08話 お願いと要求と
「まずはこちらがなぜこの場所にいるのか、これからどういったことをしようとしているのかを分かってもらった上で彼女たちの話を聞いた方がよさそうだからね。」
「クーどういうこと?」
「まず、彼女のお願いは、お願いであっても貴族であるディアや騎士であるライラには聞き入れなければならない義務がある。」
「それは・・・」
クレスの言葉にティアは言いよどむ。
「つまりどういうことだクー?」
「つまり、彼女の願い次第では【ドーパン】を見捨てなければならないってことになるかな?」
「なっ!」
ナディアは立ち上がり驚く
「見捨てなければならないとはどういうことですか?」
恐る恐るティアが言葉にする。
「良いですか? 僕たちの目的は【クルス】へ食料の買い出しです。」
「食料の買い出し? 確か辺境では不作だったと聞いていますが、今月は分配月ですから大丈夫なのではないですか?」
「ね? ディア、彼女たちは分かってないでしょ?」
ナディアを初めライラやムントも頷く
「えっ? えっ?」
「どういうことだ?」
狼狽えるティアに変わりクレイが質問する。
「はい。では説明いたします。分配月とおっしゃいましたが、分配されてません。」
「それはなぜ?」
その言葉に我に返ったティアが聞いてくる。
「【ゴブリン】の大群により【ドーパン】が包囲されています。ですから分配分は届きません。残りの食糧を考えるともって1旬ないくらいですか。」
見る見るとティアの表情が曇りだし、クレイの表情が険しいものへと変わる。
「それで、貴女方は何を要求する気だったのですか?」
「そっそれは・・・」
クレスがお願いではなく要求と言ったのにはわけがあった。彼女の身分からお願いをすればナディアとライラにとっては要求へと変わるのだ。
沈黙が流れる中、美味しそうな匂いを漂わせトレイを持ったアムが駆けあがって来る
「おっまたせ~!!! アムちゃん特性のランチだよ、冷めないうちにど・・・う・・・ぞ?」
その場の雰囲気を読み取ったのかアムの言葉は最後に疑問形へと変わる。
「ん? どしたの猫?」
「猫言うな、彼女たちが【ドーパン】を見捨てろと言うつもりだったんだよ。」
「なっ! 貴女はそれでも人ですか! 皆に飢えて死ねと! それとも【ゴブリン】に嬲り殺されろと?」
「落ち着いてアム。」
声を荒げ怒り出すアムに、クレスは優しく声を掛けながらトレイを受け取る。
「ですが! ですが!」
「まだ、彼女たちはそんな要求はしてないから。」
今にも泣きだしそうなアムは一瞬にして目を吊り上げ
「このバカ猫はっ! 言っていいことと悪いことの区別もつかないのですか!」
ぽかぽかとムントを叩く
「・・・悪い。」
「分かればいいのですよ。分かれば・・・」




