一章 二十四話 想定外と第二世界
────冬陽視点
春の持ってきた水で薬を飲んだ後、ふと、約束を思い出した。
傍らで手帳とにらめっこをしている秋斗に声をかける。
「ね、秋斗」
「なに?」
「今何時何分」
「22時23分」
ちゅーとはんぱ。
「ありがと。ね、30分したら起こしに来て」
「なんかすんの?」
「ちとね。はい、また後で」
秋斗を部屋から退出させてから、第二世界へ繋がる扉をつくり、能力を使って浮かんで移動。そのままあちら側に行く。まだだるくてこうでもしないと動けないから。
折角だから準備しないとね。この前、わりと重大な修正事項を見つけちゃったし。
「オリジナル、どうした?」
「いや、蒼が管理してる最中でも改変が加えられるように核への接触基盤を増やしてるんだよ。んしょ、僕もお仕事しよーっと」
増設した接触基盤の中に入り、取り込まれる。
ふわー……と体が浮く。そのまま、世界機構にアクセスして、編集を始める。
まず、アイテムとモンスターのリポップの仕組みを変更。1つの世界で時間制とかクソゲーじゃん。蒼簡略化し過ぎ。
ということで、世界を重ね合わせることに。
アイテムは各ユーザーの幸運《lack》値にそってポップ、ドロップのしやすさを……必須アイテムのリポップは時間経過が基本だけど、ボーナスは場所を一定区域内でランダムに生成……っと。
店は最初から標準的なアイテムを……価格設定は……たまに時価にしようか。いや、まあ世界で遊びつつ管理者やらせて、適宜ずらせばいっか。
それと、新規さんが来たらその人には割引するように通達しとけばいいかな。
生産職のために素材屋もいるね。まあそこらへんは管理者にやらせようか。んでユーザーが傘下について店を展開していけば価格の釣り上げとかは出来ないだろーし。
イベント設定は……あ、ここミスってる。修正。
フィールドもミスありすぎ。ここの地形モンスターの巣あったはずなのに消されてる?
こいつ設定ちゃんとみてやってる?
いや、自分でやるよりは時間たくさん使える分良いんだけど。
でも、あー、時間足りない……。
第二世界と僕の部屋をつなぐ扉を開けっ放しで作業してたんだけど、そのお陰でノック音に気づけて、ギリギリ色々隠せた。
「あ、起きてたんだ」
「うん。もう少しで11時……23時だね」
「ん……?どうしたんだ?」
「いや、秋斗、目瞑って」
何も言わずに秋斗は目を瞑った。
にしし。想造まじ便利。
秋斗の精神世界に入り込んで、楓さんのいるログハウスに向かう。こっちの世界はやっぱり綺麗。
楓さんはログハウスのある森林の外で、切り株に座って待っていた。
「お待たせ」
「はいー、ちょっと待ちましたー」
ふんわりと楓さんは笑う。
「さあお姫様、あの大樹まで行きましょう」
彼女はくすくすと笑いながらも、差し出した手をとってくれる。
「ええ。行きましょーかー」
二人で話しつつ、出来るだけあっちの世界に即馴染めるように様々な齟齬をなくしていく作業を頭の中で進める。楓さんに何かあったら大変だからね。
「さ、すぐに準備を済ませるから」
大樹に着いた僕は作業を進める。この樹はもともと僕らが生み出したものだから、ある程度なら僕らを繋げるラインとしての役割を果たしてくれる、はず。
「わあー、なんかきらきらし始めましたー!」
わ、ほんとだ。秋斗たちが目覚めないといいんだけど。
「もうちょっと……で、安定するから。ゲート、開いたら、手繋いで、一緒に、行こう」
もうちょっと。
「なにしてんの?」
この声は!?あータイミング悪すぎ!
「そらっ、邪魔しないで!」
「は?」
「楓さん、今!」
楓さんの手をとり、ゲートに飛び込む。
二人だけで飛び込めたらよかったのに……。
光の道の中、ちゃっかりついてきちゃってる空を咎める。
「空!邪魔しないでって言ったじゃん!!」
「はあ?てか、横のやつ!」
「へ?私がどーかしましたー?」
「いや……ほら、随分前に、転んでたから」
「……?あ。ああー!あの時はー、ありがとーですー」
えまじで?二人知り合い?
「てか待って、こっちに来ちゃったら暫く戻れないんだけど。空もこっち……どうしよ、あー!空!想定外の仕事増やすな!キャパシティギリギリなんだぞ!」
頭パンクしそう。てか空あっちの世界に馴染ませるのきついタイプの人間じゃん。
「は?知らねーよ。いやよくわからないけどそいつのことめっちゃ気になってたんだから仕方ねーだろ」
「はあー。しゃーないか二人ともついてきて。もうはぐれないから手は繋ぎなおさなくてもいいや」
管理人室に連れてって二人とも一気に仕上げるか。脳内で世界機構に接続して作業するより断然楽だし。
「蒼!見えてるでしょ!暫く外の世界見てて!ちゃんと先に渡した資料と照らし合わせてね、んで世界機構とかもろもろ貸し切るから暫くアクセスしないで!演算機構パンクするかもだから!!」
『あーい』
この会話の間にも、空と楓さんは楽しそうに会話をしている。意外と相性いいんだねこの二人。




