7話 大きな小島(後編)
前回と時系列が変わってます。
ちゃんと続きもあるのでご安心を。
4月5日:日本国内でのニュース番組
『速報です。今からおよそ1時間前、日本魔法協会円卓会議派、通称円卓派が、南鳥島の占領に呼応する形で武装蜂起しました。これに対し政府は、断固として許されない事であるとして、軍及びPMCの派遣を緊急決定しました。』
同日:日本魔法協会京阪神地区支部
「円卓派が武装蜂起!?馬鹿な、死ぬつもりか!?」
「連中、反対勢力は殲滅するつもりだぞ!」
「電撃戦!?インフラ攻撃!?サイバー攻撃!?どうかしている!?」
「南鳥島の米軍はそのために…」
あまりの突然の事態に、身内であるはずの京阪神地区支部(伝承派)は大混乱に陥っていた。
各地で円卓派の魔導師たちが団結し、蜂起している。
彼らの目的は間違いなく、東側からの脱却・西側への復帰だ。
だが、そんなことをしてソ連が黙っているはずがない。
政府との関係が疎遠である伝承派からしても、これは新たな世界大戦のきっかけになりうると容易に推測できた。
「日本が…世界が終わるぞ…!?」
誰かが静かに、しかし怒気を込めて呟いた。
同日:IMEA、統一魔法協会緊急電話会合
「どういうことです!?明らかに協定違反ではないですか、日本魔法協会の行為は!」
IMEA事務局長が声を荒げて魔法協会会長を問い詰める。
『えぇ、十分存じ上げています。ですが、我々は今回のような行動を指示していませんでしたし、そもそも、米軍が南鳥島占領に向けて動いてるなどとは知りませんでした!』
「知らなかったで済ませられるとでも!?よいですか、これは重大な、条約違反です!つまり、あなたがたには制裁を与えることができる。」
会長が焦ったように答える。
『待ってください!どうかそれだけは…!』
「あなたがたの躾が足りなかったからであろう!?制裁を逃れたいのなら、今すぐ、それ相応の行動を見せよ!」
事務局長は、落ち着いて、しかし怒りを込めた声で語りかける。
この電話会合の後、魔法協会本部の魔導師による日本魔法協会への制裁部隊の派遣が開始された。
前日、4月4日:南鳥島領海内
砲撃を掻い潜り、なんとか領海内まで接近することができた第一小隊。
しかし、彼らが見てしまった物は、彼らを絶望させるには十分だった。
米軍海兵隊魔導師部隊。
世界最強レベルの魔導師部隊の一つだった。
「なっ!?」
「まずいですよ!あれ、完全に海兵魔導隊ですよ!」
今の戦力では到底敵わない。そう判断した涼は、迷うことなく撤退を指示した。
「撤退するぞ、今の数じゃ確実に死ぬ!」
「りょ、了解しました!」
「敵魔導師、上がってきました!」
部隊の旗艦である強襲揚陸艦から魔導師部隊が上がってきた。
おそらく大隊規模だろう。
「いそげ、逃げるぞ!」
百戦錬磨の精鋭部隊とは思えない勢いで、彼らは逃げ出した。
この時の写真が、米軍の介入を判明させ、小さな南鳥島の重要性をぐんと引き上げた。
こんな内戦が起こるわけ無いだろ?
米軍が介入するわけ無いだろ?
えぇ、わかります。ですがこれは架空の世界です。生暖かい目でご覧ください。