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いつかの夢と僕らの日常  作者: 古屋
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一章 十話 寝ている間に

────冬陽視点


考えるの面倒だしもうどうとでもなれ。


「さて、帰ってきたね。ね、夏希、部屋行こ?」

「やね。でも、その前に。冬陽が寝てた時の話せなな」


あー、それもあるんだ。本当に不便だなあ、この体。


「……だね。よろしく」

「まず、今回、冬陽が眠りについてから2ヶ月で目が覚めた。そこまではいいよな?」

「うん」

「その2ヶ月で、能力者の隔離地域が制定された。で、その中でも《能力完全解放地区》と《能力規制地区》っていう2つの区画分けがされたんだ」


さっき夏希に聞いたから一応知ってる。


「因みに、ここも《能力完全解放地区》だよ。秋斗、警察の人に相談して、便宜を図ってもらったんだって。流石だよねー」



「ねぇ、夏希、春どうしたの?黒くない??」


声を潜めてまだマトモそうな夏希に聞いてみる。


「誰かさんが薬を飲み忘れて2ヶ月眠ってたからやぞ」

「僕のせいなのか……」


そういえば旅行の計画もたててたもんね。忙しくて忘れてたけど。



「話を戻すぞ。隔離地域は一応非能力者の出入りは自由とされている。理由もなく入ってくる馬鹿はいねーけどな」

「あと、その関係で能力者は仕事を失いましたとさ。政府の人ら、頭そこまで回らんかったんやと」

「そこで、警察側が働いて、能力者の保護計画を打ち出した。治安維持のための策でな」

「これも原案は秋斗だよー。影響力凄いよねー。流石裏社会のボス」



「ねぇ、二人ともヤバくない?」

「諦めも肝心やぞ。後で部屋に行くとき覚悟しといた方がいいやろね。何かされても助けられんし。それとも、俺の部屋で時間稼ぐか?」


その方がいいかな。しかも話の内容によっては結構時間食いそうだし。


「……だね」

「どうした?冬陽までそこに同意しなくて良いと思うんだが……」


思ったより声でてた!!!


「ささ、気にしないで続けていいよ!」

「いや、知っといた方がいいことはこれくらいだな」

「次は僕らのことだよー。僕は風を操るだけだったのが、空気を操れるようになったよ!人への酸素供給を止められるし、空気を圧縮して壁を作ったり、足場にしたり、色々出来るようになったよ!」


さらっと物騒なこと言ってない?!


「だいぶ進化してるね。さっきはありがとね。助かったよ」


これ褒めとかないとヤバイやつだ……!!


「えへへー!これからはどんどん頼ってくれていいんだよー!」


犬みたいに戻った。けどまだ猛獣っぽい。ほんとやばいのかも。思いつめるほど訓練とかしてないよね……?


「次は俺な!未来視がだいぶ使えるようになった!そのお陰で対人戦闘無敵になったぞ!!」

「はは、何かあったらちゃんと助けてよ」


そんな物騒なことしなくていいからね!?自分の身は自分で守れるよ……。


「おう!」

「次は俺の番やけど、部屋でじっくり、な?時間はたっぷりあるし」

「なら、部屋早く行こ!」


夏希め……後で後悔させてやる!!取り敢えず逃げなきゃ。ここにいたら何に巻き込まれるかわかんないし……!

夏希の手を握って夏希の部屋の前に転移した。部屋の中に直接転移とか、扉を部屋の所有者以外が外側から開けれないようにとかしてあるからね。


「あいつらが来る前に早く扉開けて!!」

「はい、どーぞ」


夏希が扉を開けて、すぐさま部屋に滑り込む。


「なんであそこで二人煽ったの?!夏希のバーカっ!」

「つい」


楽しそうに笑いやがって!綱渡りさせる気かよ!?


「もういい、今日は寝かせてやんない。部屋に呪いかけて尋常じゃないくらいうるさくしてやる!」

『ねぇ、もうでてもいい?』

「ん、ああ。出ておいで」

『よいしょっと。あれ、ルカ?なんであんたがこっちにいるのよ。集会は??』


なにこれ……?


「え、ちょっと待って。君は?なんで……」

『あ、これルカじゃないや。間違えたわ。私は血の精霊よ。あなたの血に、あなたの母方の一族の血に宿っているの。貴方の母親になにも聞いてないの?』

「ほい、瑠架義姉さんの写真」

「……やっぱり、母さんだ」


生きてたんだ。よかった。やっとみつけた。


『え?なんでこんな話になってるの?そういえばあなたたちの関係性は?』

「大学の友達。会ったのは偶然。瑠架義姉さんは俺の親戚の人。13年前にうちの親戚に拾われて結婚したんだって」


13年前ってことはやっぱり本人だ。……電話かかってきた。


「もしもし秋斗どーしたの」

「今、お前の母さんの話してんだよな?補足しようと思って」

「流石。で、何を知ってるの?」

「お前の父親、深冬みふゆさんが事故に遭った少し後のことだよ。瑠架さん、少し精神病んじゃったらしくてさ、おまえに依存しちゃいそうになって、神城家ウチに冬陽のことよろしくって言い残して失踪したっていう話。たぶん、聞いたことなかったろ?」


確かに初耳だわ。


「秋斗、ありがと。切るね」



「その後に、俺の親戚の南波なんば治人はるとって人に拾われてカウンセリングを受けて……ていう感じやな」


へー、じゃあいつでも会いに行ける……のかな?


