05話 ゲイル
私兵が逃げ出した後、騒ぎを聞きつけた衛兵が駆けつけてくる。
「これは、お前らがやったのか?」
アルトは不快に思いながらも首を振り
「ここの精鋭って名乗ってたよ。本当にここは公正で知られる第二軍なのか?」
隊長風の男、狼の獣人族であるゲイルがアルトの言葉で顔をしかめ頭をかく。
「そいつは15年も前の話だ。今じゃ代替わりした代官が幅を利かせ、その子がいの私兵たちのやりたい放題だ」
「おいおい、監査官がいるだろう?」
レフトが話に加わると更にゲイルは顔を歪め
「その監査官もグルなんだよ」
物陰に隠れていたジャミルが姿を現し口を挟む。
「だから、俺たちはその悪政を正そうと・・・」
「ジャミル! よそ者に話すことじゃないよ」
気弱なタクトは周囲を警戒しながらジャミルの腕を引っ張る。
「だけど!」
「良いから、あんたらも通り抜けるならさっさとこんなとこ通り抜けて野宿した方が良いよ」
アルト達に忠告をしてジェミルを引っ張って駆けだした。
「そう言う訳には行かね~んだがな。ゲイル男爵にナハト侯爵様からの指令書を渡さなきゃいけないんだが・・・」
アルトの言葉に片付けを部下に指示していたゲイルが振り返る。
「ん? ナハト閣下から自分に手紙だと? 君はいったい・・・」
すると先ほどと同じようにライトが一歩前へと出て
「私はこちらにおわすドーパン辺境伯様の嫡子アルト様に使える者です。この度は北のゴブリン大反乱に際し、ナハト侯爵様の使者としてこの地に赴いた次第であります」
「これはこれはご丁寧に・・・自分が君たちが探しているこの砦の防衛長官を務めるゲイルだ」
アルトとライトは顔を見合わせ頷き合い、アルトは懐からナハトからの手紙を取り出しライトへと渡す。ライトはそれをゲイルに向け渡すと、ゲイルは徐に封を切り中身に目を通した。
「何々? 第二軍を持って北のドーパンへ援軍に赴けと? しかし自分がこの地を離れるわけには・・・!?」
読みながらゲイルはある一文に釘付けとなる。【この手紙を受けたその日より軍総司令としてゲイル男爵を子爵とし、第二軍の全権をゆだねる物とする】事実上本日からゲイルがこの獣人の砦の代官となったことになる。
「これならいけるか?」
「どうなさいましたゲイル様?」
ゲイルはその男にも手紙を読ませる。その男も瞳を見開き涙を流す。
「おお、ゲイル様これで先代様に報いることが出来ます」
その男はゲイルへと手紙を返すとゲイルは手紙を受け取り頷く。
「これより忙しくなる。私兵以外の全軍にこれを伝えろ! さらに義勇軍にも伝えるんだ! 今日で終わらせるぞ!」
「「ハッ!」」
部下2名が駆け出し、ゲイルはアルトへと振り返る。




