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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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一章 十四話 翌日

────冬陽視点


朝、冬陽が起きると秋斗は部屋にいなかった。……まって、なんでいないの?!


「あれ……僕何日寝てたの? ……そうだ、スピネル!」

『なによ、朝からうるさいわね。まだ5時よ?』

「そうじゃなくて、僕何日寝てた?秋斗はどこ?」

『何日って、八時間ぐらいしか寝てないわよ。横で寝てた子ならすぐ戻ってくるわよ。……私戻るわね、もうちょっと寝てくる』


扉の前に気配を感じた。異空間だから感じるわけないのに。でも、秋斗だ。扉が開いた瞬間、抱きついた。


「秋斗っ!」

「っ!……おはよう、冬陽。どうしたんだ?」

「!?なんで半裸なのさっ!」


色々おかしいでしょ!?


「そりゃ風呂上がりだし。服こっちだし。シャツ忘れてたんだよ。んで、どうした?」

「……別に。僕も風呂行ってくる」


なんで僕はこんなに狼狽えてるんだろ。いや、さっきまで見ていた夢のせいなんだけどさ。……はあ。


────スピネル視点


「どうしたんだろ、あいつ」

『心配してたのよ、あんたのこと』

「えっ?」


あ、この子にまで聴こえるようになってる……。なんなのよ、この家の人間は。


────冬陽視点


お風呂きもちー。


「ふぅ、どうしたんだろ。昨日慣れないことしたからかなぁ」

「おーい、冬陽、いるかー?」

「いるよー、どしたのー?」

「今日、6時からなんか用事あるのかー?」

「どーして?」

「いや、お前が慌てて準備してるのが見えたんだよ」

「……あ、やばっ!」


忘れてた!!




「間に合った……」

「あ、シオンさん、おはようございます。……セーフですね」

「はは、おはようございます」

「が……シオン。来たのか」

いわさん、わかってますよね?」

「……ああ。気をつける」

「お願いします。てか、他に人が見えませんね」

「ええ、今は集合時間の三十分前ですから」


あー……うん。ありがたいや。今だって遅刻すれすれだったし。


「……ありがとうございます」

「いえ、不安だったもので。ふふっ、起きれたようでよかったです」




「……他のメンバーも集まってきたわね。今東口方面から歩いてきた二人の能力は、念話と能力の挟域ジャミング。とある部隊から派遣されてきたらしいわよ」

「……僕、彼ら苦手なんですよね。ははは」

「彼ら、無愛想だからかしら?」

「ええ、あと、彼らを呼びたいとき、困るんですよ」

「やつらのような裏の人間は名乗らないからな」


裏の人間だったらこんなとこにいないでしょ。裏だとしても表に近い方の人間だね。


「あ、髪が赤い人が来ましたよ。彼は?」

「赤髪の人は……多分シオンさんと同じ立場の人だと思います。彼の後ろを歩いている人は僕達と同じ警察官で、かなでさんです」


なんか似てる。


「兄弟ですかね?」

「おそらく」

「北口からもきたぞ」

「三人、ですね。あ、転んだ。ちょっと行ってきます」




「大丈夫ですか?」

「は、はい。……大丈夫、です」


血出てるじゃん。


「でも、血でてますよ。僕……いえ、私は回復系の能力持ちなので、すぐに治せますよ?」

「でっ、でも……」

「陽菜」

「お……お願い、します」


うーん、この2人はどういう関係だろ。


「はい。では失礼します」


とりあえず、傷口に手をかざして能力を使った。


「すまない。妹は少々人見知りなんだ」

「……兄上」

「お二人はご兄妹でしたか。……はい、もう大丈夫です」


兄妹……随分と過保護なお兄さんだね。


「ありがとう、ごさいます。随分と」

「随分と早いのだな」

「っ!」


この子怯えてんじゃん。3人目はなんか屑い人な気がする……。


「妹を脅かさないでくれないか。倉田さん。(今ここでお前の首を飛ばしてやろうか?)」


ん?とても物騒なことが聞こえてきたんだけど。


「クヒヒッ、これは失礼。須藤さま」

「……あの、早く中央広場に行きません?時間が」


嫌な予感するなあ。




「申し訳ございません。お待たせいたしました」

「いえ、事情は聞いていたので。あと、まだ時間はありますし、大丈夫ですよ」




「さて、皆さんお集まりのようなので顔合わせと自己紹介を始めましょうか。能力は最低でも1つは言ってくださいね?順番は私たち岩西班、冴木班、倉田班の順でお願いするわ。あと、聞いてるとは思うけど、今回は民間人の協力者がいるわ」


あの屑い人警察官なの?!あれで?


