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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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一章 二話 能力

────春視点


さて、外に出てきたけど、上手くできるかな?……不安だから保険かけとこっかな。冬くんもまだ来てないし。


「ね、夏希くん。最初に僕から能力見せたいんだけどさ……」

「ん?」

「僕が、暴走したら止めてくれる?」

「もちろん。でも、無理はせんといてな?」

「うん!」


はは。見透かされてるや。……ごめんね。ちょっとやりたいことがあるんだ。


────冬陽視点


「まずは僕からやるねー!ちょっとはなれててー!」


春は僕たちが離れたのを確認してから、目を閉じて集中し始めた。そして1分くらい経つと春の近くで風が今までとは違う動きを始めた。その風は離れた僕たちのもとにそよ風を届けた。


「涼しい」

「春の能力は風を操れるんだ」


夏場に便利だね。

そして、少しずつ、春は宙に浮き始めた。けど、慣れてないのか、とても不安定に感じた。


「あ、浮いた」

「おお、前は操れるだけやったんに……」


ゆっくりと僕の家よりも高く浮いていく。そして僕たちの周囲で誇らしげな春の声がした。


「すごいでしょっ!」

「風で声を届けているの?凄いけど、なんか疲れてない?」


……聞こえてない、か。あくまでも一方通行みたいだね。


「はるー、もうそろそろ降りてこーい!」

「聞こえてなさそうだよ?どうするの、夏希。今すぐにでも動き出しそうだけど」

「ああ、向かえに行ってくるわ」


そういうと、突然体に懸かっている重力が弱まった。夏希の能力は重力操作みたい。……あ、夏希だけが浮いた。夏希も操作に慣れてないみたいで少しぎこちないけど、着実に春に近づいてる。


少ししてから夏希は春を支えながら降りてきた。先ほどまで吹いていた風はいつの間にか消えていて、降りてきた春は少しだけぐったりとしていた。


「大丈夫?」

「うん、慣れてないからちょっと疲れただけ。でも、すごいでしょ?夏くんと同じ。空に浮けるんだ」


気持ちはわかるんだけど……なんか春って不安定で危なっかしいよね。昔の秋斗みたい。


「凄かったけど、無理しちゃダメ。ね?」

「その通りやで、春。俺が操れるのは近くの重力だけで、春とは種類も影響力も違うんや。無理すんなって言ったやん」

「うん、ありがと」


春、夏希には話してたんだね。なら昔の秋斗より全然えらいや。


「春、夏希、おつかれ。次は俺な……?っと、その前に夏希と春は冬陽の家で鍵閉めて待ってて。面倒なのがここら辺を通るみたいだ」

「りょーかい。春行くで?」

「うん、またあとでね」


春、疲れてるみたいだけど、扉を閉める前にニコって笑える程度には元気みたいだね。よかった。


「冬、手かして」

「はい」


僕が秋斗の手を握ると、辺りの景色が突然変わった。そこは秋斗が家族と住んでいる家だった。


「ここ秋斗の家だよね?転移てきな?」

「そ。あと、未来視。いつものが少し強化された感じのやつ。少ししか見れないし、いつでも見れる訳じゃないけど」

「ほえー、理解。便利だね。ないす秋斗」


まじ便利。


「どちらさまー?」


階段を下りるタッタッタという音と共に懐かしい声が聞こえてきた。


朱音あかね?おじゃましてます」


……やっぱり朱音だ。最近色々忙しかったから会ってなかったんだよね。


「おー?冬くんじゃん!お帰り!えっと、おはよう?どうしたの?」


久しぶりにやろうかな、あれ。


「おはよう。秋斗に連れ込まれただけだよ。すぐ帰るよ?」

「おい冬陽、その言い方は人によっては誤解を招くだろ」

「ん?兄ちゃんなんか疲れてない?」


やっぱりのってくれた。朱音、口角が少しあがってる。

多分僕もだと思うけどね。秋斗、少し本気で焦るからみてて楽しいんだよね。焦る理由もわかるけど。


「転移してきたからだよ?!」

「あっれー、どうしてむきになってるのかなー?」


あ、朱音笑っちゃった。


「はは、なんか懐かしいや」


本当、懐かしい。


「久しぶりだからねー。あ、そうだ!なんかに襲われても良いように障壁張っとこうか?」

「やっぱ朱音も能力もち?」

「うん、兄ちゃんとおなじ複数持ちだよー」


あ、未来を軽く見れるのも能力扱いなんだ。もともとあったのに。変なの。


「ちなみに複数持ちは珍しいらしいぞ?」

「そーなんだ。朱音障壁よろしくー」

「あーい。私から遠いとおもいっきり1回殴られるだけで消えるからね」

「ありがと。ちなみにもう1つは?」

「治癒能力。よくわかんないんだけどね?」

「みせてー」


二人とも便利そうな能力だよね。助かるよ。


「はあ、少し休んだら冬陽の家に移動するからなー」


そう言うと秋斗は二階へ行った。自室に行ったのかな?


