赤い目の君。
涙目の君と目が合った。
普段なら声を掛けずに、遠くから様子を窺って、心配しつつ何も出来ないでいるのに、君がこちらを向いて話そうとしてくれたから、君の方へ近づいた。
後ろからそっと抱きしめて、話掛けると、君は赤い目のまま笑って話をしてくれた。そうして暫くたわいも無い話をしたけれど、明らかに君の気持ちは下がったままで、無理をしている君を見ていられずに、何度もそっと抱きしめた。
そのうち君はふらっと立ち去った。
無言で抱きしめられている君に甘えて、抱きしめていたのは、弱っている君の優しさに漬け込んだ行為だったかな。
鬱陶しかったかな。
君の涙の理由は知っていたけれど、自分にはどうしようも出来なくて、無力さに酷く落ち込んだ。
そして、こんな状況でも君と話せることに喜んでいる自分に吐き気がする。
どうしたら君は元気になりますか。
時間が解決するしか無いのかな。
私に出来ることはありませんか。
君のためと言いながら、私の気持ちは君に近付いて、君の為になりたいだけの私欲に塗れた同情だろう。
君にはもっとずっと大切な人がいて、想い描く人がいて。そんなあの人が一言くれたら、君はパッと元気になるのかな。
その為なら、不審に見られようと、誰だと言われようと、君を励ましてください、慰めてくださいってあの人に頭を下げるよ。
君は私から言われたからあの人が言ったと知ったら、私を嫌いになるかな。
あの人は見ず知らずの私から何か頼まれて、実行してくれるのだろうか。
君の好意はいつも真っ直ぐで、包み隠さずはっきりしていて、それなのにすぐに移り変わるから、君がどこまで本気なのか私には解らない。
君はあの人のことがどこまで大事ですか。
君の中に私の比率は存在しますか。
君が次に別の人を追い掛けるのはいつですか。
次があったとしたら、自分だったらいいのになんて、有り得ないことを期待する自分に虚しくなる。
君に私の気持ちを伝えたら、避けられることは容易に想像出来るから、それより君と今まで通り仲良くしていくことを選んだのは自分の筈なのに。
行き場のない想いは募って、私の周りを包んでいく。
私が君を忘れられるのはいつですか。