23話 黒狼
戦いはあっという間であった。ガードナ騎士団6小隊からなる軍勢に【ゴブリン小隊】は成す術もなく打ち取られた。その多くは【黒狼】の異名を持つ大将軍ナハト侯爵の手によるものであった。
「ナハト閣下お久しぶりです。」
アルトへと近づくナハトにアルトが敬礼しながら挨拶をした。
「アドルト殿のご子息か。確かアルトとか言ったか?」
「はい。そのアルトにございます。」
「何故このような場所で・・・いや俺に援軍を乞いに来たのだな?」
「はい。その通りでございます。」
「ふむ、屋敷で詳しい話を聞こうではないか。」
「そっそこを何とか、出来れば早急に援軍を!」
焦った表情のアルトを見てナハトは
「ん? 何かわけがあるのだな?」
「はい。姉が・・・姉ナディアが旅人を助け行方不明に・・・」
「なるほど。捜索隊を出す余裕が無いのだな・・・」
ナハトは腕を組み顎に手を添えしばらく考え込むと、突然振り向き指示を出す。
「アゼル! 貴様は小隊を率い先発として【ドーパン】へ向かえ! 他に2小隊連れて行くが良い!」
すると鎧姿の体格の良い男がフルフェイスを上に上げ顔を出し
「ハッ! このアゼル直ちに向かいます。」
ナハトに敬礼をして了承したアゼルは踵を返し騎士たちの下へと行き
「アゼル小隊! それに第五、第六小隊我に続け! 先遣隊としてこのまま【ドーパン】へ向かう!」
「「「ハッ!」」」
アゼルは疲労の少ない小隊を選び隊列を組み直すと【ドーパン】へ向け走り出す。
「【ガードナ】へ帰還するぞ!」
「「「ハッ!」」」
【ガードナ】へ向けて駆けだす騎士団を背にナハトは
「アルト、我らと共に来い。館で詳しい話を聞こう。」
ナハトの言葉に迷いを見せるアルトへ更にナハトが
「事後処理として書類をかかねばならぬし、状況が分からねばどれほど援軍を送ればよいかもわからん。来てくれるな?」
「・・・はい。分かりました。」
・・・・・・・・・・・・・・・
ナハトと【ガードナ】へ入ったアルト達は書類などが並ぶ執務室でナハトに説明していた。
「・・・ふむ、先ほどの【ゴブリン・コマンダー】率いる小隊とは違う中隊規模の部隊に襲われたか・・・(娘のナディアは最早生きてはいまい。)・・・そこから考えられる規模の【ゴブリン】となると、最低でも【ゴブリン・ジェネラル】は居るだろう。これほど広範囲に展開しているとなると【ゴブリン・キング】がいても可笑しくはないだろう・・・困ったな。」
「どうなされたのですか?」
不安に駆られたアルトが思わず聞き返した。