「……俺は岩西勝。能力は透明化」

「私は灰崎夕深。能力は稲妻」


考えてなかった……。


「君は治癒の能力者でよろしく」


灰崎さんが小声で指示くれた。楽。


「僕は佐藤要です。能力支配の能力者です」

「私は詩音、です。治癒の能力者です。……あ、民間人です」

「シオンちゃんよろしくー!」


赤髪の人うざいキャラしてんなあ。


「おい、黙れ。無職が」

「奏くん冷たーい!反抗期ー?っ!」


頭思いっきり殴られてる。ざまあみろ。


「うちの兄が失礼しました。続けてください」


あれが兄とか可哀想。

……でも、ちょっと楽しそうかも。


冴木さえきまもるだ。守護系の能力者だ。とある事情につき、後の二人は能力のみの紹介となる」

「俺の能力は他者の能力をジャミングすることだ」

「念話の能力者だ。離れた相手との会話を可能にする。我らは以上だ」


なんかこの人たち弱そう。


「私は倉田くらた正義せいぎ。空間固定の能力者だ。お前たちをサポートしてやるから感謝したまえ」



「俺、こいつの下に着くの嫌なんやけど……」

「兄上、素がでてます」


隣にいると小声で話してるのが聞こえてくるよね。……夏希の親族だったりするのかなあ?なんか、《近い》気がする。


「はぁ……俺は須藤すどう亜羅汰あらた。こいつにスカウトされて連れてこられた。浮遊能力者……です。こっちは妹の」

須藤すどう陽菜ひなです。付与の能力者です。よ、よろしくお願いします!」

喜谷きたにほむらでーす!弟についてきました。陽菜ちゃん、シオンちゃん。よろしくね!」


弟さんが可哀想すぎて辛い。


「本当にごめんなさい。焔は炎で敵を拘束できます。僕は、喜谷きたにかなでです。身体能力を向上させたり、水、氷を操れます」


あ、便利そうな能力もってる。


「はい、総勢十二名ね。さて、実際に、少し能力を見せてもらうわね。……リオン、頼めるかしら?」


多分僕のこと、かな?はぁ。扉を創って……別次元に繋げて…………?なんか邪魔だな、ジャミングかな……能力に干渉して……。よし、いけた。


「うおっ、いつの間にか扉が出来てる!」

「実は、協力者がもう一人いるのよ。姿は見せてくれないけどね。さ、行きましょうか」


灰崎さんは扉を開けた。




「夕方みたい……綺麗」


『おい、お前は何者だ』

『頭のなかに直接……ジャミングさんですか?』

『ああ。で、お前は何者だと聞いてるんだが?』

『灰崎さんにでも聞いたらいいんじゃないんですか?』

『は?……なぜ彼女の名が』


はぁ、面倒だなぁ。……そうだ、一旦この世界の時間を止めようっと。




さて、時も停められたし、彼らの記憶を書き換えようかな?


『ねぇ、あんた。いつの間にそんなことできるようになったの?』

「スピネル?出てきたんだ。記憶への介入は小学生の頃に、ね?」

『やっぱり、あなたルカの子どもね。血が覚醒する前に能力を使うなんて。しかも魔女としての能力を2つ持っている者はなかなかいないのよ。基本は血族から受け継いだ能力だけなんだけどなぁ』


そんなこと知らないよ。なんか使えたんだし。

さて、記憶の糸を辿って……ドアが出来た場所はジャミングの範囲外だったことにしよ。あとは、編集した糸をもとの場所に戻して……。



「よし、出来た。はぁー、やっぱり慣れないことをするのは疲れるな。」

『ついでに、灰崎さんにこの世界を説明しとけば?』

「そうだね……灰崎夕深さーん。起きてー」

「っ!……どういうこと?」

「ほら、昨日見せましたよね、僕の能力一覧」

「あ、ああ……さっきはありがとうね。助かったわ。えっと、リオンとシオンは双子っていう設定でいいかしら?」


いやー、察してくれる大人はいいねえ。


「はい、わかりました。で、本題行っていいですか?」

「ええ。きっと、ここのことよね?」

「はい。ここの説明です。ここはさっきまでいた世界の《裏》です。常に夕方だけど、月があったり、星があったりする世界です。生き物は存在してません。あ、名前は適当につけてもいいですよ?」


この人はどんな名前をつけるのかな?


