一章 十八話 お墓参り
────冬陽視点
あの後、彼と別れて洞窟から戻ってきた僕らは、暗くなったらまたここに集まることにして、一時的に解散したんだ。
ちょっと面倒だけど、さっき保護した人たちの様子を見るために、僕は今第二世界の狭間にいる。
第二世界は表世界とは時間の流れを変えてあるから、今は昼くらい。んー、あの人たちの様子を見に行く前に管理世界に寄ってかないとなあ。久しぶりに、蒼と遊びたいし。
「蒼!久しぶり!!」
「おー、オリジナルじゃん。どしたの。手伝いに来たの?」
あ、目が責めてる。そういえば情報コピーして指示出した後ずっと放置してたもんね。
「ごめんて。進捗状況は?」
「世界構築は全部やった。馴染むまではまだ時間がかかりそう。管理者の構築はオリジナルがやるんでしょ?」
「うん。そのつもりなんだけど、表世界から一人呼んで管理者をやってもらうことになった」
「生身の人間じゃ耐えられないでしょ」
「いや、精神体だから大丈夫」
「ふーん。まあ、全権はオリジナルにあるんだしいいんじゃない。けど使えない手足は要らないからね」
一人でいるうちにだいぶ尖ったね。
「いや、管理世界までは来させないよ。実際にはテストユーザーの一人みたいなもんだから、形だけみたいなもん」
「それならいいや。あとで情報のアップデートよろしく」
「あーい。夜にまた来るからその時にね」
蒼が用事は終わったとばかりに世界核の内部に戻ってっちゃった。つれないなあ。
あー……なんかめんどい。思い入れの無い人を今こっちに招くのは失敗だったな。うん。時間あるし、こんな心持ちで行きたくないけど、お墓参りしてこよ。
「あ、冬陽ちゃん!いらっしゃい。今年は早かったね」
「ええ、ちょっと忙しくなりそうなので。琴音さん、いつも通りお願いします」
父さんのお墓に供える花は昔から同じ。昔馴染みのお花屋さんで《紫苑》という花を何本か買い、お墓へ向かう。
父さんの墓は街を見下ろせる崖の上にぽつんとある。実はここもあの花屋も隔離区域外なんだけど、まあ気にしない。そんなことはどうだっていいからね。
お墓参りを済ませて、何かがないかを探す。特に何も感じないし、あるようにも見えない。スピネルはさっきから飛び回ってる。その速度は、びゅんびゅんびゅんびゅんとあり得ないくらい早い。そして何かに気づいたらしい。
『ああ、魔方陣が何処にもないと思ったら、特別大きくて複雑なのが隠されてたわ。上手い具合に混ぜたのね』
スピネルは手に鍵のような形の光(?)を持っていた。てか何の話?
『転移魔方陣よ。それに隠蔽、希薄、不可視、不可侵、安定、他にもたくさんの要素が込められているの。それが、この街に混ざりこんでいたの。あなたの父親のお墓を中心としてね。さて、起動するから暫く目を瞑っていて』
僕は大人しく目を瞑った。