ。それで防げる気がしたから。


その時あいつ、能力を使った僕を見て口の端をつり上げたんだ。そして、声には出さなかったけど、 『ばぁか』って、笑ったんだ。


びっくりしたなぁ。夏希をあいつの攻撃から守れたと思ったら、僕の体に一本の木が刺さってたんだから。それは僕が夏希を守るために呼んだ木だったんだけどね。なんか、そこまで痛くなかったなぁ……。


「へ?」


秋斗が呆けた声を出して、僕のことを見ていたから、


『僕は大丈夫だから、警戒して。あいつは何をしてくるかわかったもんじゃないんだし』


って言ったつもりだったんだけど、声の代わりに口から出たのが血だったから、あ、これ以外とヤバいかもって、ここで気づいたんだよね。


「あれ、なんで……っ」


秋くんが出てきたみたいだけど……動けそうにないね。


「はい。チェックメイト。さあ、夏希くん。これからどうするの?春くんは使者に連れてかれたし、冬陽くんは君のせいで瀕死だし、秋斗君は空っぽになっちゃったし。あとは夏希くん、君だけだよ?」


ニッタリと例外は嗤った。二人だけでも、逃がせたらいいんだけど……能力はもう使えそうにないや。使えるほどの体力も気力ももうほとんど残って無い。意外と生きるのって大変なんだね。


「こんな結末、認めない」


認めなくてもいいから早く逃げて。ヤバいでしょこの状況。


「認めないって、君になにができるの?魔女でも、精霊王でも、ましてや神でも悪魔でもない君にさぁ!」


例外さんなんかノリノリなんだけど。


「さあ?俺は非力やから、時間がなきゃ何もできひんなー」

「……まるで、時間さえあれば何か出来るみたいな言い方だねぇ。どうせ人間は死ぬんだから、今ここで死んでも変わらないでしょ?」


僕が死ぬのはいいけど、 目の前で人が死ぬのは《もう》見たくないんだよね。ほんとこの状況どうしよ。


「ああ。確かにそうやな。でもな、俺はまだ遊んでいたいんや。遊ぶために生きるのは楽しいんやで?例外さんには味わえへんものかもしれんけどな」

「そうだねえ、僕にはまだ味わえないものだ。だから、可能性を実らせるために能力を与えたんだ。でも、君はどうやってここから逃げるんだい?」

「俺にだって奥の手位あるわ。やから、少し待っててくれるか?」


……待って、何をする気なの?


「いいよ。面白そうだし。君の眼の奥にある色の正体もみたいしね」


夏希がこっちに歩いて来た。


「ごめんな。少し血貰うわ。いいか?」


僕は、それにゆっくりだけど頷いた。


「……大丈夫や。誰も死なせたりしない。」


夏希は僕を安心させるようにそう言ってから僕の首筋に歯を当て、その歯で皮膚を貫いた。そして、そこから僕の血を飲み始めた。


────夏希視点


俺は、吸血鬼の血族らしい。俺がそれを教えられたのは、瑠架義姉さんの首筋に噛み付き、血を飲んだときだった。


あの時は、何故か無性に瑠架義姉さんの血が飲みたくて、彼女が昼寝していた時に首に噛みついて血を飲んだんだ。


初めて飲んだ血は、とても不味くて、その日の晩御飯の味がわからなくなったのもあって、俺は血が嫌いだった。


俺の姉弟も別に吸血鬼として目覚めてもないし、吸血鬼として生きていくことに意義をみいだすことが出来なかったのもあって、俺たちは吸血鬼のことなんて知ろうともしなかった。


でも、俺は冬陽の家に住むことになってから、もしもの時ために、奥の手として『それ』を活用出来るように、地道に知識を蓄えていた。……実は、冬陽と生活していると、時々、血が飲みたくなることがあった。その衝動に身を任せれば、冬陽を《染める》事になるだろうということは理解出来ていたから、必死で堪えてたけど。




