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ぼくの詩集~ザ・ベリー・ベスト・オブ・ぼく~

風船おじさん

作者: 桜井あんじ

街角に立ち

風船おじさん

今日も道行く人々のリクエストに答え

風船ふくらます


ふくらました 風船を

あちこちひねったり ひっぱったり

すると ああらふしぎ

かわいいこいぬちゃんのできあがり

ぱちぱちぱち みな はくしゅかっさい


なんでもつくるよ 風船おじさん

みなさまの お望みどおり

ぷうぷう息吐き

風船おおきく ふくらまし

時にはわざと おもしろい顔 してみたり

みなさまの お望みのまま


みんなだいすき 風船おじさん


だけど風船おじさん

こころのなかは

風船とおんなじ

からっぽ


風船おじさん

風船とおんなじ

ふわふわ

しっかり地面につかまっていないと

風にとばされてしまうんです


それでも みなさまのリクエストにお応えするため

風船おじさん

今日も街角に立つよ


夕方になると 子どもたち

おじさんのつくった風船手に持って

それぞれのおうちに 帰ってゆきます

子どもたちの背中 みおくりながら

おじさんは からっぽ

そんなとき たまらく さみしいのです


夜ともなれば

街には陽気な人々あふれ

歌い 踊り さわぎ

一仕事終えた風船おじさん

それを ながめています

おじさんは からっぽだから

風船をつくっていないと

なあんにも ないのです

なあんにも


なかみがつまっているって

どんなきもちなんだろう

かんがえますが よくわかりません

なにしろ おじさんは からっぽなんですから


そこへひとりの バイオリン弾き やって来て

街角に立ち

やがて それはそれは すてきな音楽が

ひとびとは はくしゅかっさい おおはしゃぎ


だけど おじさんだけは 

うつくしい音色に なぜかすこし かなしくなりました

すてきな音の出る バイオリン

おじさんそっと近づいて のぞきこむ


バイオリン

おじさんとおんなじ

からっぽ


からっぽだから すてきな音が 出るのです


ただ それだけのおはなし

でも おじさんちょっとだけ 元気になって

からっぽのじぶんが なんだか ほこらしいような気がして

ぷうぷう口笛吹きながら

おうちに かえりましたとさ


からっぽだから 足どりかるく

からっぽだから 口笛響き

あとには その音が ずっと

きこえていた そうです

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