6話 暗雲立ち込める裏側
今更ですが、この作品では、俺TUEEEEやハーレム、チートはありませんので悪しからず。
2040年4月1日:AZRA本社
おかしい。
何かがおかしい。
涼はそう思った。
そのおかしさの原因は、すぐにわかった。
「小隊長、こっちの書類終わりました。」
「こっちもっす、隊長。」
「...あぁ、ありがとう。」
「どうしたんです、隊長。また考え事ですか?」
部下が尋ねてくる。
無理もない。
今の俺は、相当深刻な顔をしているのだろう。
「なぁ、俺らがこうやって、新年度を書類仕事から始められたのって、初めてじゃないか...ってね、思ったわけなんよ。」
「あー...そう言うこと...」
「でも、先日のデモ隊事件の後から、まるで依頼が来なくなりましたよね。」
原因は彼女が言った通り、デモ隊事件での失態だろう。
相手がごく少数の魔導師部隊だったこともあり、さらにまずかったようだ。
「だけどよ、ここまで来なくなる物何ですかね。」
「裏があるのは明白だろうな。」
と言い、デスクワークに戻る。
言われた命令はキチンと遂行する。それが我々のポリシー。
しかし、デスクワークとなれば話は別だ。
この部隊は戦闘特化型なのか、書類仕事が出来る人員は非常に少ない。
できれば、他部隊から人を貸して貰いたいレベルにはマズイ。
まだ、依頼を受けていたほうが楽だったかもなぁ、と、部隊全員が心のなかで盛大なため息をつきながら呟く。
同日:日本魔法協会本部・大会議室にて
「山川理事長、お聞きしたいことがある。大学付属高校の件だが...」
「あぁ、円卓族の皆様ですね。ご安心を。既に皆様の座席は用意されています。」
タバコの紫煙が蔓延する、昔ながらの会議室。
この場所こそが、日本魔法協会の中枢、円卓会議が行われる場所だ。
円卓、というのは、日本の魔法技術の発展に貢献したとされる十二の家を、円卓の騎士の伝説に準えたシステムだ。
「秋月の頭も抑えきれている。あなた方には感謝してもしきれません。」
と、理事長と呼ばれた男が無表情で言う。
「いえいえ、そちらの支援が有ってこそ。むしろ、我々の方から感謝させていただきたい。」
円卓の長が無表情で答えた。
策略は、味方同士で始まっている。
そろそろ大きく動き出す...かな?