08話 獣人の砦の戦い
軍議の開かれるテントの中央に位置する場所でパスカルは椅子に座って片足を揺らしていた。
怒りのあまり苛立っていることはそこに出席している誰から見ても明らかであり、誰も口を開くことが出来ずに沈黙に包まれていた。
「・・・被害はどの程度だと聞いている」
沈黙を破るようにパルカスの低い声がテント内に響く。その声に慌ててエルフの男が立ち上がり
「被害は甚大、兵糧はその大半を焼失、もってあと2日と言ったところでしょうか。ゴーレムに至っても戦いに耐えうるものは18体、1個中隊であります。また昨夜武具が多数盗まれたことにより、稼働できるゴーレムには装備が有りません!」
「なぜこれほどまでの被害を受けたのか、説明をせんか」
男の言葉にパルカスが大きな声を上げる。逡巡する男にパルカスは再度大声で促す。
「わっ分かりました。大半のゴーレムはパルカス様に機動権が有り、起動できずにただ破壊されたためにここまでの被害が出たことは明らかであり、また敵の侵入に気が付かなかった部隊にも問題が多々あるかと存じます」
その言葉にパルカスの額に青筋が走る。また夜警をしていた部隊の隊長である大いに太ったエルフの男が立ち上がり
「儂の失態だと言われるのか! そもそも機動権を集中さ・・・せ・・・た・・・」
「させた、何だね? 我の落ち度だと言うつもりか?」
太ったエルフにパルカスが青筋を立てた顔で睨み付ける。
「いっいえ、そのようなことは・・・」
そんな中伝令の兵が慌てて駆け込み
「てっ奇襲でございます!」
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王弟軍の軍議が行われている間に首都テンマより更なるゴーレムが到着した国王軍は手早く食事を済ませ王弟軍に向け出撃したのである。
昨夜の夜襲の影響で披露しており、更には食事時と言う事も有り、王弟軍は迎撃態勢もままならぬままその攻撃を受けていた。
一方的ともいえるこの攻撃に軍議を開いていたテントから我先にと逃げ出す指揮官たちを見た兵士たちも逃げ出す。
「逃げる出ない! 戦え! もうすぐ援軍が到着するのだ! 迎撃! 迎撃!」
声を荒げるパルカスの言葉は恐怖にかられた者たちには届かない。仕方なくパルカスは特殊ゴーレムを盾に後退を始める。だが、たった6機のゴーレムで54機を超えるゴーレムの相手をすることなどできるはずもなく、次第にその数を減らして行く。
そして特殊ゴーレムたちを突破したゴーレムたちがパルカスが乗る大型の馬車へと迫る。