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①OP~テイルの反撃開始まで(応募作とほぼ同じ内容)

【主な変更点】


☆作中であつかう経過年数を1000年から500年に変更

 適当に設定しすぎたので、なんとなく管理できそうな年数に変えた。


☆お金の存在を描写

 レザーの精肉店で、地域通貨「小さな金の棒」をチラ見せ。


☆「◯輸送機の下の地上」→「◯海沿いの浜辺」に変更

 村人が連行され、檻に収容されていくシーンの柱を「◯輸送機の下の地上」から「◯海沿いの浜辺」に変更。具体性が増し、場面をより想像しやすくなった。またパート②で、敵輸送機が撤退していく際に、水平線から朝日が昇るシーンへとスムーズにつながるようになった。


☆捕獲用武器「ボーラ」を「ボーラ弾」に変更

 ボーラ弾は円盤状の形をした、フリスビーのような弾。回転しながら飛んでいく。円盤の側面から三本のワイヤーが飛び出し、対象にからみついて拘束する。


☆登場人物を二名追加

 ナナイ博士とメカ助を追加。物語の最後にチョロっと登場。


☆その他、説明文やセリフの細かい修正を行った

【登場人物】


主要キャラ

テイル・クラフト(14) 獣人の少年(ネコヒト族)

ミミー・ワイス(14) その幼馴染の少女(〃)

インディ(14) テイルの相棒の機械人(コックピット族)


ワイス一家(ネコヒト族)

カール・ワイス(36) ミミーの父

コリーナ・ワイス(33) ミミーの母

テレーヌ&プーシャン(8) ミミーの双子の妹


ピコネコ村の人々

ネモイ村長(74) 老爺(ネコヒト族)

ステイル(68) その相棒(コックピット族)

レザー(25) 肉屋の女店主(ネコヒト族)

ブッチ(20) その店員(コックピット族)


フロンティア商会(敵役)

クレメンティ(40) 第七機兵隊の隊長(人間の男)

カペッロ(35) 副隊長(〃)


謎の人物

ナナイ博士(28) 人間の女

メカ助(?) 二足歩行型の乗用ロボ



【本編】


◯森の広場

   森の広場で、一匹のメタリックな豚が草を食べている。

N『機械と動物。両方の特徴を持った生き物【械獣(かいじゅう)】』

   と背後から、巨大な熊が現れ、豚にかじりつく。ガキンという金属音。どちらも普通の動物ではなく、機械と生物が入り交じった機械生命体「械獣」である。

N『その械獣が、械獣を喰らう世界』

   近くの低木に隠れ、様子をうかがう機械人、コックピット族の子供インディ(14)。見た目は身長2m前後、丸っこい体つきの人型ロボ。お腹には丸窓付きのドア、中には子供一人が入れる操縦席(コックピット)あり(インディの身体を操縦することはできない。搭乗者はターゲティングの補助、サブ武器の操作などが行える)。