「そう……わかったわ、ありがとう」

「さて、時を動かしますよ 」




「ここは常夕とこせき。常に夕方の世界よ。さっきまでいた世界を表と考えると、ここは裏にあたるわ。さて、皆さんにはここで能力を使ってもらうわ。冴木班は免除ね。あと、出来れば隠し事は無しの方向でお願いしたいのだけれど……」

『あ、表の世界に影響は出ないので、暴れても大丈夫です』


念話って便利な能力だね。


「なら、最初に私の能力を使うべきだな」

「いえ、この世界で空間固定は要らないわ。……もしかして、ここから出られなくなりたいの?それとも、他に能力があるのかしら?倉田さん」


灰崎さんは言外に『可能性を広げる訓練もしていないのだろうし』という意味を込めていた。明らかすぎるけど、煽りとしてはいい感じだね。


「なっ、なにをっ!」


この人、本当に無能の気配しかしないんだけど。


「あー。最初、僕たちがやりますよ。陽菜、頼むな」

「う、うん」


陽菜さんは目をつぶり、手を前にかざすと、直径3メートル程の一本の木が生えた。


「陽菜!なにやっとん!?」

「あ、れ?いつも通りやったんだけど……」


スピネル、なんで?


『彼女は能力ととても相性がよくて、精霊にも好かれているの。それで、ここは精霊にとっては楽園の様な環境だから能力が増幅されたんじゃないかしら』

『そっか、ありがと』


ん、念話使ったら楽。たぶん前にスピネルが言ってた方法と違うけど。てか妖精さんはどんな存在なんだろ。あっちの世界でも導入してみようかな。


「攻撃系の能力者が何人いるかわからないので、逆にありがたいです」

「そうですか……。そう言ってもらえると、ありがたいです。えっと、次、付与やりますね。兄上、お願いします」

「ほいっと」


すると、陽菜の周囲に風が吹いた。


「これは、風迅って言って、凄く早く動けます。これを皆さんに付与しますね。あ、付与したら動かないでください」


すると、全員に風がまとわりついた。そして、陽菜の忠告通り動く人はいなかった。ある1名を除いて。


「うわっ、なんだこれ!」


倉田さんが高速移動してる。


「またあんたか、動くなって言ったよな?」


亜羅汰さんがそう言うと、倉田さんはどこからか現れたいばらに囚われた。……いい実験台になった、のかな?


「ヒ、ヒイィィィ!なんだこれ!痛いっ!痛いぃぃ!!」

「それは茨ですよ。いくら刺さるからといっても大袈裟すぎませんか?せめてもっとお静かに……。はぁ、暫く思考を奪わせてもらいますね」


要さんがそう言うと倉田さんは動かなくなった。いやー、本当に実験台というか、噛ませ犬というか。


「だから天狗は嫌いなのよ。リオン、頼めるかしら」

『別次元にでも放っておきますね』

「消えた……」


冴木さんが身震いしてる。なにか思うところがあるのかな?


「はぁ、じゃあ、最後に木を斬り倒すので、一ヶ所に纏まっててもらえます?」

「護さん、頼むわね」

「……了解した」


僕たちは白い膜に包まれた。この膜色変えられるんだ。便利。白色は強度重視で、それ以外の状態でもわりと固いんだって。


「じゃあ、いきますね」


亜羅汰さんは不可視の刃、風刃ふうじんを放つと羽を生やして空を飛び、木を蹴って倒れる方向をずらした。




「じゃあ、次は僕たちがやります。まず、水牢」


奏さんが水牢と言うと、焔さんを水が包んだ。


「おい!なにすんだよ!」

「次に、水を氷に」


すると、赤髪ほむらさんを包んでいた水が、一瞬で氷に変化した。


「ぽんこつ、もう出て来ていいよ」

「あー、めんどくせーなー!」


ぽんこつって……。あ、氷が割れた。


「はい、兄の能力は火を操れます。鞭を作ったり、牢獄を作ったり出来ます。以上です」


また殴られてる。しかも身体能力向上させた上で殴ってるじゃん。痛そう。


「っ、毎回本気で殴るのやめて……」




「最後に、私たちね。岩さん、頼むわ」

「……ああ、俺の能力は透明になることと、拳闘術だ。試しにそこの木を殴ってみるぞ……」


そう言うと、岩西さんは倒木を軽く殴った。すると爆音が響き、木は粉々になった。


「粉々だ」


暗殺者みたい。


「次、私ね。私は稲妻を操ったり、電気を纏って早く動けたりするわ。こんな風にね」


灰崎さんは空に雷で竜を作った。


「僕は、人の能力を支配したり、思考力を奪ったり出来ます。……風迅の付与を解除しますね」


すると、全員が纏っていた風が止まった。


「最後に、私は怪我を傷跡を残さずに回復させられます。……えっと、誰か怪我をしている人はいませんか?」

「その子はいいでしょ。僕らがもう見ているんだから。それに、わざわざ環境を整えるのもね?……あ、倉田さっきのなら喜んで傷まみれにしてあげますけど」


え、あんまりあの人に使いたくない。


「……という事で、なにか言いたいことは無いかしら?」


誰も、言いたいことは無いみたい。


「なら、外に出ましょうか。リオン、よろしくね」


いやー、予想外にたくさん能力を貰えてよかったな。けど、まだまだ足りないなー。

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