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モコモコランド 泡姉妹

家に帰り、演劇の練習をしていた冴子さんが帰りお風呂へ


「今日もたくさん働いたなぁ…」

とろりとしたボディーソープを手に取り、泡立てネットでくるくる泡立てる。

もこもこ、ふかふか、指先が踊るように動くと——そのとき。


「ふわっ!」

「こんにちは〜!」


夏美の手のひらの中から、小さな声が聞こえてきた。


そこに現れたのは、もこもこの泡でできた、小さな二人の女の子。

「私たち、泡姉妹!姉のモココと、妹のフワワです!」

「今日はあなたの担当なの〜!よろしくねっ!」


夏美は思わず目をぱちくり。だけど、妄想癖のある彼女にとって、不思議はもう慣れっこ。

「そっか、今日の泡は姫だったのね…」


——そう、泡姉妹は泡の王国「モコモコランド」のお姫様たち。


国王・モコモコ三世のたったふたりの娘。

王様は言った。「この世界でいちばん大切なのは“清らかなこころ”。」

泡姉妹は毎日、ふわふわの雲のお城で、やさしさとぬくもりを学びながら育った。

そして、心と体を清める“お役目”を果たす日を待ちわびていたのだった。


「人の体と心を、ほんのちょっとでも軽くするのが、わたしたちの使命なのよ」

「うん、モコモコランドのお姫様は、働き者なのっ」


そんな姫たちは今日、ついに選ばれた。

——そう、夏美のもとに。


「わあっ、やさしい目をしてる!」

「ふわふわの泡も、なんだか嬉しそう!」

「この子の体をキレイにして、もっともっと元気になってもらいましょ!」


モココは夏美の肩をすべり、フワワは背中をくるくるまわる。

泡たちは、ただの泡じゃない。あたたかくて、やさしくて、なぜか心まで軽くなる。

夏美は「ああ、気持ちいいなぁ」とほぅっと息をついた。


やがて、シャワーの水がサァーッと流れてくる。

「あっ……」

「そろそろ、帰る時間だね」

「私たちの使命、果たせたかな?」


泡姉妹は、ちょっぴり寂しそうに微笑んだ。

それでも誇らしげだった。


「バイバイ、夏美ちゃん。今日もがんばったあなた、とってもキレイよ」

「またいつか、あなたのそばに行けますように!」


排水口の奥へときらきらしながら流れていくふたり。

夏美はそっと、手をふるようにタオルを握りしめてつぶやいた。


「ありがとう。私をキレイにしてくれて。…お姫様たち」


その夜。

モコモコランドのお城では、王様がにっこりとふたりの帰りを迎えていた。


「よくやったな、モココ。フワワ。今日も心を照らしてきたのだな」

「うんっ!」「また、行きたいな!」

泡姉妹——モコモコランドのふわふわなお姫様たち。

清らかな心を持って育てられた彼女たちは、今日も誰かの暮らしの中でそっと寄り添い、優しく役目を果たしています。

たったひとときの出会いでも、ぬくもりはきっと、心に残るはず。

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