09話 嫉妬と竜牙
ジャミルやアルト達が兵舎の外へと出るとドクマはその手に持つ短剣をフィアの喉元へと突き付けていた。そんなドクマの傍らにはジャミルをいつも補佐していたタクトの姿があった。
「ドクマ! フィアを離せ! お前たちはもうお終いなんだ! これ以上の悪行を重ねるな!」
「ジャミル! 助けてジャミル!」
ジェミルの名が呼ばれるたびにタクトの顔がゆがむ。
「ジャミル! ジャミルと奴の名ばかり! 少しは僕の気持ちも考えろ!」
「タクト! 何を言っているんだ! 何故そんなウージンの手先と一緒に居る!」
癇癪を起こすタクトはジャミルを睨み付け
「僕の方が先にフィアと出会ったんだ! 好きになったんだ! それを! それを! 後から来たくせに! 後から来たくせに!」
「醜い奴だなお前」
そんなタクトに兵舎の屋根の上から声が聞こえる。その場にいた者たちの視線が屋根へと集まるとそこには派手な赤いローブを纏ったとんがり帽子をかぶった魔族の女性が立っていた。
「部外者が口を出すんじゃね~!」
「チッチッチ、そうもいかないね。そこのフィアちゃんには一宿一飯の恩が有るんだ!」
「フッだがこの状況じゃ何もできね~だろうが!」
ドクマはフィアから短剣を少しは無し目出つように見せる。するとその短剣へ向け下から上へと古刀が振るわれる。鋭い身のこなしから放たれた下段からの【疾風切り】
短剣をドクマの腕ごと切り裂き宙を舞う。クレイはフィアを引き寄せ後方のジャミルへと背中を押しその場から離した。
「ぐわぁぁぁぁ!! 腕が! 俺の腕がぁぁぁ!!」
「煩い奴だな。こいつでもくらっとけ」
筋肉質の大男から繰り出されたクレイモアの柄の一撃を脳天に受けたドクマは
「ぷぎゃ」
と叫び地に臥した。
「若ぁ~!! それにガラハ! どうしてここに?」
「ミリエル! こいつだよこいつ!」
屋根の上に居た女性ミリエルに向けガラハが声を張り上げ指さす。その先には竜に刀の紋章・・・傭兵団【竜牙】の団旗が掲げられ、懐かしい顔ぶれがそろっていた。
ミリエルは目を擦り再度確認してクレイの手元の古刀を見て
「じゃあ! じゃあ! 最強傭兵団【竜牙】復活って事か! 若! じゃない団長!」
「ああ、そうだ。今はクレアシオーネって国家に使えているがな」
ミリエルの問いにクレイが大声で答える。【クレアシオーネ】創世神の名であり、クレスが建国した新国家の名でもある。
ミリエルはにこやかに手に持つ杖へと魔力を流すと屋根の上から飛び降りた。アルトは顔をしかめるが一行に落ちてくる気配が無い。目を開けるとそこにはフワフワと漂いながら大地へと降り立つミリエルの姿があった。




