表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/68

目覚まし姉さん、6時の約束

夏美はベッドに入り、もふもふの掛け布団にくるまった。

「明日は早番…」

そうつぶやきながら、目覚まし時計を手に取り、6時にセット。


カチッ。


「よし…って、あれ?」


部屋の空気が、ふわっと甘い香りに包まれた。

ラベンダー?それとも…シトラス?

すると、目覚まし時計の上に――現れたのは、まばゆい光に包まれた美しい女性。


「こんばんは、夏美ちゃん」


「わっ……だ、誰ですか……?」


「目覚まし姉さんよ。今夜はちょっと、ご挨拶に来てみたの」


「め、目覚まし姉さん…って、こんなにきれいな人だったの?」


目覚まし姉さんは、背中まで届くゆるい巻き髪に、ネイビーのロングドレス。

目元はパッチリ、でもやさしく、口元には大人の余裕をまとった笑み。


「まあ、うれしいわ。だけど私はね、美しさよりも“時間の正確さ”で生きているの」


「なんか…かっこいい…」


「ふふっ。そう言ってもらえると、明日の6時が楽しみね。

あなたがちゃんと目を覚ますか、少しだけドキドキするけど…信じてるから」


「うん…たぶん起きる…いや、起きます!」


「そう、それでこそ私の“契約者”」


「け、契約者…?」


「目覚ましをセットした瞬間から、あなたは私と“朝の約束”を結んだの。

私がベルを鳴らし、あなたが目を覚ます。

それが守られると、世界は今日もちゃんと動いていくのよ」


「すごい話になってきた…」


目覚まし姉さんは、ふっと宙に浮かび、時計の針の上にそっと腰をおろした。


「実はね、私たち“目覚まし族”は、それぞれに守る人が決まっているの。

私は、あなた担当。なぜかって?」


「えっ…な、なんでですか…?」


「それは、あなたが毎日ほんのちょっとだけ“今日も頑張ろう”って思ってくれるから。

そういう人に、私たちは力を貸したくなるのよ」


「ううっ…なんか泣きそう…」


「ふふ。泣いたら明日、目が腫れて大変よ。

さあ、もう眠って。私はここで、6時ぴったりに、世界で一番きれいな音を鳴らすから」


そう言って、目覚まし姉さんは時計の中へと静かに戻っていった。


静寂に包まれた部屋に、コチコチと優しく針の音が響く。


夏美は目を閉じながら、うっすらと笑った。

「明日、ちゃんと起きる…起きるんだから…」


その夜、夏美は夢を見た。

大きな時計塔の上で、キラキラしたベルを手に、誇らしげに立つ目覚まし姉さんが、

「時間ですよ、夏美ちゃん」と優しくささやいていた。

朝がちょっぴり苦手な夏美にとって、目覚まし時計はただの道具じゃないのかもしれません。

時間ぴったりを守ろうとする、美しくてちょっと頼もしい“姉さん”の存在が、今日も一日を始める力になってくれます。

起きるのが少し楽しみになる、そんな朝があるって、いいですよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