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窮地を救う光

 そして、これが物語の冒頭に繋がり、今に至る。

 じりじりと迫ってくる化け物たち、唯一の出口も閉ざされ、逃げ場を失った優星。先ほど拾った鉄パイプもいつの間にか弾かれ、離れたところに転がっていた。もう抵抗する術も無く、ただ後ずさることしかできない。

 一方の沙月は、何度も体勢を崩されながらも、必死に化け物を薙ぎ払っていた。


(…これじゃあ彼の許へ行けない…っこのままじゃ…!)


 優星に、鋭い得物が近づく。沙月は無我夢中で叫んだ。


「銀条ーーっ!!」

「あぁあ…!!」


 もう助からない、二人はそう悟った。しかしその瞬間、屋上一帯を眩い光が包み込んだ。あまりの眩しさに、優星は両腕で視界を覆う。光と共に、耳をつんざくような叫び声があちこちから聞こえ、すぐに静かになった。恐る恐る目を開けると、屋上には、今まで何事もなかったかのように静寂に包まれ、沙月と優星の二人だけしかいなかった。


「…あれ…? さっきの奴らは…?」


 辺りを見渡しても、それらしい面影が見当たらない。つい先ほどまでの戦闘が嘘のようだった。沙月が鎌をしまい、優星の許へ駆け寄り、手を差し伸べる。


「大丈夫…? 立てる?」

「あ、うん、ありが…ぅっ!?」

「銀条!?」


 優星が彼女の手を取ろうとすると、突然胸の辺りをおさえ苦しみだした。何が起きているのかわからず、沙月も彼の体を支える。


(なん、だ…これ…! 熱い!…助け…)


 焼けるような激痛が優星を襲い、あまりの痛みに彼の意識は朦朧としていた。目を閉じる直前に、扉が開けられる音と、誰かの足音を聞き、一瞬だけ視界に亜麻色の髪を捉え、優星は意識を手放した。


 優星が意識を失った丁度同じ時──…学校から少し離れた鉄塔の上に人影があった。マントのような布で顔まで覆い隠しているその人物は、体格からして男性であろう。常人では考えられないことに、落ちたら一溜まりもない高さにある細い足場で、バランスを崩すことなく、ピタリと立っている。


「…ようやく目覚め始めたか…」


 男はぼそりと呟く。先ほどの優星と沙月が襲われ、謎の光が化け物たちを消滅させた一部始終を見ていたようだ。男はマントの奥で見下すように目を細め、さらに呟いた。


「もう一人の"────"…か…」


 丁度その時に強めの風が吹き抜け、彼の声が一部かき消された。すると背後から、おぞましい叫び声と共に、優星たちを襲った化け物の一体が、男に襲いかかってきた。


「見つけた…!! メイセ…」


 しかし、そう言って彼に襲いかかる手前で、男が右手を横に振り払うと同時に化け物は一瞬のうちに切り刻まれ、はるか下へ崩れ落ちていった。

 男は静かに息をついた。そして、振り払った右手を見つめる。右手の掌には、星型の痣のようなものが刻まれていた。


「…お前とは、いつか必ず戦うことになるだろう。"銀条優星"…」


 そう言って男は、月明かりを避けるように、夜の街へ紛れ込んでいった。

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