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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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一章 二十八話 おばあさんの魔宝屋さん

────冬陽視点


腹ごしらえを済ませた後、街がどんな風に変わったかを僕らは見ていた。


……てか寒い。まだ、10月なのに雪が降っている。これは能力者のおかげっぽい。使える能力増えたからね。ちなみに能力は『降雪』『温度操作』『広域化』。どこかで使えるような能力だといいんだけどね。


まあそんなこんなで、僕らは息抜きがてら能力者の隔離区域外を散歩してる。たまには遊びたいからね。僕らなら隔離網なんていくらでもすり抜けられるし。


いやまあ、ただめっちゃお腹すいたっていうのが発端なんだけど。




商店街を歩きながらウィンドウショッピングを続けてたんだけど、ふと路地裏へ続く道が気になった。


「こっち行こ」


なんか牽かれる。この路地の先に、とても温かいものがある気がする。


「別にいいけど、どーした?」

「いいから、ついてきて」


するすると、奥へと進む。

あった、ここだ。窓から温かい光が漏れてる。それに、地面に看板が置かれている。『魔染縫い屋』?


「ここか?」

「うん。行こ」


みんなを引き連れて店内に入る。


「こんにちは……」


店内は思ったより広くて、綺麗な石がたくさんあって、何かが渦巻いている。


さまざまな色に輝く宝石に、魔力を帯びたほうきに糸にチョークに……とにかく、本当に色々なものが置かれている。カウンターには魔女っぽい格好をしてとんがり帽子を目深まぶかにかぶった人が座っている。


「おや、いらっしゃい。いびつ面子メンツだねえ」


すこし張りのない声。でもまだ強さがある。これは変な小細工しちゃいけないね。絶対に見抜かれる。


「歪ってー?」

「あんたら、普通の人間とは違ってずれてるじゃないか。そんなことぐらい分かってるだろう?」


この人、豪快に笑うね。

てか溌剌はつらつとしてて結構好き。


「バレとったんね。ところでここは何屋さんなのか聞いてもええか?」

「ここは魔染縫まじな。魔女の営む幻の魔宝まほう屋さんさ」

「おばあさん魔女なのー?!」

「そうさね。占いとかもできるよ。今なら無料で占ってやってもいいさ。なんたって、今日は気分が良いからね」

「えーっとねー……?」

「僕はいいや」


それよりもこっちの石の方が気になる。んー……やばいものだらけで面白い。


「俺も」

「春、気になるならやってもらい?」


秋斗は道具を眺めていて、夏希は糸を見てる。夏希はミサンガでもつくるのかな?


「……うん!おばあさん、僕を占って!」


────春視点


顔をまじまじと眺められる。手の爪に赤いなにかを塗ってるみたいでとても綺麗。これマニキュアじゃない気がする。


「あんた、面白い顔をしてるねえ」

「え?」


顔をぺたぺた触ってみる。うん。いつもと変わらなさそう。可愛いとかは言われたことあるけど、面白い顔ってどんなのだろ?


「引き寄せる……いや、無意識のうちに引き寄せられて、引き寄せて。そのまま一部に憑依されてるね。昔、なにか大きなことをやらかしたんじゃないのかい?」

「ぜんっぜんわかんないです」


心当たりないよ?


「そりゃねえ。でも、あんたにもわかる時がくるさね。さてと、なにか占って欲しいことはあるかい?」

「んーと、ちょっと待ってね」


ちょっと集中。……聞こえた。


「これからとても大変な事が起きるらしいんだけど、被害をゼロにすることって出来る?」

「ははーん?あんた面白い事しでかしたね。そんなこと、その声に聞いた通りさ。被害は大きいよ。でも、別の視点から見れば被害はゼロさ」

「ほんと!」


それならあまり大きなことは起きないのかな?よかったー!


