22話 愚者の妄想
ネモがクレスと話し出したことでクフトは顔を赤くして怒鳴りだす。
「我を無視するな! おっおお! 我妃たちよ! そち達からも言ってくれぬか! 我は関係ないと言ってくれ!」
クフトは囲みから無理やり抜け出しティアへと近づく。その前にクレイが割り込む
「それ以上ティアに近づくな。」
クレイの行動にティアの顔に笑みがこぼれる。
「何だ貴様は! ティアとナディアは我の妃なるぞ! 下賤な輩めそこを退かぬか!」
クレスはナディアを、クレイは首だけを動かしティナを見ると、2人とも勢いよく首を横に振るう。
「クー!「クレイ!」 信じて! 私はそんな奴の妃じゃないから!」
その言葉にクレスはにこやかな表情でクフトの前に歩み寄ると、表情が一変する。
「妄想も大概にしろよ。エルフの里を襲ったものが君のいる宿へ入って行ったことは分かっているんだ。」
睨み付けるようにクレスは低い声でクフトに言い放つ
「そっそれは・・・」
言いよどむクフトをネモを始めエルフ族は見逃さなかった。ざわめく人ごみの中、1人の老エルフが顔を出す。白髪頭の髪に一部だけ緑色をした身なりの良いその男は
「それは真か? 息子が率先してエルフ狩りをしているとなるとルイン公爵は息子のしりぬぐいをしておるのか?・・・いや【黒水】なる組織との黒い噂が絶えぬことからもルイン公爵自身が積極的に絡んでおるのか。」
「ウィルナー殿・・・」
ネモはその老エルフの名を呼び、クフトは顔が引きつり、側近であったドクトールは逃げ出そうと周囲を見渡す。
「往生際が悪いですぞドクトール! 貴様今まで散々我らの村を襲い娘たちを攫っておったのか!」
ウィルナーの杖から無演唱で【ウインドアロー】が飛び出し、逃げようとする一歩を踏み出したドクトールの足を貫く
「グギャァァァ!! 足が! 足が!」
転げまわるドクトールを見下ろしウィルナーは
「ほれ、何をしておる。こやつ等に縄をかけぬか。お前たちも手伝え。」
その言葉にクルス軍の騎士たちの後ろに居た揃いの装束を纏ったエルフたちが出て来て、クルス軍の騎士と共にクフトを含め捕らえて行く。
「ウィルナー殿、何時こちらに?」
「先ほど就いたばかりじゃ。城壁の外に【陸上艇】があるわ、領主の館が襲われているわ、ここはいつ来ても忙しそうじゃのう。」
「・・・どんな御用ですか?」
愉快そうに笑うウィルナーにネモが来た理由を訊ねると
「ん? 理由か・・・無くなってしもうたわ。・・・実はなルイン公爵に頼まれティナ殿とアレとの婚約の仲買人としてきたのだが・・・まさか我らの里を襲っていた仇敵たちであったとは・・・儂も歳は取りたくないものよフォフォフォフォ。」
声に出し笑うその瞳は鋭く周囲の者たちに威圧を与えてるようであった。