   インディのお腹の操縦席。その丸窓に猫の獣人、ネコヒト族の少年テイル・クラフト(14)の姿が見える。

   テイル、操縦桿を握り、ニヤリと笑い、

テイル「とらえた! 今だ!」

   とインディ、機械人用のクロスボウ(折りたたみ式)を構える。クロスボウの先端が低木から突き出し、矢が発射される。

N『弱肉強食の時代。生き残るすべは……』

   飛翔する矢、熊械獣の背後から心臓をつらぬく。

テイル&インディ「よっしゃー!」

   と喜ぶ二人。

N『種族を越えた、強固なキズナ!』


◯森の道

   テイルとインディ、熊械獣の死体を乗せた荷車を引っ張っている。

テイル「やったな、インディ。このデカさ。記録更新だ」

   インディ、自分の腹を叩き、

インディ「やっぱりテイルがお腹に入ると調子がいいね」

テイル「そうか?」

   インディ、自分の額を指差し、

インディ「うん。獲物がよく見える。額にもう一個、目玉が増えたような感じ」

テイル「ふーん、よくわかんねえや。逆に体重が増えて、動きにくくならない?」

インディ「全然。むしろ力がわいてくる。重さなんて感じないよ」

テイル「重さねぇ……。そういや、インディ。なんだか急に荷物が重たくなったような……」

インディ「確かに……そんな気がするかも……」

   とネコヒト族の少女ミミー・ワイス(14)、荷車の熊の上であぐらをかいている。

ミミー「ふう。楽チン、楽チン」

テイル「って、ミミー! そこで何やってんだ!」

ミミー「ニャハハ! 冗談だって」

   と荷台から飛び降り、

ミミー「大変そうだなーと思って、手伝いに来たよ」

テイル「手伝いって。もう村は目の前じゃねえか」

   とテイル、見えてきたピコネコ村の入口を指差す。

   ミミー、荷車の取っ手を引っ張り、

ミミー「まあまあ。そう固いこと言わずに」

テイル「そう言って。本当はインディを口説きに来たんだろ?」

ミミー「エヘヘ。バレた?」

   ミミー、インディの横に移動し、

ミミー「ねえ、インディ。明日は私と狩りに行こうよ」

インディ「うーん、いいけど……」

テイル「騙されるなよ。どうせまた危険なとこに連れ回されるぞ」

ミミー「わかってないなー。危険がない冒険は冒険じゃない!」

   とミミー、胸を張る。

インディ「ミミー。狩りは冒険じゃないよ……」

ミミー「狩りもまた冒険なのです!(エッヘン)」

テイル「ダメだ、こりゃ」


◯ピコネコ村・広場

   ネコヒト族とコックピット族が共存する村。広場の中央に一本の大きな木。その周りを両人種の子供たちがグルグル回っている。

   子供たち、広場に入ってきたテイルたちに気づき、

子供A「あ、テイルだ」

テイル「よう」

子供B「狩りに行ってきたの?」

テイル「まあな。インディと仕留めてきた」

   と荷車の上の獲物を自慢気に指差す。

子供A「すげぇ! やるじゃん、コブなし!」

子供B「コブなし! コブなし!」

   と子供たち、インディの周りでピョンピョン跳ねる。

ミミー「コラ! 人の見た目のこと、とやかく言わないの!」

子供A「だってー。インディって俺らとちがうもん」

子供B「機械人なのにコブがない!」

   と子供たち、インディの左肩を指差す。インディの肩は、機械人なら誰でも付いているコブのような器官がなかった。

子供A「コブがないと夢を見ないって本当?」

インディ「うん。寝ちゃうとすぐに朝になってるよ。だから夢ってのがどんなのか、僕にはわからないんだ」

子供B「えー。かわいそう」

村長の声「かわいそうなものか。夢なんぞ見ないほうがええ」

   といつの間にか近くに、ネコヒト族のネモイ村長(74)と、相棒のコックピット族のステイル(68)が立っている。

子供たち「あ、村長とステイルさんだ」

   村長、遠い目をしながら、

村長「インディよ。わしはこの歳でいつも思い出すんじゃ。若い頃の夢。わしとステイルは聖域を目指した」

ステイル「そうだな、ネモイよ。二人で目指したなァ」

ミミー「いや、村長。夢ってそういう話じゃ……」


◯機神の聖域の絵 (イメージ)