「良い方向に受け取りすぎさね。世界から見れば、その出来事はプラスにもマイナスにも動かない。つまりはゼロっていうことさ。あんたにとってはどんなに大きな影響を残してもね」

「え……?」

「別に、脅かそうとしてる訳じゃないさね。その被害を抑えるには、あんたらが育つ以外に正解はないのさ。どんな壁もぶち破れるように強くなりなさいな」

「強く……」


もっと、もっともっと強くならなきゃいけないんだ……。

正直、限界が少しずつ見えてきてたんだけども、まだ足りないんだ……。まだ、極みには至ってないから、まずはそこに行こう。そこになら、まだ行けそうな気がする。


「そうさね。最期の時に笑っていたいなら、どんな時代ときでも力を持つべきなのさ。そうすればなにも失わずに済むんだからねえ。それに、少しだけなら手伝ってやるさ」

「え?」

「手ほどきをしてやろうって言ってるのさね。少し準備をしてくるから、暫くあの子達のとこに戻ってな」



言われたことについて考えながら、振り返って辺りを眺めてながら聞いてみる。


「みんななに見てるのー?」

「石。なんか牽かれるんだよね」

「糸。ミサンガでも作ろうかなって思ってるんよ」

「あー……ほうきとか、チョークとかそういう道具系。空飛んでみたいし、なんかに使える気がするし」


秋斗くんは自由に飛んだことないもんね。


「なあ、この糸どうなってるん?」

「まじないがかかっていて、願いを叶える力が強くなってるよ。それに、願いも込めやすくなってるのさ。……それに、そこの石を砕いて石の力を埋め込むことも出来るよ」


あれおばあさん準備終わるの早くない?


「そりゃいいもんやな。冬陽、ちょっといいか」

「なに」


夏希は冬陽の耳元で口を隠しながら小声で話した。


「それいいね。ちょっと待ってね」


冬くんはさまざまな石を6つ手に取った。


「それで全部?」

「うん。春の分はアメジストにアクアマリンにラリマーにブルートパーズ、カイヤナイト、ラピスラズリ」


冬くんの口から石の名前がすらすらでてくる。


「んー……あと、これも入れよかな。この黒くて白い線が混じってるヤツ」

「ストラップタイプのブラックオニキスだね」

「冬くん物知りー」

「あはは。ちょっとね。んで、これが秋斗。シトリンにルチルレイテッドインクォーツ。イエローサファイアも」

「ほー。綺麗」

「ね。とりあえずこんなもんで次、夏希」

「んじゃあ、夏希くんはこれ!」

「メテオライト。それなら、ミッドナイトレースオブシディアン、シャーマナイト……あと、セレナイト。んで、最後は僕か」

「てかスピネルって石の名前……だよね?」

「そそ。たくさんの種類があって、色も様々なんだ」

「ガーネットと」

「レインボークォーツ!」

「えーっと、このプラチナル……?」


夏希も、馴れないみたいだけど、なんとか名を口ずさむ。


「プラチナルチルクォーツ」

「それ」

「んじゃシルバールチルクォーツも!」

「てか、スピネルってどれ?」

「ここらへんのやつ」

「青!」「緑の」


僕と秋斗は同時に言った。


「んじゃあ両方ね。しっかし凄いよね。全部本物だし質が凄くいい。お金足りるかな」

「残念ながらわたしゃお金に興味が無くてねえ。ここの石は金じゃ取引してないんだよ。他の物は金と取引してるんだけどね。だから、ここを見つけても持ち帰れない人が多いのさ。さて、ちっこいの。そろそろいいかい」

「うん!」

「へー。でも、選ぶぐらいはいいでしょ。春が7つで僕が6つ、秋斗と夏希が4つで少ないから二人の分を増やそっか。んと、春は行ってらっしゃい」

「はーい!」



おばあさんについて行き、カウンター横の階段を下り、それなりの広さがある部屋に着く。


「さて、始めるかね。ちっこいのは風を操るんだったかい?」

「そーだよー」


てか別にちっこくないし。


「んじゃあ、私が魔法で呼んだ風の制御を奪ってみな。分かりやすいように色をつけといてやるから」


おばあさんは杖を振るった。すると、青色の風の塊が生まれた。制御を奪う……支配すればいいのかな?

