僕の名前
僕が生まれた理由は、全ての物に名前を与えるためでした。
踏みしめているのは大地。青空と名付けたモノを見上げると、白いモクモクとしたモノがあったから雲と名付け、そして雲と雲の間でまばゆい顔を出したり引っ込めたりしているアレは太陽という名前にしよう。
やがて、名もない物が次から次へと生まれてくるので、僕が一つ一つに名前を付けていきました。
暗闇を夜と名付け、夜空に瞬くモノを星と、夜を照らす太陽によく似たモノを月と名付けました。
明るくなってきたから、それを朝と名付け、もっと太陽が昇ると昼という名にしました。
「 」
ふと、どこからか声が聞こえた気がして振り返ると、そこに僕によく似たカタチの『モノ』が立っていました。
「 」
また同じ言葉を放つソレは、とてもとても綺麗で、ニコリと笑って僕の隣に腰掛けて手を握ってくれたのです。僕はドキドキしました。
何だろう?この今まで感じたことのない気持ちは…。そうだ。この気持ちにも名前を付けよう。
あ…。あい…。愛。
「 」
僕によく似ているソレが、また同じ言葉を放ちます。
僕は訊きました。
「その言葉は何ですか?」
すると相手はほほ笑みながら、
「アナタの名前ですよ」
と言ったのです。
それから、僕によく似たソレに、イブと名付け、この世でたった二人は寂しかったけれど、生まれてくる色々なモノに一緒に名前を付けていきました。
二人で生きていくことを、幸せと名付けました。
そして、随分遅れたけれど、僕とイブを最後に『人』と名付けてみたのです。