表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
11/81

一章 十一話 二人の秘密

男同士の絡みがあります。苦手な方はお気を付けください。次話の前書きにどんなことがあったかを書きますので飛ばしても大丈夫です。

────冬陽視点


秋斗は僕を部屋の中に通し、扉を閉め、がちゃりと扉の鍵を閉めた。


「もー、無理。なー、冬。しばらく、甘えさせて」


彼は、堪えきれないようにベッドに座っていた僕を押し倒した。


「別に、甘えるのは良いけど、ベッドに押し倒すのはどうかと思うよ。昔から、この癖だけは変わんないよね」


これは、彼が疲れて限界が近い時の癖。昔から、僕が親に捨てられて、秋斗の家に預けられていた時から、この癖はずっと変わっていない。


「……ごめん。でも、少しだけだから。これ以上はなにもしないから」


これは幼い頃からの、僕らだけの秘密。

……秋斗にはあまり無理して欲しくないんだけどな。いつものバランスを取り戻すのが少し大変だから。距離が近すぎるのもあるんだけど、本質は別にある。


「わかってるよ。でも、秋斗。最近だいぶ無理してるんでしょ」


彼は……彼のなかには四つの人格があるから。彼らのバランスが不安定になるんだ。


「……夏希、なんか言ってたか?」


いつも表に出ているのは、最初の人格、《秋斗》。


「夏希も何も言ってなかったよ。たださ、前より目つきが少し鋭くなってる気がしてね。最近過剰に目を凝らしてるんじゃない?無理のし過ぎは駄目だよ」


基本的に、バランスが崩れない限りは秋斗が表に出ている。


「そっか……やっぱ冬君にはお見通しだね」


でも彼、秋斗は無理をしすぎると、バランスが崩れて他の人格に混ざりやすく、埋もれやすくなって、彼らと交代して休まないと自分を保てなくなるんだ。


「あ、秋くんだ。秋斗、そこまで無理してた……ね、うん」


僕は、彼らを知っている。……いや、彼らも含めて《神城秋斗》という人間を、昔から知っている。

最初は今より人数が多かったんだけど、僕が彼らを統合したから。一応彼ら全員と話したことがある。


「うん。何が起こるかわかんない状況でも、皆を守るために常に気を張り巡らせて奔走してたんだよ。……彼らは気付いてないとは思うんだけど、たまに外で僕が出てくる事が何回かあったよ」


今話しているのはあきくん。彼らの中でも、特に優しい子。秋斗から、最初に分かれてしまった子。


「だいぶ重症だね……。それなら、今日はここに居ることにするよ。秋斗に説明よろしくね。僕はちょっと夏希にラインするから」


秋斗は、外にいるときは彼らと交代しないようにしている。周りに違和感を与えないために。彼らは基本的に秋斗に協力的だからめったに表には出てこない。秋斗が気を失った時とかは出てくるらしいけど。……秋くんの話だと、秋斗は最近、外で意識が途絶えることがあるみたい。



