雪だるま、晴れ模様
女の子だったとおもう。
帽子ももらった、すこし固いけど。これはバケツというらしい。
マフラーももらった。少し小さいけど暖かい。暖かいのは苦手だけれども。
手足も作ってもらった。そこら辺の小枝らしいけれども。
お目目ももらった。均等の取れない石ころだけれども。
お口ももらった。緑色の葉っぱが個性を出す。
ーかんっせい~。ママー見てー。あらあら、かわいいわね。
ーわたしよりもおっきいー。あらあら、すごいわね。
ーこの子はイケメンなんだよー。かわいくないよー。あらあら、よく見ればカッコイイわね。
ー今日はつかれたー。あらあら、もうこんな時間。
ーおなかすいたねー。あらあら、それじゃ帰りましょう。
手を引いて、歩いていく。ぼくはイケメンなんだ。少しうれしい。だけど、もういっちゃうんだ。
お日様が気持ちいいな。もうすこしあそびたかったな。
ぼくにもお名前をつけてほしかったな。もう、後ろ姿もみえないや。ざんねん。
あ、おじいちゃんとおばあちゃんが公園にきた。こっちに近づいて来る。
ーあら。かわいいわねー。そうだなー。
かわいいじゃない。ぼくはいけめんだよ。でも、話しかけてくれてありがとー。
おじいちゃんとおばあちゃんはも公園を出ていっちゃった。
あ、男の子がいっぱいきた。ボールを持ってる。サッカーをするのかな?
ーパース。パース。おい、どこ蹴ってるんだよ。
ボールが僕のおなかに当たった。右手がとれちゃった。
ーごめんなー。
いいよー。いたくないし。でも、その右手を付けてくれたら嬉しかったな。
ーあーあ負けた。よっしゃー勝ったー。
お日様も元気で、男の子達も汗だくだ。ぼくも汗がでてくる。
あー、男の子達もでていって公園も静かになっちゃった。もう、お日様もかくれちゃったもんね。
それにしても今日はあつかった。ぼくも今日は寝ちゃおう。
うーん。いい気持ち。あれれ、半分くらい小さくなってる。今日はあんまり温かくなってほしくないな。ぜんぶ溶けちゃうや。
ーはっ。はっ。
おっちゃんも朝から性が出るねー。ふぁいと。
ーはっ。はっ。
あー、もうちょっとゆっくりしていけばいいのに。
朝日がでてきて気持ちいいよ。おっちゃんははやいなー。すぐ公園をでていっちゃった。
あ、昨日のおじいちゃんとおばあちゃん。
ーだいぶ溶けちゃったねー。そうだなー。
話しかけてくれてありがとう。でも、まだ元気だよー。
あ、カップルが入ってくる。アッツアッツだねー。とけちゃいそ。
ー私たちも作らない?久しぶりだなー。
ぼくの仲間を作るの?ぼくのお隣りに作ってくれるとうれしいな。
ー体出来たー?おう、出来た。
ー合体~。合体~。
わー。友達が出来た。ありがとー。きみたちも末永くお幸せにねー。
ちょっと恥ずかしいけど話しかけて見ようかな。
今日もいい天気だねー。もうほとんど溶けちゃったよー。
あれ、返事してくれないや。ひとみしりなのかな。
あー、いつのまにか手足が取れちゃった。帽子もきのうより重くかんじる。
昨日の女の子がまたきてくれないかな?
ーりべんじだー。無理だって。
あ、きのうのサッカー少年たちだ。こどもは風の子だねー。
ーシュート、シュート。どこ蹴ってんだよー。
あー、ぼくの顔にボールが当たっちゃった。
ーごめんね。
いいよー。いたくないしねー。でも、これでお目目が見えなくなっちゃった。みんなの顔がみえないや。
この時間は暖かいねな。一番好きだけど、一番苦手。もう、これでぼくは溶けちゃうのかなー。
最後にあの子におわかれしたかった。
ーママー。まだ、残ってる。あらあら、ほんとね。
この声は昨日の女の子かな?また来てくれたんだ。お別れがいえるよー。
ーあれー、お目目も手足もなくなっちゃってる。
ごめんねー。
ーでも、帽子とマフラーは残ってる。
なくさないよー。特にマフラーは君の温もりを感じれたからねー。
ー今日まで、残っててよかったー。
ぼくも声が聞けてよかったよ。最後に話せたしねー。
ーんっとね。
どうしたの?
ーあなたのお名前は、雪丸。決定。
えっ。ぼくのなまえ?
ーだから、雪丸。来年もあそぼーね。
今日はあたたかいや。お目目がなくてよかった。泣いてしまったかもしれないしねー。
来年もよろしくね。
ーあたしの名前は、雪子。来年まで覚えててよー。
忘れないよ。そっちこそ忘れないでよー。