   深い森の中、空を飛び交う凶悪な械獣たち、仰々しい人型ロボに守られた厳重な門の絵。

村長N『ユーラス大陸の最奥部。機神界にあるといわれる、安寧の地【機神の聖域】』


◯ピコネコ村・広場

   遠い目をしながら語る村長。

村長「しかし何度挑戦しても機神界の壁を越えられず、わしらは諦めてしまった」

ステイル「諦めたなァ」

村長「最後の挑戦は二十年ほど前。あれはわしが52歳の頃……」

ステイル「いや、53じゃなかったかァ?」

   テイルたちと子供たち、呆れ顔で、

ミミー「あーもう。またいつもの昔話が始まったよ」

子供たち「村長、いっつも同じ話してる……」

テイル「なあ、さっさとレザーさんとこ行こうぜ。真面目に聞いてたら、日が暮れちまうよ」

インディ「だね」


◯ピコネコ村・肉屋の前

   ネコヒト族の女主人レザー(25)と、コックピット族の店員ブッチ(20)の精肉店。店頭には、械獣の死体から切り分けられた肉や金属パーツが並ぶ。

   テイル、店の前で、

テイル「レザーさんいるー?」

   レザー、店の奥から顔を出す。前掛けが血まみれで、ノコギリを持っている。

レザー「いなかったことあるか? 小僧」

テイル「獲物買い取ってくれよ(ニカッ)」

   レザーとブッチ、店の外で荷車に乗った熊械獣を見て、

ブッチ「ウヒョ~! デケえ! こりゃ最高の獲物だぜ~!」

レザー「喜ぶなよ、ブッチ。あたいらは今からこれを解体するんだぜ?」

ブッチ「ゲェ~! 忘れてた! こりゃ最低のゲテモノだぜ~!」

   と頭を抱える。

テイル「それ客の前でする会話じゃねえだろ!(ビシッとツッコミ)」

   レザー、店の奥に引っ込み、

レザー「あのサイズだと……そうだな……」

   と棚をゴソゴソ漁る。

   レザー、戻ってきて、カウンターにドンと大きな籠を置く。中には肉や野菜、金属パーツがゴロゴロ。

レザー「ほれ。今回の報酬」

テイル「うげっ。ちょっと多すぎない?」

レザー「インディもいるだろ。育ち盛りなんだからいっぱい食べろ」

インディ「いや、レザーさん。さすがにこの量は……」

テイル「食い切る前に腐っちまうよー。なあ、お金に替えてくんね?」

   レザー、周辺の通貨である小さな黄金の棒(麻雀の点棒サイズ)を手に持ち、

レザー「ダメダメ。こいつは大人が使うもんだ。数に限りがある。他の村と取引できなくなったら困るだろ?」

テイル「ちぇっ。ケチー」

   ミミー、テイルの横で、

ミミー「ねえ。だったら、うちに来ない? 干し肉とか芋とか、保存食と交換してあげる。お母さんに頼んでみるよ」

テイル「マジで? 助かるぜ! ミミーもたまには役に立つな」

ミミー「うん。やっぱ来なくていいわ」

   とミミー、真顔でスタスタ去っていく。

テイル「ちょっ、冗談だって! 待てよ、ミミー!」

   とテイル、籠を持ってミミーの後を追う。

インディ「あーあ。余計なこと言うから」

   とインディも後を追う。


◯ピコネコ村・ワイス家の庭

   ワイス一家(五人家族)が暮らすニ階建て、木造の家。広い庭あり。

   庭でミミーの双子の妹、テレーヌ&プーシャン(8)がボールを投げて遊んでいる。そこにテイルたちがやってくる。

テイル「ミミー様! 本当にありがとうごぜえます!」

ミミー「だから、もうわかったってば!」

   テレーヌたち、それに気づき、

テレーヌ「あっ、テイルとインディだ!」

テイル「よっ、テレーヌにプーシャン! 昨日ぶりだな」

テレーヌ「テレは昨日テイルに会ってないよ?」

テイル「昨日、広場で遊んでるとこ見たぞ」

テレーヌ「それ会ったって言わない!」

ミミー「プー。お母さんどこ?」

プー「ん」

   とプーシャン、家を指差す。


◯同・ワイス家の玄関

   ミミー、玄関の戸を開け、

ミミー「お母さーん! 緊急事態!」

   ミミーの母コリーナ・ワイス(33)、玄関に立つテイルの籠を見て、

コリーナ「あらー。またたくさん貰ってきたのね」

テイル「レザーさんの大盤振る舞いで」

インディ「こんなになっちゃいました」

   コリーナ、腕まくりをし、

コリーナ「よし! じゃあ、おばさん張り切って料理するわよ。今日はうちでご飯食べていきなさい」

テイル「え、いいの?」

コリーナ「芋も好きだけ持って帰っていいからね。もちろん干し肉も」

テイル&インディ「ありがとうございます!」

   と二人、頭を下げる。

   ミミー、二人の背後に立ち、背中を叩き、

ミミー「というわけで、お二人さん。今日は客人としてゆっくりしていきたまえ」

   と玄関を上がって、