「よし。ねぇ、秋斗。少しは落ち着いた?」


もうそろそろ、秋斗が戻ってくるはず。


「あー、うん。秋から聞いた。……本当に良いのか?夜はアイツが出てくるかも知れないけど」


戻ってきてた。アイツ、か。僕は別に大丈夫なんだけど、問題は《交代》しているときも記憶がだいたい共有されることなんだよね……。


「うん。君たちとは付き合い長いし、最悪襲われてもちゅーまでなら大丈夫。で、なにしてほしい?」


彼は、彼らの中でも性欲が強いんだよね。ははは。その記憶を秋斗があとで思い返して悶える?らしいんだけど……。


「……今回は添い寝がいいってよ。都合の良いときばっか俺のこと呼びやがって。あとでこいつの時に言っといてくれよな」


あ、当人が出てきた。彼はソラ。気が強くて少し尖っている子。でも、やっぱり優しいところがあるし、面倒見もいいから憎めない子。


「空にまで……本当に無理しすぎじゃん」


空は何を言うか分からないから、僕があまり表では出てこれないように細工をしたんだけど……うん、もう一度細工しなおした方がいいね。術が解けかけてる。


「話きーてんのかよ。冬。てか、お前の髪雪みたいだな。触り心地もきもちーし。女みてぇ」


あ、やっぱりいつも通りのあぶないやつだ。秋斗、相当ヤバイのかも……。


「ほんと、空はいつもどおりだね。性欲の塊みたい」


……強制的に疲れを抜こうかな。多分、空さえ丸め込めれば、今なら出来るかもしれないし。


「あ?男なんてそんなもんだろ。てめーらが薄すぎるだけだ。それよりよー、今回はキスまでならいーんだよな?」


やっぱ空ちょろい。これなら上手くいきそう。


「今回は、ね。次は無いから」

「俺に押し倒されてるのに随分と強気だなー。冬陽さんよ」


そう言ってニヒルな笑みを溢してるけど、あんまり怖くない。


「だって、する気無いでしょ」


空のことも信用してるから、だいたいは大丈夫ってわかるんだけど、たまに本気マジになるんだよね。……あのときは大変だったなぁ。


「ああ、よくわかってんな」


って、ちょっとまって。この空、理性保つのに割りと必死になってる方の空かも。


「一応、付き合い長いしね。でも、ここのはどういう意味?」


あ、目が泳いだ。


「それは、あれだ。この頃起きて、帰ってきてもすぐに倒れこむように寝てたから……な?」


あ、このままここにいたらヤバそう。空に付き合わされそう。何にとは言わないけど。よし逃げよう。


「僕、外に出てようか?」


空は支配力強いから、一度出てきたら戻りずらいんだよね……。


「だめっ!……一人にしちゃヤダ」


なんで秋くん出てくるの……。もしかして僕が秋くんに弱いのやっぱ気付かれてた?取り敢えず話逸らさなきゃ……。


「ころころ人格変わるね」


ははは、と笑いながら言ってみる。

お願い、折れて……!なんで目を潤ませてるの!待って!


「……我慢するから。行かないで。お願い、冬くん」


逸らせなかった……あぁ、もう!


「もしかして僕が秋くんに弱いの知っててやってるの?……はぁ。でも、苦しいでしょ?それ」


もういいや。


「だいじょう、ぶ、だからっ!近くに、いて」


秋くん、純粋だけど、持つのかなぁ。あ!さっきの続き、いけるかな?


「どこにも行かないよ。大丈夫。ねえ、秋くん。暫く秋斗と秋くんは耳と目をつぶっていてね。あと、空に体を明け渡してもらえる?」


これで空が出てくれば……少し恥ずかしいけど、なんとかなる……!


「わかった。……なにするんだ?冬」


きた!ナイス空!!


「……きもちいいこと。たまってるんでしょ、手伝ってあげる」


(疲れが)溜まってるんでしょ?(また暫く一人でも十二分に動けるように少し)手伝って、(体の凝りとか頭の中とか色々ほぐして)気持ちよくしてあげる。


「まじで?!……俺に支配権が7割も割かれたと思ったらそういうことかよ。ちょっと待ってろよ」


聞いて即服脱ぐなよ。本当にこいつ獣かよ……!


「恥ずかしいから、二人へのラインちゃんと絶ちきってよ」


秋斗に知られたらヤバイよね、これ。というより若干恥ずい。


「ああ、大丈夫、だ」


ここまで来たら、僕の勝ち。空、基本嘘つかないからね。


「なら、別の次元に行くよ。手握って」




「こっちの次元は、っ……夕方みたい、だな」


だね。ここは何もいない、裏の世界だから、綺麗なんだよ?……あれ?


「そういうとこなんだ。……随分辛そうだね。空」


どうしたんだろ、空。さっきより息が荒いんだけど……。大丈夫かな?


「興奮、してんのにっ、慣れないことさせるからに、決まってんじゃねーか。馬鹿」


なんだ、そんなことか……それなら……。


「そっか。さあ、とっとと始めようか」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