一章 四話 散歩
────冬陽視点
僕らは今、市街地を歩いている。病院に行ったついでに、能力収集をしようとおもったから。
「色々な人が居るね」
当たり前だけどね。
「そうだな。……なぁ冬、その本はなんだ?」
僕は今、小さめの本を片手に持ち、反対の手は秋斗と繋いでいるんだけど、秋斗はこの《本》が気になるみたい。
「これはコレクションブックだよ?」
「……ずいぶんとはやいな」
察してくれてありがたいよ。
「うん、先生の」
「そっか。お、あっちで揉め事だ、行くか」
「能力者の喧嘩みたいだね。ちょうどいいや」
──
「なんでついてくんだよ!うぜーんだよ!殺すぞ!」
「笑わせるな。お前ごときになにが出来るっていうんだ。なあ、窃盗犯さんよ?」
「ばれてたのかよ。でもよ、そんなもんあいつらにばれなきゃいーだろ? 別にお前に関係はないんだし」
「はあ……そういうわけにもいかないんだよなぁ。お前みたいなやつがいると、色々と面倒なんだよ」
そう言うと男は面倒くさそうに窃盗犯らしき男に触れた。
すると、男たちの周囲に様々なお菓子が現れた。
「なっ、何で!」
「はいはーい、窃盗の容疑で現行犯逮捕。署まで連行させていただきまーす」
「は?おまっ、もしかして警察か?!」
「はい。だから言ったじゃないですか。あなたのような人がいると《仕事が増えて》色々と面倒だって」
──
「馬鹿だね」
能力に溺れる人もいるんだね。馬鹿みたい。でも、能力はとてつもなく有用じゃん。ありがたいかぎりだよ。
「だな。で?」
「うん、空間想造と能力支配だって」
空間想造はホントやばい。新しく空間を作って、そこに物を収納出来たりするみたい。設定次第では時間が動かなくも出来るらしい。あと、その空間には人間も入って生活出来るみたい。
「うわー、超便利じゃん」
本当、ラッキーだったね。
「だね。ありがたい。後で食料買い込んどかなきゃ」
「今後のためにも、だな」
あ、食べ物のこと考えたらお腹すいてきた。……あれ、てか僕朝御飯食べたっけ?食べてないよね。夏希、ちゃんとオムライス作ってくれるかな?………………やばい、余計にお腹すいてきた。
「でも、その前に帰ろ。お腹すいた!」
「……限界だったんだな。じゃあ、帰るか」
「ただいまー、お腹へったー」
いいにおいする!やばい、やばい!!
「良いにおいする!煮物のにおいだ!」
「お二人さん、お帰り。まずは手を洗ってきなさい?」
「はい!」「はい!!!」
僕らは急いで手を洗いに行った。
──
「秋斗くんなんか変」
「お腹へったんやろ?」
──
「ご馳走さまでした!」
「美味しかったやろ?」
夏希の実家が料亭やってるとは聞いてたけど、夏希までやばいとは……。
「夏希、一緒に住もっ!てか住んで!!」
さっきの断らなきゃよかった……!!
「やっぱ夏希くん料理上手だねー」
「本当に天才。美味しかった!」
「はいはい、皆ありがとな。で、これからどうする?」
どうやって夏希をここに住ませようかな?
「お互いに報告会しよー!」
「の前に、この二人どうにかせなな?」
「……」
やばい、久しぶりにこんなに美味しいご飯食べたから……やばい。恥ずかしい、顔めっちゃ熱いし。あー……。
「さて、報告会しましょか」
「僕らは事務所と大学に電話して、色々とオハナシしたよ!」
話通してきたんだ。えらい。
「あとは食材を買ってきたで」
追加で買い物行かなきゃね。
「えーと、便利な能力があったから、後で追加で食料買い込みに行きたいんだけど……冬陽?」
気遣いはありがたいけど話しづらい……。
「空間想造。自由に空間が作れて、物を保存したり、その空間で生活できる。時間の経過は設定次第。自由に取り出し可能」
不愛想になっちゃった。あー、疲れているってことにしてごまかそう。
「……だそうだ。今後の事を考えて、早めに買い出しに行った方が良いだろ?」
秋斗はそんな顔赤くなってないからいーよねー。切り替えできるし。