ミミー「ちなみに、私はお母様のお手伝いがあるので、あとはガキどもの世話をよろしく~」

   とコリーナの後を追って、台所の奥にピューと逃げていく。

テイル「うっ……なんだか都合よく……」

インディ「利用されたような……」

テレーヌ&プーシャン「あーそーぼー」

   と玄関の外で、テレーヌとプーシャンの目がキラーンと光る。


◯同・ワイス家の庭

   インディはテレーヌを、テイルはプーシャンを高い高いする。

テレーヌ「もっと高く! これじゃ雲に届かない!」

インディ「テレーヌ。これ以上は危ないよ」

   今度はテイルがテレーヌを、インディはプーシャンを背負い、お馬さんごっこ。

テレーヌ「お馬さんなのに! 足が遅い!」

テイル「はいはい、悪かったですねー」

   最後の遊び。

   テレーヌ、地面で丸くなったプーシャンを指差し、

テレーヌ「こうやってテレとプーが丸くなるから、テイルとインディでキャッチボールして!」

プーシャン「して」

テイル「できるかァ! 普通にケガするわ、アホ!」

インディ「子供の発想力……恐ろしい……」

   疲労困憊のテイルとインディ、肩で息をしながら、

テイル「なんだか……狩りより疲れねえ……?」

インディ「激しく……同意です……」

   とテレーヌとプーシャン、お構いなしでテイルたちの手を引っ張り、

テレーヌ「つまんなーい! もっと遊ぶー!」

プーシャン「械獣ごっこ(目をキラキラ)」

   ミミー、玄関の戸から顔を出し、

ミミー「皆ー! ご飯できたよー!」

   全員で、庭の木製テーブルに料理を運ぶ。

コリーナ「天気がいいから外で食べましょう」

   とミミーの父カール・ワイス(36)が野良仕事から帰ってくる。

カール「お、今日は賑やかだな」

テレーヌ&プーシャン「あ、パパ!」

テイル&インディ「お邪魔してまーす!」

   全員がテーブルにつき、

全員「それでは……いただきまーす!」

   と食事会が始まる。楽しそうにはしゃぐ子供達を見て、自然と笑みがこぼれるカールとコリーナ。


◯同・ワイス家の前(夜)

   テイルとインディを見送る、ワイス一家。

   ミミー、手を振り、

ミミー「またねー」

テイル「おう。また明日な!」


◯ピコネコ村・帰り道(夜)

   星空の下、テイルが干し肉と芋の入った籠を持ち、インディと並んで歩く。

テイル「いやー食った食った」

インディ「すっかり遅くなっちゃったね」

テイル「ミミーの家は賑やかでいいよな。少しうるさいけど」

インディ「フフッ。でも楽しいよ。家族っていいなーって感じで」

テイル「なんだ。妙にしんみりして」

   インディ、星空を眺め、

インディ「機械人は親を持たないからさ。余計にうらやましいんだ。とくに僕はあちこちの村をたらい回しにされたから……」

   テイル、その言葉を遮り、

テイル「だけど今はこの村にいる。オレやミミーたちと家族になった。だろ?」

インディ「……うん、そうだね。そうだよね」

テイル「もう六年も一緒にいるんだ。しけた面すんなよなぁ」

   とテイル、インディの背中をバシッと叩き、

テイル「よっと!」

   と地面に籠を起き、草むらの上で仰向けに寝転がる。

テイル「オレさ。インディにはマジで感謝してるんだぜ?」

インディ「そうなの?」

   とインディ、背負っていたクロスボウ(折りたたんである)を置き、同じように寝転がる。

テイル「母ちゃんは幼い頃に亡くなったし、父ちゃんも世界を探検するとか言って、しょっちゅう出かけるからよ。インディがいなけりゃ、オレは今ごろ発狂してたかもな」

インディ「確かに。お父さん戻ってこないね」

テイル「一年前に出かけたっきりだ。案外もう械獣の腹の中だったりして」

   とテイル、歯を見せてシシシッと笑う。

インディ「大丈夫。きっと帰ってくるよ」

   テイル、目を瞑って、

テイル「ああ。そして、またすぐに出かける。結局、村長と一緒さ。夢に取り憑かれた連中は、老いぼれてヨボヨボになるまで諦めがつかねえ。村で平和に暮らせばいいのによ。夢、夢って、バカバカしいぜ」

インディ「夢かぁ……夢……。ねえ、テイル。夢ってさ、こんな感じなのかな?」

   テイル、インディを見て、

テイル「急にどうした?」

インディ「見て」

   と夜空を指差し、

インディ「星が……消えていく」

   満天の星空を、黒くて大きい何かがゆっくりと横切っていく。

   その光景を呆然と見守る二人。

   と急に空が明るくなる。それは空を飛ぶ巨大な輸送機だった。輸送機の照明装置が村を明るく照らし出す。

テイル&インディ「な、なんだ!?」

   と二人、驚いて起き上がる。


◯輸送機・操舵室(夜)

