不思議の国の女王
"不思議の国"。彼女はそう称した。
それこそ奇妙な出来事だったので、不思議と呼ぶよりも、もっと相応しい……そう、頭までおかしくなる程に不快な国なのだと改めて認識し直したものだ。しかしながら聞き返す事が馬鹿馬鹿しい、言葉すら本来なら交わしたくもないというのに。ああそうだ、いっそのこと己の喉を潰してしまえば煩わしい会話をせずとも済むのだろうか、なんという名案を思い浮かんでしまったのだろう。早速今晩実行しよう、等と脳裏にて思考を巡らせながら、その場に跪いて普段通りの言葉を紡いでいく。
「お目覚めですか、女王様」
普段通り下劣で汚い挨拶が返ってくるのだろうな……と思いきや。絶句した様に口をあんぐり開いたまま、彼女は俺をその瞳に捉えている。この俺を真っ直ぐ見つめているのだ。────さて、一体どうしたものだろう。彼女は今、彼女ではなくなってしまったらしい。
──────
目が覚めると、ハートの女王になってました。
それこそ奇妙な出来事だったので、不思議と呼ぶよりも、もっと相応しい……そう、頭までおかしくなる程に不快な国なのだと改めて認識し直したものだ。しかしながら聞き返す事が馬鹿馬鹿しい、言葉すら本来なら交わしたくもないというのに。ああそうだ、いっそのこと己の喉を潰してしまえば煩わしい会話をせずとも済むのだろうか、なんという名案を思い浮かんでしまったのだろう。早速今晩実行しよう、等と脳裏にて思考を巡らせながら、その場に跪いて普段通りの言葉を紡いでいく。
「お目覚めですか、女王様」
普段通り下劣で汚い挨拶が返ってくるのだろうな……と思いきや。絶句した様に口をあんぐり開いたまま、彼女は俺をその瞳に捉えている。この俺を真っ直ぐ見つめているのだ。────さて、一体どうしたものだろう。彼女は今、彼女ではなくなってしまったらしい。
──────
目が覚めると、ハートの女王になってました。