「やな。お金の調達はどうするん?俺らの貯金を下ろしてきたとしてもそんなだせんやろ。一応うちの親とかを頼ることも考えてはいるんやけど」
夏希、朝の話半分しか信じてなかったんだね。支援してくれる人は一人とも言ってなかったと思うけどな。
「夏希くんの親……って、あー、あの須藤グループに関わりがあるんだっけ?」
「そうそう。父親がそっちの家系で結構本家に近いらしいから色々と融通が利くんだと。んで、須藤グループって結構色々な分野でそれなりに儲けてるから結構な額の支援を受けられると思う」
「いや、そっちを頼らなくても平気だ」
「あしながおじさん」
「えっと、心なしか足の長い気がするおじさんたちから貰う。まあ簡単に言うとパトロンだな。結構な数の人にもう話は通してあって、了承ももらってあるから後で下ろしてくる」
おじさんばっかりじゃないんだけどね。
「……なら大丈夫やな。そっちは?」
「……冬陽さん、もうそろそろ機嫌治そーね?」
機嫌悪いんじゃないの。僕は恥ずかしすぎてこーなってんの。
「秋斗、僕疲れてるだけ。恥ずかしかった訳じゃないよ。僕は病院で薬貰って、散歩した。散歩中に他人の能力みた。終わり」
あ、やられた。秋斗にやけてるし……あっ、春まで生ぬるい目をしてる!てか夏希も口もと笑ってるじゃん!うわー、うわー…………。
「補足をすると、能力者同士が喧嘩してた。しかも片方が警察官だった。お前らも気をつけてな」
「そっかー! もうそろそろだねぇ、夏希くん」
「まだ早いやろ」
二人が悪巧みするときの顔してる。
「何の話してんの?」
「いやね、もうそろそろ治安が悪化し始めそうだなーとおもってさ?」
「わかる」
「お腹真っ黒かよ!」
わかる。
「えー?楽しそうじゃん」
んー、微笑みながら言うことではないと思うよ?
「ねー、そんなことより買い物行かない?」
「やね、行こか」
よし、ついでに治安悪化を目指そう。
「ちゃんとカモフラージュのために鞄とか持ってけな」
「なんなら隣街いこか?」
「賛成!」
確かに。
「いや、通販で色々買わへん?」
「夏希、ナイス」
……確かにね。じゃないと色々悲惨なことになっちゃうし。
「でも、少し買い物しよ?」
「治安悪化を目指すな」
「届かなかったときのために買った方がいいよ」
治安悪化はあくまでもついでだから。
「でしょ!」
「でも、春はお留守番してて。僕のアカウント使って。住所はこっちの。荷物は地下室にでも置いといて。印鑑は三階の机の引き出しにあるから。鍵かかってない所ね。んで、他の所の鍵は探しても無駄だから」
僕は自分の首にかけてあるネックレスの先を掲げてみせる。
「この特殊な鍵を使って、さらに手間を加えないと開けれないんだ」
「うー!じゃあ、アイスとかフルーツ大量に買ってきて!」
「わかってる。大人しく待っててな?」
「はーい!」
「ずいぶんと買ったな」
「めっちゃお店行ったもんなー」
二人とも楽しそうだったなー。僕は慣れないことしたから少し疲れたよ。
「疲れた。でも、夏希のお陰で買う量少なくてすんだ。ありがと」
「ああ」
「さて、帰るか」
「はるー、ただいまー」
「?静かだね。取り敢えず入ろうか」
「待って、春寝てんちゃう?」
「確かに。僕は地下室行って荷物を収納してくる」
「おう、無理すんなよ?」
「大丈夫」
僕は地下室へ続く階段へ向かった。
────夏希視点
「なあ、やっぱり今日は皆で泊まるか」
「さっき話してたときと状況が変わったからそれもありやね。しかし、凄い金額やったな」
今日だけでいくら使ったことか。でも、冬陽が起きてなかったら意味ないけどな。
「ああ、かなりの伝手があるからな」
やっぱ秋斗も苦労してんやろな。でも、なんでそこまでするんやろ?
「なあ、何でか聞いていいか?」
「別に大したことはしてねーよ。ただ、兄妹で人にコネ作りまくっただけだよ。ちゃんと人は選んだからいい人ばっかだぞ」
そっちに受け取っちゃったか。でも色々考えてんのやな。
「凄いな、本当」
「いや、そうでもないさ」
待って、上の階から音聞こえてくる。春起きてんの?