『だから夏希に私がみえたのかー。納得』

「妖精さんどういう意味や」

『瑠架は魔女の中でも影響力の強い魔女だからねー』

「魔女?」


なにそれ。


『瑠架の事だからもうそろそろ電話してくるはずよ』


本当にかかってきた。



「本当だ。もしもし、瑠架義姉さん、お久しぶりです。冬陽の件……ですよね?」

「ええ、突然ごめんね。冬陽に変わってもらえる?」

「はい」


わー、なに話せばいいんだろ。


「もしもし。お久しぶり、ですね」

「久しぶり、冬陽。ごめんなさい、こんなに待たせてしまって」

「ほんと、そうですよ。そのお陰で秋斗が凄いことに成ってるんですよ?」


たぶんそういうことだよ、ね。


「だよねぇ、夏希君にも影響与えちゃったみたいで精霊見えるようになっちゃってるし。秋くんはなにがみえるの?」

「未来が見えてるみたいです」

「あー……彼には迷惑かけちゃったわね。さて、精霊さんはもう起きてるよね?」

「はい」

「ごめんなさい、あまり時間がないの。あの人の、深冬さんのお墓に精霊さんを連れていって。そこに全部あるから。ごめんなさい、切るわね」



なんだろ、急展開すぎてよく分かんないんだけど。


「切られた」

『しょうがないわよ。今回の事件で魔女の集会が開かれてるんだから』


だから魔女ってなに。


「さて、魔女の話はここまでにして、例の子ども達の話を聞かせてくれん?俺、魔女の話に入ってきちゃいけない人間のはずやし」

「あー、そういえば、警察の能力者鎮圧作戦を手伝える事になったんだよ。一応、顔は隠すけどね」


今日は濃い1日だったなあ。


「……せめて、順をおって話してくれへん?」


はしょりすぎた。


「子どもの能力者達に鳥と間違えられて、お腹がへってるみたいだったからご飯を作ってあげて、夏希に電話して、一番大人びた子と警察行って、保護区画の整備が出来てない事を聞いて、僕が造ろうって考えて、ついでに能力収集しようと思ってそうなった。以上」

「えーと、取り敢えずは理解できたわ。てか、折角女の人みたいなんやから、別人として参加すれば?」


癪にさわる言い方だね。でも一理ある。


「それもそーだね。でも、名前どーしよ?」

「……なあ、俺が名前つけていい?」

「いーよ」

「五七五とかの詩に音って漢字で詩音しおんなんてどーや?」

『私はいいと思うわよ。夏希が何処からその名前を考えたのかが気になるけど』

「昔、瑠架義姉さん宛の電話に俺が出たんやけど、その時に瑠架……さん、シオンって呼ばれてたんよ。それに少ない文字数で色々な表現ができる《詩》に、またまた色々な表現ができる《音》をあててみたんよ」

『……だからね。夏希が私に触れる理由もわかったわ。で、冬陽の意見は?』

「いいと思う。夏希、ありがと。要さんにちょっと相談してみるよ」



「もしもし、どうしました?」

「明日の件でお話がありまして。今大丈夫ですか?」

「ええ。大丈夫です」

「明日なんですけど、隠れるのは止めて、詩音と名乗って参加したいんですよ」

「そのぐらいなら大丈夫です。冬陽くんのことを知っているのは僕らのグループだけなので、話を通しておきますね。あとは大丈夫ですか?」

「はい。では、お願いします」



「さて、2つめのツッコミなんやけど、保護区画の話を聞かせてくれへん?」

「新しい世界を創るんだよ。僕と彼らのために」


ぽろっと出た彼らって誰だろう。子どもたちのことじゃない気がする。


「構想は出来てるん?」

「うん、眠ってた時に夢を見ていたんだ。1回目の時からずっと。同じ世界だけど4つの階層のようなものに別れててさ」

「……因みにさ、その夢の中に俺らは存在してたん?」

「いや、いなかった。でもさ、それが正解だと思うんだ」

「なら、俺らはそこに入れへんの?」

「うん、ごめんね。あくまでも、あっちの世界は紛い物でしかないから。夏希たちとは、本物の世界で過ごしてたいんだ」


真面目に何があっても入れないように細工する。《そういう》細工は得意だから。


「そんな気がしてた。で、どんなとこなん?」

「それはね、四つの階層のうち、二つが管理者達と僕のための階層。残りの二つが招かれた人達に与えられる階層でね、一つが彼ら個人に与えられる世界で、もう一つは彼ら皆で使う、共用の世界って感じ」