久しぶりに口にしたソレは昔より、少しだけ美味しく感じた。……だが、結局不味いことに変わりはない。本当に、こんなものを好んで飲もうとは思えない。

そして、冬陽の血を体内に入れたことで、頭のなかにアナウンスが流れた。


《吸血鬼(魔女)》を取得しました。

《血嫌いの吸血鬼》《魔女狩り》《魔女に牽かれる者》が可視化されました。


一応魔女として認められたらしい。なら……。

まずは冬陽からスピネルの支配権限を略奪する。

多分、出来るはず。……いけた。


《例外なる精霊王》を取得しました。


うっさいな。アナウンス切るか……。


『ノヴァ、冬陽の魂の器、いけるか?』

『いけるぞ、当たり前じゃ。わらわは精霊姫クイーンじゃぞ?だが主よ、この肉体はどうするのじゃ?』

『大丈夫。任せて』


吸血鬼は血を飲ませた者を眷族に出来る。眷族は吸血鬼固有の空間に収納できるから、そこで強制的に生命維持と肉体の治癒を……。


「冬陽、俺の血飲める?……無理、だよな。ちょっとごめんな」




「……っふう。これでよし」

『主よ、随分と大胆じゃな。見せつけてくれるのう』

『なんか、あんたが一番ちーとな気がするわ』


いや結構我慢してたんだしこれぐらいはいいやろ。


『うっさいわ。さて、次は秋斗や。てか、ノヴァ。冬陽の魂は無事か?』

『もちろんじゃ。でも、暫くは休ませた方がいいかもの』


あんなにダメージ受けてたら当然、か。


「おーい、秋斗!」

『スピネル、秋斗は?』


だめだよな。完全に内側に籠ってる。


『あんたの想像通りよ。今のあんたはたぶん冬陽の能力を使えるはず。ま、それが使えなくてもあんたの吸血鬼としての能力を使えば引っ張ってこれると思うけどね』

『ありがと』




じゃ、やってみますか。

秋斗の精神世界に干渉して……凄い、綺麗な青色の空間だ。星まである……何やろ?あっちの方。大樹が生えて周囲に自然が侵食してる。


『あの大樹は冬陽くんが残した願い種が育ったものだよ』


願い種?……君は?


『僕は……秋斗の中にある人格の一つだよ。昔ここにはたくさんの子がいてね、秋斗が壊れない様に、最終的に残った人格が僕だよ。だから、ほら、あっちを見て。今の君なら見えると思うし』


星、じゃない、よな。あれは?


『あれは崩壊、結合されて自我が無くなった人格たちの残滓。今の秋斗の精神は、大きな支えを失って大分弱っているから、残滓たちを元に再構築しないといけないかもって状況なんだ。さ、どうする?』


まずは、秋斗の元に連れていってくれないか?


『わかったよ。こっち。ついてきて。といっても、あの大樹の下なんだけどね』


大樹の下には、大樹に寄り添う様に眠っている秋斗がいた。


『この樹のおかげで、不安定ながらも崩壊前で一応安定しているんだ』


そか。これがなきゃやばかったかもしれんな。じゃあ、ちょっとやってみるか。


まず、記憶の糸を辿って……籠った原因は冬陽が死にそうになったから、か。じゃあ、その後に記憶とイメージを付け足すか。


冬陽は死んでない。生きている。倒れてるのはタイムリミットが来たから。血はリュスを欺くための偽装工作……て感じでいいか。


よし。で、記憶の糸を戻して……。


「ん……な、んでお前がここにいるんだ。夏希」

『こら。恩人に何てことを言うの。秋斗』

「……誰だよ。お前」


どういうことや?


『僕は、新しい人格だよ。これからよろしくね。……さて。君は今気を失ってるんだよ?冬くんが殺されたと勘違いしちゃって。記憶を辿ってごらん』


……これで秋斗は大丈夫、だよな。


「あ、冬陽はあの後俺が保護したからご心配なく。俺は秋斗を起こしに来ただけだからもう戻るな。早く起きろよ」


「……おう」




『ねえ、あんたの使った能力のせいで例外があんたのこと探してるけど、どうするの?』


冬陽に近づく前に、あいつに俺の種族が何かバレないように『不可視、不可侵』使って秋斗と冬陽を見えなくしたけど正解やったな。

さて。あとは逃げるだけや。


『スピネル、ノヴァ。忘れ物はもう無いよな?』

『ないはずよ』

『よし、一旦精霊界にでも戻っててな。必要になったらまた呼ぶから』


あとは秋斗の腕をちゃんと掴んで……周囲にジャミングと結界張って、領域に干渉して表世界と繋がり作って、不可視を解いて……転移の世界線を合わせて…………よし、準備万端。


「もう俺らのことは招かんといてな、リュスさん」


転移!


──


「はー。疲れた」

『お疲れ様』

「ありがと」

『ね、僕の体はいつ頃治る?』

「暫く後」

『そっか。結構派手に貫いちゃったからね……あと、僕の口調移ってない?』

「……多分血飲んだから。てか疲れとるから」



「ん……すまん。起きるのに時間かかったよな。ちょっとあいつと話したりしてた。ここは?」

「俺の《領域》。暫くはここで生活することになるから」

「リュスを警戒して?」

「そ。ばれたら次こそ殺されそうだし」


第二世界でも大丈夫だと思うけど、あっちには入れないからな。


「そっか。てか、三人になっちまったな」

「だな」

「はぁ」「はあ」

次話更新→7/20 18:00

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