「いくよー?」


すると朱音の手がほんのり暖かみのある光に包まれた。


「でもこれどうやって使うのかな?怪我なんてそうそうしないし」

「んと、その光で傷を覆うようにすれば、じわじわ治ってくみたいだよ?」


便利だね。これから重宝しそう。


「何でわかるの?」

「なんか1回見ればどんな能力かがわかって使える感じがするんだ。だからだよ」


まだ人の能力使って無いからなんとなくとしか言えないんだけどね。んで、秋斗の未来視はなんかよく分かんなくて、使えそうじゃなかったから能力じゃないのかと思ってた。昔からそれっぽいのはあったし。


「なにそれー、すごい!そしてずるい!じゃあお兄ちゃんの変わりに転移してみれば?」

「ん、そうだね、じゃあ秋斗呼んで?」

「来たよ」


未来視じゃなくて地獄耳なんじゃない?


「早いね。わざわざ転移してきたんだ」

「そりゃもちろん。慣れれば体力の消費も少なくなるみたいだから」


もちろんなんだ……。まあ、早めに慣れるべきかもしれないけどさ。


「じゃあ行く?」

「冬くんが連れてってくれるって」

「冬陽がやんの?」


あ、地獄耳じゃなかった。


「うん、出来そうだからやってみる」

「じゃあ、はい」


秋斗はそう言って手を差し出した。それを軽く握り、目を閉じて自分の家の玄関へ移動しようと試みる。


僕が目を開けてみると、転移は成功していた。


「おめでと、冬陽」

「うん、ありがと。実験成功だね」




「あー!二人ともお帰りー、どこに行ってたのー?」

「ただいま。ちょっと秋斗の家に」


ん、大分元気になってる。


「そうなんだー、妹さん元気だった?」

「うん、そういえば彼女も能力者だったよー」

「いーなー」


春のこの言葉は単純に能力を持っていることに対しての言葉か、兄弟がいることに対しての言葉か、どっちに対するものなんだろ。……考えすぎかな。でも、春はたまに凄く悲しそうな顔するんだよね。


「春も持ってるでしょ。お帰り、秋斗、冬陽。ちゃんと鍵閉まってたよな?」

「ただいまー。閉まってたよー」

「おー。だから能力で入ってきた」

「それ本当便利だよな」


わかる。転移便利。


「いや、そうなんだけどさ。冬陽の能力の方がヤバかったんだよ」


僕にとっては皆の方がヤバいと思うけどね。


「なにそれー!」

「他人の能力をコピーしてコレクション出来るみたいだよ」

「しかも能力を一回でもみれば何度でも使えるんだってよ」


僕の能力は《派生》しないから、使える能力を増やすには能力者に会いに行く手間があるんだよね。今のままだと、だけどね。


「うわー、それはヤバイな」

「てことは僕らの能力も使えるの?」

「うん、まだ試してないけどね」

「……でも、大丈夫か? 冬陽」

「あー、そっか。その能力で寝たままは危ないよな」


そう。問題は病気のせいで圧倒的に動ける時間が少ないこと。


「ならさ、一緒に住もう?皆で、冬くんの家に。そしたら安全だよね?」

「うーん、住むのは良いけど僕が最低限生活できる物しか無いからねー。泊まれて1人、頑張っても2人が限界だと思うよ」


家は広いけど、ベッドとかは1つしか無いからね。……流石に床に寝るのは嫌だろうし。


「はーい!僕住みたい!」

「いや、1日交代で回せばよくねーか?」

「えー、秋くんの日に冬くんが襲われそうだから嫌だー」


わかる。否定出来ない。


「やけど能力的にはその日が1番安全なんやけどなー。しかも交代制はめんどくないか?」

「いや襲わねーよ!?何でそんな信用ねーの!俺なんもしてねーだろ?!…………ねーよな?」


このメンバーで遊ぶようになってからは確かに無いけど、昔を知ってる僕としてはね。


「ははっ、僕は秋斗でもいいよ?便利だから」


少し笑っちゃった。ま、秋斗には慣れてるから別にいいけどね。


「ま、この話はまた夜にでもしよか。長くなりそうやし」

「ならさ、1つ聞きたいことがあるんだけど。今も病院は普通なの?」

「そのはずだけど、どうして?薬無くなりそうなの?」

「いや、これからどうなるか分からないからね。行っておこうかと」


先生、神出鬼没なとこがあるから早めに会わないと……。


「送るか?」

「うん、よろしく。待ってて。準備してくる」


僕は必要な物を取りに自室へ戻った。


────夏希視点


「……俺らもサポートせなな?」

「うん!そのためにも、ね?」


まずは能力に慣れないと。


「秋斗、よろしくな」

「ああ、わかってる」

「なんの話?」


冬陽、神出鬼没なとこあるよな。


「早かったな。何取ってきたん?」

「お薬手帳と財布」

「冬くんは常に持ち歩かないとダメだよ?」

「誘拐されたんだからしょーがない」

「たしかに……!」


秋斗への信頼の無さは半分ネタになってるよな。


「もう、いいか……?」

「?いいよ。よろしく。じゃ、またね?」


ああ、無自覚なのもいた。


「ああ、またあとで」


────冬陽視点


挨拶を終えると、景色は人気ひとけの無い路地裏に変わっていた。


「じゃ、いこーぜ!」

「道わかる?」

「それより、先生に連絡したのか、冬」

「…………あ」


忘れてた。

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