管理者……あの子達はどこにいるんだろ。


「オンラインゲームみたいやね」

「うん。やったこと無いからあくまでもイメージだけどそんな感じ。もちろんステータスとか、称号とかも創るよ」


ステータスのシステムってどうすればいいんだろ。


「割と鮮明に覚えてるんやね、その夢。因みに、それぞれに名前とか考えてるん?」

「一応階層ごとに考えてるものはあるよ」

「聞かせてー」


めっちゃ恥ずかしいんだけど。


「笑わないでよ……彼ら一人一人に与えられる世界が纏められてる階層が《創造世界》。彼ら皆で使う階層が《フィールド》。あっちの世界を壊そうとしたやつが送られる階層が《咎人の牢獄》で、最後に世界の管理者とその補佐役が集まるための階層の《偽りの理想郷エデン》って感じ」

「あー、うん。いいんやない?」


顔あっつい。


「よくわかんないけど……でも、中二病っぽく頑張ってみたんたんだよー」

「で、全体の名前は?」


あっちの世界自体のの名前?


「うーん、考えてなかった。……題して、偽の世界、とか?」

「無いな」

「だよね」

「……それを縮めて《第二世界》は?」

「え?」

「ほら《だい》して《にせ》のせ《かい》で第二世界」


割りと好き。そこでは現実世界を第一世界とでも呼ばせようかな。


「……賛成」

「ははは、冬陽のセンスがわからへん」

「あとさ……あっち、第二世界では色々な能力が使えるようにしたいんだ」

「どして?」

「夢の中でさ、色んな人が飛んだり不思議な能力で竜を狩ったり、おいかけっこをしたりしてたんだよ。それが楽しそうでさ」


あの夢楽しかったなあ。テーマパークっぽさもあったし。


「再現したいんだ」

「うん。だけど、まだ足りないんだ」

「なら、今回の警察への協力はちょうどよかったんやね」

「うん。もうそろそろ、長い睡眠も要らなくなるだろうし、ね?」

『よくわかってるわね、たぶん、そろそろのはずよ。誰から薬を貰ったのかは知らないけど、あれのお陰でだいぶ状態は良いから』


なんとなくの感覚でしかわからないけど、状態が悪かったら大変なことになってそうだね。


「そっかー。でも、だんだん眠くなってきたや。……そういえば、夏希の能力はどーなったの?」

「ああ。範囲拡張が上手くいってて、小島ぐらいなら重力支配出来るようになったんやけど、加減が難しいんよ。まあ、そんなかんじ」


強い。


「便利だよねー。その能力。滅ぼすことに特化してる気がするけど」

「まーな。眠いなら俺のベッドで寝てていいで。この部屋も安全なはずやし。俺はもうそろそろ晩飯作ってくるわ。おやすみ、冬陽」


夏希は部屋を出ていった。ベッドにのそのそと乗っかる。


「おー」


布団柔らかい……これはやばい。


『まだ眠らない方がいいわよ』

「そーなの? そういえば、君の名前は?」

『無いわ。利便性から名前をつける魔女は多いけど、あなたはどうするの?』

「そっかー。……じゃあ、君は今からスピネルね。よろしく。僕のサポーターさん」


ねむい。寝たい。


『ふーん。スピネル、か。よろしくね。シオン』

「うん。……ねー、これからどうすればいいの?お墓に行った方がいいの?」

『それに関してはいつでもいいのよ。ただ、1ヶ月以内に行った方がいいと思うわ』

「なんで?」


……なんで夕方なのにこんな眠いんだろ。


『魔女の集会が終わるのが1ヶ月後だから、次の儀式をするのもそれぐらいになるはずなのよ。あ、詳しくは聞かないでね。全てはお墓参りに行ってからだから。というより、儀式をすれば全てわかるわ』

「そっか。なら今から行こうかな?てか、そんな長い時間なに話してるの?」

『もう夕方よ。止めた方がいいわ。あなたの同居人が心配するんじゃない?それで、魔女の集会はこっちの時間に直すと3ヶ月。だけど、開催地あっちの時間に直すと三日間なのよ』


あっちってどっち。


『あと、人前では声に出さない方がいいわよ。意思疎通は念じてくれれば出来るから。それと、私は基本あなたの作った空間に居るから、何かあったら呼んでちょうだい』

「はーい」


さて、夏希にメールを残して秋斗の部屋に行こうかな。……僕こっちの部屋はノック音聞こえるようにしてたんだね。


「迎えに来たぞ」

「随分とはやいね。盗聴とかしてないよね?」


うわぁ。未来視、本当に進化してるじゃん。やば。


「出来るわけねーじゃん。流石にそこまではしねーよ。さ、俺の部屋行こっか」

「って、いきなり手首掴んで引っ張んないでよ。ほら、逃げないからっ!」


ほんと分身したい。というより逃げたい。

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