とりあえず風であの塊を覆って、入り込んで塗りつぶそうとしてみる。

……うそ、全然入り込む隙がない。


「なにこれ……」

「無理だろう?その風はよく《練って》あるからね。私たちの魔法はマナというものにエネルギーをどんな形で使うかで効力が全然違うのさね。あんたも風に自分のエネルギーを込めて丹念に練り上げてみな」


エネルギー……?


「《どれ》のこと?」

「……どれでもいいさね。ただ、ひとつだけに集中して操るんだよ」


まずは……これ。さらさらしてて水みたいで、空気みたいな、軽い上澄みの部分。風を呼んで、風に乗せて混ぜこむ。十分に馴染んだら塊に向かって、針みたいになってくれるようにお願いしてから放つ。


「いけっ!」

「おお、刺さったじゃないか。そこから入り込んでみな」

「……むり」

「だろうね。その段階じゃあ勢いを乗せたから刺さっただけで、勢いが死ねばそこで終わりさ。次は別のエネルギーを使ってみな。大丈夫さ、ちゃんと受け止めてやるさね」


次は上澄みの下。まだ薄いけど、さっきより濃い。すこしぺたぺたする。ちょっとやりずらい。新たな風に込めて馴染ませる。この間に、先程の風針を抜いて宙に浮かせたまま維持。


この空気、さっきより細かく形を変えれそう。ほそいけど、ドリルみたいな感じで、風で回転を加えて……。


「いくよ」


放つ。結構いけるけど、固さで負けてる。ドリル空洞だしね。てか魔女さんあの短時間でなんて物つくってるのさ。


「まだまださ。次を最後にしようか。いきなり扱うのは難しいだろうから、少しだけ切り離して混ぜるんだね。少しだよ」

「うん」


エネルギーの下の方の層。抽出……できるけど、なにこれ。水飴みたい。これは、纏わせる。いや、まずはこのまま練る。……よし、柔らかくなってきた。少しずつ空気を加えていく。


どんなかたちにしようか。剣に向いてる、気がする。でも、それなら三層にした方が良さそう。でも、今はあの風塊の支配を奪わなきゃだから、飲み込む?


まって、一旦整理しよ。まず、何処からも隙がないから中心から侵そうとして、破る手段を……。そっか、注射器!ドリルと注射器使お!


さっきの細めのドリルを少しだけ太く作り直して、浮かべておいた針の先端をちょっと改良。ぺたぺたするエネルギーを新たな風に混ぜて、注射器の形を作って、中身にさっき作った水飴エネルギーを馴染ませた空気を入れる。


「それで準備は終わったのかい?」

「うん。今度は絶対に負けないよ。いけ」


いつの間にか修復されていた風塊に、回転をかけたドリルをぶちこむ。そしてドリルが止まったところで風針でドリルを貫いて、少しだけ風塊にも窪みをつける。


風針を解除して、注射器をその窪みめがけて刺し込んで、ちゅー……と水飴みたいなのを注ぐ。やっぱりこっちの方が練りが上だ。水飴エネルギーを風塊の方に染み込ませる。でーきた。


「これ、色変えればいいの?」

「そうさね。やってごらん」


色が無くなるように操作してみる。


「ああっ!」


風塊弾けて消えちゃった。


「まあ操作を奪えただけで合格点さね。そのエネルギーを自由に使いこなせれば幅が広がるさ」

「……あっ、ありがとうございましたっ!」


なんか喪失感がすごいある……。てか、もしかしなくてもやばい技術を教えてもらった気がする……!