   フロンティア商会の第七機兵隊を乗せた輸送機。操舵室には、クレメンティ隊長(40)、カペッロ副隊長(35)、数名のスタッフ。全員、人間である。

   クレメンティ、イスに座り、手元のホログラムを眺めている。ホログラムには、地球に似た惑星の立体模型が表示されている。

   クレメンティ、ぶつくさ言いながら、

クレメンティ「500年以上かけて手に入れた土地が、たったの5%未満……。笑えんな。人類もしょせんはこの程度か」

   カペッロ、クレメンティの横に立ち、

カペッロ「クレメンティ隊長。降下準備、整いました」

   クレメンティ、顔を上げ、

クレメンティ「ご苦労。カペッロ副隊長」

   と通信士の方を向き、

クレメンティ「オペレーター。もう一度各員に通達しろ」


◯輸送機・外観(夜)

   空中で輸送機のハッチが開き、武装した歩兵や、人型の戦闘ロボ(全高4~5m)が次々と村に降りていく。歩兵はロープで降下する。

クレメンティN『我々の任務は亜人種(デミヒューマン)の捕獲だ。奴らは貴重な資源である。誰も殺してはならない』


◯ピコネコ村(夜)

   村人たち、何事かと家の外に出て空を見上げる。

   そこに降りてきた兵士達、ネコヒト族に向けて、網を撃ち出すネットガンを発射。

クレメンティN『獣人にはネットガンで対処しろ。一網打尽にできる』

   村じゅうで悲鳴が上がる。

   ステイル、村人をかばって兵士の前に出る。

ステイル「貴様ら! 何をする!」

   と腕を振り上げ、攻撃の仕草。

クレメンティN『機械人は力強い種族だが、恐れる必要はない』

   ステイルの前に立つ兵士達の怯えた顔。

クレメンティN『奴らにはたった一言。こう言えばいい――(ひざまず)け、と』

   兵士の一人、声を振り絞り、

兵士A「ひ、跪け!」

   とステイル、力なく膝から崩れ落ちる。

ステイル(な、なんだ!? 身体が動かん!?)

兵士A「うわ! 本当に効いた!」

兵士B「チッ、下等生物が。ビビらせやがって。この調子でどんどんいくぞ!」


◯同・ワイス家の前(夜)

   テイルとインディ、来た道を走って戻り、ワイス家へ。

インディ「村じゅうから悲鳴が聞こえる!」

テイル「クソッ! ミミーの家は無事か?」

   と家の前で、兵士CとDがたむろしている。

   兵士C、テイルたちに気づき、

兵士C「おっ! 逃さねえぞ!」

   とテイルに向けてネットガンを発射。

   テイル、飛んできた網に捕まる。

テイル「うわ! なんだこれ!」

インディ「テイル!」

   兵士CとD、ネットガンを肩に担ぎ、舐めた態度でインディの前に立ち、

兵士C「オラ、下等生物! 跪けぇ!」

インディ「……?」

   だがインディには何も起こらない。

兵士C「え? いや、跪けよ! 跪けって!」

兵士D「見ろ! こいつ、パラライザーがない!」

インディ「ふん!」

   とインディ、兵士CとDを殴り倒す。

   物音を聞いて、家の中から兵士たちがゾロゾロ出てくる。

兵士たち「あっ! 外で暴れてる奴がいるぞ!」

インディ「マズイな」

   とインディ、網にくるまれたテイルを担いで、

インディ「テイル! いったん逃げるよ!」

テイル「待て、インディ! まだミミーたちが……」

インディ「ダメだ! 僕らが捕まったら元も子もない!」

   と村の近くの林のほうへと駆け出す。


◯輸送機・操舵室(夜)

   カペッロ、クレメンティに報告。

カペッロ「隊長。兵士たちがパラライザーのない機械人を目撃したそうです」

クレメンティ「突然変異体か。噂には聞いたことがあるな。で、捕まえたのか?」

カペッロ「いえ、逃げられたそうですが……。追跡させますか?」

クレメンティ「いや、深追いはするな。それより任務を優先させろ。だいぶ作業が遅れているぞ」

カペッロ「了解です。できるだけ急がせましょう」


◯ピコネコ村・海沿いの浜辺(夜)

   ピコネコ村の近くの海沿いの浜辺。空には輸送機が浮かび、檻の並ぶ砂浜を照らしている。

   ネコヒト族の村人たち、手枷をはめられた状態で、列をなして、次々と檻の中へ収容されていく。機械人たちは気絶した状態で、山のように積み重なっている。戦闘ロボがその山から機械人をつかんで、コンテナに投げ入れていく。

