17話 貴族
驚いているナディアをよそにホークは言葉を投げかける。
「主は敵か? それとも味方か?」
その言葉に我に返ったナディアは慌てて言葉を紡ぐ
「わっ分からないわ。」
「・・・ふむ。理由は?」
「理由は・・・私が貴方たちのことを何も知らない・・・これに尽きるわ。」
「ふむ。それもそうだな。」
ホークはそう言ってベッドから飛び立ち椅子の背もたれへと止まる。
すると扉が開きクレスがスープを入れた器を持って部屋へと入ってくる。
「おっ! 起きたみたいだね。何処か身体に違和感はある?・・・つ!」
クレスはナディアの身体を心配して声を掛けるがその途中で顔のみを背ける。ホークは首を傾げ心配そうに見つめ、クレスの頬が赤みを帯びているのを見て顔をナディアへと向けた。その視線の先には胸を露わにしているナディアの姿があった。
「娘よ、胸を隠さぬか。」
ナディアはホークの言葉に顔を下に向け、頬を赤く染め慌てて布団をかぶる。
クレスは椅子へと腰を降ろし、スープをベッドの棚の上へ置く。するとナディアは恐る恐る顔を出し涙目で
「・・・見た?」
その言葉に落ち着きを取り戻していたクレスの顔が赤く染まる。
「見たんだ・・・責任・・・」
「えっ? 何?」
ナディアの声が小さかったのかクレスは聞き返した。
「見たんだったら責任を取りなさいと言ったんです。」
ナディアは真っ赤な顔で左手で胸を隠し、右手でクレスを指さし叫んだ。
「えっ? えっ? 責任? いったい何のこと? それは治療するためとは言え見たけどさ~」
クレスは訳も分からずに慌てて言葉を紡ぎ最後は聞こえない程化細い声で言い訳を口にした。
「やっぱり見たんじゃない・・・エッチ・・・」
「ホーク説明して! どういうこと?」
クレスは助けを求めるようにホークを見ると、ホークは背もたれから飛び立ちクレスの肩へと止まる。
「クレス様、その娘が貴族の娘であるということはお分かりですか?」
「うん。【解析】で見たから・・・」
「であれば、責任の意味がお分かりになりましょう?」
「・・・結婚・・・」
「そうなります。」
そう、この天魔国の貴族はその身を全て晒すのは身内のみと表向きはなっているのである。
するとクレスはナディアへと顔を戻し
「君はそれで良いの? 言っては何だけど僕は君を助けここへ連れ込んだだけだよ?」
(構わないわよ。それに連れ込んだ・・・やっ今の無し! 今の無し!)
急に頬を染めたナディアが右手で頭の上をブンブンと振り出した。
するとナディアのお腹からグゥ~と可愛らしい音が聞こえてきた。