「いいのさね。さ、戻るよ。……しっかし初めてでここまでできるなんてね。たいしたもんさ」


────秋斗視点


「あ。春お帰りー」

「ただいまー!少しだけ強くなってきたよ!!」

「えらいえらい。これ、追加で選んだ石」


あれから結局7つずつになるように調節したんだよな。


「綺麗……。それに、この数ならブレスレットが作れそうだね!」


たしかに。この石貰えるかわからねーけど。


「あー、確かに。糸に混ぜんでそのまま使うのもありやな」

「……うん、もういいさね。楽しそうだし、そのちっこいのの《合格》祝いさ。選んだ分はただでやるから。その代わりに、ガーネットをそっちのロードライトガーネットに変更して、餞別として私からもいくつか見繕わせな!私は併の魔女さ。上手い具合に調合してやるさね」

「魔女さまかっこいい!」


いつの間にか崇められてる。何を教えてもらったんだか。




「いや多いって!多すぎだって!」

「あんたらの道ならこれだけの石のパワーを全部ひとつにして均等に4つに分けた方がいいのさね。しかも、石も糸も技術も、全部一級品さ。良いものが出来るよ。それに、石が朽ちてもその頃には糸に力が移ってる頃さ。糸の守りは良いものさね」


あれからこの魔女ばあさんはぽいぽいと石を選んだ。俺たちの選んだ石と合わせて63種。やるからには最高のものを作ってやるとのこと。採算度外視すぎて頭おかしい。しかも、どれも一級品以上のモノだろ。ありえねー……。


「さて、そこの糸を4本寄越しな。色は直感で選ぶと良いよ」


俺たちはそれぞれ適当に選ぶ。銀色に白藍色、泡藤色に紫苑色。この四色の糸が魔女ばあさんの手に渡る。


魔女ばあさんは巨釜を用意して、その中に透明な……液体に見えるけど、なんだこれ。わかんないけど、それを注いで火にかける。まだ温まらない内にいくつかの石を静かに入れた。


温まってから残りの石を入れて、長めの棒で混ぜ始めた。石が入っている、そんな音がしてたのに、次第にただ液体を混ぜているだけの音に変わっていった。


「ここからは企業秘密さね」


その言葉が合図のようで、部屋の明かりがすべて消え、辺りは暗闇に包まれた。




暫くすると、部屋は徐々に明るくなっていった。


「さて、出来上がりさね。どれが誰のかはわかるだろう。着けてみな」


カウンターの上には、4つのブレスレットがあった。それぞれ手にとって、腕に着ける。

……これ、やばい。


「なんか安心する」

「こっちはなんかざわざわする。落ち着かない」

「俺はなんも感じへんけど」

「……これ凄いな。色々混じってるせいで馴染むのには時間がかかりそうだけど」

「そうさ。まあ、着けてれば馴染むからね。気長に優しく接してくれさ。水とか、そういう弱点をカバーする魔法をかけてあるから、どんなところでも大丈夫さね」

「?!……めっちゃありがとうございます」


冬陽はふるふる震えながらそう言った。


「え?そんなに凄いことなの??」

「めっちゃ。めっちゃ凄い」

「そなんだ……。魔女さまありがとっ!!」



結局、あの後色々買おうとしたけれども、活かせる気がしなくてやめた。


「そうだ、またここに来れたなら、その時はもっと本格的に稽古してやるさね」


店を出る間際にそう言われた。けど、振り返った時にはもうそこに扉はなかった。


「ない……!?」

「夏希っ!」


俺は夏希の手をとり上空に転移した。夏希は俺の意図に気づいたようで、多少周囲を見渡してある方向に向けて重力を操った。


「届けっ……!」


空に浮かぶ扉。ドアノブまで後少しというところで、扉が開いた。


「残念でした。あんたらが来るのは今じゃないさね」


俺と夏希はそれぞれ白い光に包まれ、消えた。

というか、地上にいた。


「なっ?!」


笑ってばあさんは手を振っていた。そして、扉は徐々に薄れて消えていった。


こうして、俺らの不思議な散歩は終わった。

だって区域外なの忘れて能力使っちまったからな。気づいてから急いで区域内に転移したよ。

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