「……なあ、なんか微かに音せえへん?」
「風の音だな。冬陽の寝室からだ。行こうぜ」
ガチャっと扉を開けると、春が目を閉じた状態で部屋の中央にいて、春の周りには風が渦巻いていた。瞑想かトレーニングといったところか。
「春、考えたな」
「だね、家の中でトレーニングとは」
冬陽は神出鬼没やね。あ、春の目開いた。
「んぅ?お帰り?」
春が目を開けると、春の周りの風が消えた。長い間集中しとったみたいで、なんか気だるげ、というか眠そう。
「どうしてこの部屋に?」
「この部屋が一番物少なかったから」
確かに殺風景な部屋やな。ベッドと窓ぐらいしか無いし。
「だってよ、冬」
「そのとおりだし、別にいいよ?」
「……ねえ、お腹すいた」
「なら、晩御飯の準備せなな?」
あー、献立何にしようか。
「僕、風呂の準備してくる」
「じゃあ、俺らは休んでるか」
「だね」
────神城 秋斗視点
一階のリビングに下りてきての、ソファーに座って寛ぎながら少し考える。
「さっき何やってたんだ?」
「風を作って、操って、それをずっと維持してた」
「制御慣れたか?」
「まだまだだね、でも根を詰めるのは良くないから、今日はあれで終わり」
「そっか、そうだよな。お疲れ様」
俺はどういう方向に努力すればいいんだろな。慣れて使いこなせるようになる。それが当面の目標だけど、その先どう鍛えればいいのかがわかんねえ。
「なあ、春、明日どうしようか」
「やっぱり冬くんを一人にしたくないかな」
「いや、明日も一緒に動けるらしいんだ」
あの人、本当に何者なんだろな。
「先生が薬を凄くしたの?」
「らしい。で、優先すべきは冬陽の能力収集だと思うんだ」
「なら、冬くんは別行動の方がいいだろうね」
「……だよなぁ」
嫌だな、あいつ1人にすると面倒なことになりやすいんだよ。昔も誘拐されることが多かったし。
「秋斗は心配し過ぎ」
「お帰り。さすがに過保護過ぎだよね」
「……はぁ、わかってるよ。今回も邪魔になるようなことはしないから」
俺が折れるしかないよな。わかってるけどさ。
「秋斗くんと冬くんは明日何するの?」
「俺は情報収集がてら色んな方面の人と話してくる」
「んじゃあ、皆別行動かな?」
「そうなるんじゃないかな。あとは夏希次第だね」
夏希の作ったまじでおいしい夕飯を食べ終わって人心地つく。すっげー幸せ。
「ねえ、夏希くん、明日君はどうするの?」
「そうやねぇ、暫くは能力の練習やね」
練習、か。
「夏希くんも?じゃあ、一緒に秋斗くんに人が来なさそうな空き地に連れてって貰お!いい?」
「了解、明日何時に?」
「朝からがいい!」
「じゃあ、8時位は?」
「オッケー!」
「了解」
「そういえばさ、結局今日はここに誰が泊まるの?」
あー、泊まりたいな。久しぶりに冬陽に癒してほしいし。
「どーするの?」
「どうしよーか」
「いっそ、四人でここに住んじゃうか?」
それが一番いいよな。
「それなら、地下をリフォームしちゃおうか?今なら全部一人で出来るし」
「さすが」
お願いだから、無理しすぎて倒れるとかやめてくれよ。
「それなら皆で住も!」
「冬陽がいいなら」
「全然いいよ。なら、地下室リフォームしてくるね」
冬陽はまた地下室へ行った。
「じゃあ、明日マンション解約してこようかな?」
「いや、そこまでしなくてもいいと思うけど」
「だな」
────冬陽視点
僕は地下に続く階段を下っていた。地下に行く階段って地味に隠されてるから未だにちょっとわくわくする。本当にいい家建ててくれたなぁ……。
「さて、どうしようかな」
地下室は隠し階段を下って、廊下を少し進んだ先にある。ちなみに途中には風呂やトイレなどの部屋に続く扉がある。もともと地下室は運動場として使うために作られたため、とても広い。
だから、空間を固定する系統の能力があれば、ここを能力の練習場として使うことが出来るため、冬陽はあまりこの空間を削りたくなかった。
そして考えるためにコレクションブックを何処からか取りだし、使える能力を眺め、ひらめいた。
そして、地下室から出て、廊下の壁に扉を3つ作りだし、扉を開けるとそれぞれ別の収納空間に繋がる様にした。そして、その部屋の中に入って、扉を閉めてみた。特に何も起きないのを確認して、冬陽はリビングへ戻ったのだった。
────秋斗視点
「ねぇ!地下には危ないからまだ入んないでね!未完成だから!散歩行ってくる!」
冬陽は慌ただしく家を出ていった。
「冬陽気合いはいってんなー」
「やね。風の如く去っていったなー」
「春、疲れてたから眠っちゃったしな」
「……なー、俺一旦、家帰るわ」
「送るかー?」
「いや、留守番たのむ」
「何かあったら電話しろよー」
「あーい。行ってきまーす」
夏希も家を出ていった。春は眠っているから起こす訳にはいかない。この家で起きているのは俺一人。
「暇だ……なにして待ってようか」