   兵士たち、列に並ぶネコヒト族を警棒でつつきながら、

兵士たち「オラ! さっさと歩け!」

村人たち「……(うつむいて歩く)」


◯同・浜辺近くの森(夜)

   テイルとインディ、浜辺近くの森の低木から顔を出し、檻に収容されていく村人たちをなすすべなく眺めている。

テイル「ど、ど、ど、どうするよ、これ……」

インディ「どうするって……どうしよう……」

   と怯える二人。

ミミー「ま、私たちで何とかするしかないっしょ」

   とミミー、テイルたちの隣でニョキッと顔を出す。

テイル&インディ「わっ! ミミー!」

ミミー「しっ。大声出さないで」

   とミミー、人差し指を口に当てる。

テイル「ごめん。てっきり捕まったかと」

ミミー「あんなトロい連中に? 冗談言わないで。まあでも、家族は捕まっちゃったんだけどね(舌をペロッと出す)」

インディ「そうなの? じゃあ、絶対に助けに行かないと」

ミミー「ねえ、それよりなんでインディがここにいるの?」

テイル&インディ「へ? なんでって?」

ミミー「私見たの。あいつらが『跪け』って言うと、機械人は皆動けなくなっちゃった。まるで魔法みたいに。だから同じ目に遭ったんじゃないかって」

インディ「あ、それ僕も言われたよ。でも何ともなかったな。あいつら、ビックリしてたよ。僕には『パラなんとか』がないとか言って」

テイル「パラなんとか? それって、もしかして……」

ミミー「コブのことじゃない?」

   とミミー、顎に手を当てて、考える仕草で、

ミミー「つまりインディには、あいつらの魔法は効かないってことか」

   ミミー、片手の人差し指を立てて、

ミミー「ねえ、近くの村にコブのない人いない? いたら仲間にして皆を助けようよ」

   テイルとインディ、考え込む。

テイル「コブのない人ねぇ……。うーん、聞いたことないなぁ……」

インディ「あっ!」

   とインディ、何かを思い出す。

テイル「どうした?」

インディ「ひとつだけ心当たりがあるけど……試してみる?」

   テイルとミミー、首をひねって怪訝そうに、

テイル&ミミー「試すって……何を?」


◯同・海沿いの浜辺(夜)

   村の子供たちが収容されている檻。檻の中で、シクシクという泣き声が「うわーん! ママー!」「びえええん!」「ギャー!(大声)」と変わっていく。

   兵士、檻を蹴り飛ばし、

兵士「ギャーギャーうるせえぞ! 静かにしろ!」

   檻の内側、鉄格子の近くにいるテレーヌとプーシャン。自分より年下の子供たちの頭をなでながら、

テレーヌ「テレたちじゃないよ」

兵士「ああん?」

プーシャン「ネコヒトも機械人も、あんな風に泣かない」

兵士「じゃあ、誰が泣いてんだ?」

   テレーヌとプーシャン、抱き合って、

テレーヌ「すぐにわかるよ」

プーシャン「もうすぐここにやってくる」


◯同・近くの森(夜)

   インディ、械獣の卵を抱えて森を全力疾走。お腹の操縦室にはミミー、背中にはテイルが乗っている。三人の背後を、怒り狂った無数のドラゴンが「ギャーギャー」と騒ぎながら追ってくる。

テレーヌ&プーシャンN『――械獣たちがやってくる!』

   テイル、インディの背に揺られながら、

テイル「心当たりってコレかよ!」

インディ「うん! 械獣の身体って機械人に似てるけど、コブがないんだ!」

ミミー「もっと速く! 追いつかれる!」


◯同・海沿いの浜辺(夜)

   遠くから「ドドド……」という地鳴り。

兵士たち「ん? なんだ?」

   とドラゴンの群れが檻の並ぶ浜辺へとなだれ込む。

兵士たち「か、械獣だー! 械獣が襲ってきたー!」

   兵士A、目の前の小型ドラゴンに向かって、

兵士A「ヒィィィー! ひ、跪けー!」

兵士B「ムダだ! 械獣に声は効かねえっての!」

   現場が混乱する中、近くの草むらからレザーとブッチが登場。

   レザー、兵士AとBを鉄パイプで殴り倒す。

   ブッチ、村人たちが入った檻の鉄格子を力ずくで破壊し、脱出口を作る。

ブッチ「ウヒョ~! こりゃ最高の逆転劇だぜ~!」

レザー「浮かれるな、ブッチ。さあ、皆! 今のうちにズラかるよ!」


◯輸送機・操舵室(夜)

