09話 シーエルフ出陣
一方シーマ領を脱出したシーエルフ達はそのほとんどがクレアシオーネへとたどり着き、首都の東に位置する港町ノルフェンと南東部に位置する国境の港町ハーフェンにて生活を始めていた。
そんな中ノルフェンの領主となったウィルナーがクレスの下へと訪れていた。
「本日は陛下にお願いが有りまかり越しました」
深く頭を下げるウィルナーの背後には36名のシーエルフが跪き頭を垂れていた。
「お願いと言うのはテンマ国で起きている内乱のことかな? 後ろに控えている者たちが参加をしたいってところですかね?」
ウィルナーは顔を上げ
「その通りでございます。つきましては・・・」
「許可します。しかし死ぬことは許しません。手足を失おうと必ずこの国へ戻ってきてください。良いですね」
クレスの言葉に控えていたシーエルフのリーダー核の男が顔を上げ
「我々は奴らにより妻や子・・・家族を奪われ天涯孤独の身、たとえこの命尽きようと王弟並びにパルカスめを生かしておくことなど・・・」
「諄い、御屋形様は必ず戻れとおっしゃっているのだ。はいと返事をすれば良い」
一段下に控えたブレインが声を上げる。
「我々だって可能なら・・・嫌なんでもない・・・」
クレスは目でブレインに指示を出す。ブレインは頷きパチンと指を鳴らすと台車に乗せられたミスリル制の武具が運ばれてくる。
「これらを貴公らに貸し与える。更にライドバードを18頭、そして戦闘艇を3隻も付けよう。これらの戦力が有れば貴公らの目的も果たせよう」
復讐のために命を投げ出そうとする者たちに国の最高機密といってよい戦闘艇や大変貴重で高価なミスリル制の武具を貸し与えると言われ再びウィルナー達は頭を下げる。
「それだけでなく、現地に向けてウィルスの部隊も向かわせています。現地では彼の指揮下に入ってください。後は、偵察や情報収集が必要でしょうからホークの部隊も情報収集に出してあります。必ず目的を遂げ、この国へと戻ってきてくださいね?」
「「「はいっ! 必ずや陛下のご期待に添えて見せます!!!」」」
ウィルナー達は再び深く頭を下げた。中には止めどと無く涙を流す者も居た。
彼らに与えられたのはミスリルスピア、ミスリルグローブ、ミスリルブーツであり、アーマーが無いのはミスリルが貴重でありそれほど用意が出来ず、そうであるならばと全員にいきわたるように工夫がなされた結果3点の武具となっている。またクレアシオーネ南部の森の中にライドバードの群れが多きあり、それらを捉え調教したことによりある程度の数をそろえられたのであった。