   カペッロ、前面モニターに映った浜辺の様子を見て、

カペッロ「いったい何の騒ぎだ?」

索敵担当「か、械獣の襲撃です!」

カペッロ「落ち着け。敵は何体いる?」

   索敵担当、レーダー画面を汗だくで凝視しながら、

索敵担当「特A級の械獣が一体と……その他、無数に飛び交っています! 捕捉しきれません!」

カペッロ「よし。まずはデカいのから始末しよう。特A級はどこだ?」

索敵担当「特A級は――」

   と前面モニターいっぱいに映る、巨大ドラゴン。

索敵担当「ほ、本艦の目の前です!」

カペッロ「なにィーッ!」

索敵担当「ぶ、ぶつかるー!」

   とドラゴンの首にレーザー光線が直撃。輸送機とドラゴンの接触がギリギリで回避される。

カペッロ「い、今のは?」

クレメンティの声「あー、頭を狙ったのになー。久々すぎて腕が鈍ってやがる」

   とモニターに、輸送機の外を浮遊する戦闘ロボ(隊長機)が映る。隊長機にはクレメンティが搭乗している。隊長機の持つレーザーライフルの冷却機構の穴から蒸気がプシューッと噴き出す。

カペッロ「隊長! いつの間に!」

クレメンティ「カペッロ。ちょいと留守番頼むぞ」

カペッロ「どこに出かけるんです?」

クレメンティ「決まってるだろ。下に行って、変異体を探してくる。この騒ぎ、おそらくヤツの仕業だ」

   と隊長機、レーザーライフルを背負い、眼下の村を見下ろす。

クレメンティ「イレギュラーな事態は、イレギュラーな存在が引き起こす」


◯ピコネコ村・上空(夜)

   村へと舞い降りる隊長機。機体のメインカメラがギラリと光る。

クレメンティ「今回の任務。亜人種(デミヒューマン)の殺処分は含まれていないが、相手が変異体なら話は別だ」


◯同・住宅地(夜)

   テイルとミミー、立ち並ぶ家の外壁の陰に身を隠している。

   テイル、そっと空を見上げ、輸送機の周りを飛ぶドラゴンを見て、

テイル「人の多い方に行ったな」

ミミー「ある意味、狙い通りだね」

   とインディ、二人の元に走ってくる。

インディ「おまたせ」

テイル「卵は?」

インディ「広場に隠してきた。あそこなら見つからないと思う」

ミミー「これでメカドラゴも、しばらくは大暴れってわけね」

テイル「そのあいだに皆を助けて、さっさと逃げ出そうぜ」

   と三人の頭上から、

クレメンティの声「どこへ逃げるって?」

   と家の屋根の上から、クレメンティの乗った隊長機の顔が覗いている。

テイルたち「うっ……うわああああーっ!! なんか出たー!!」

   と三人、悲鳴を上げて逃げ出す。

   クレメンティ、隊長機の右手を構える。右手のパーツが割れ、中から捕獲用のボーラ(投擲武器)を射出する銃口が飛び出す。

   クレメンティ、走って逃げるテイルたちに狙いを定め、インディに命令する。

クレメンティ「動くな!」

   と銃口からボーラ弾を発射。円盤状の弾が飛んでいく。回転する円盤の側面からワイヤーが三本飛び出し、対象に絡みつく仕組みの弾である。

   インディ、テイルとミミーを抱えて、ボーラ弾をかわす。

   近くに生えていた木にボーラ弾のワイヤーがガッチリと絡みつく。


◯隊長機・操縦室(夜)

   クレメンティ、操縦席でモニターを眺めている。走り去るインディの後ろ姿を見ながら、

クレメンティ「声が通じない。やはりあれが変異体か。生きたまま連れ帰るか、それとも殺してしまおうか。悩ましいところだが……。考えるのは捕まえてからでも遅くはない」


◯森の中(夜)

   インディ、森の中をひた走る。お腹の中にはミミー、背中にはテイルが乗っている。

テイル「インディ。今日の狩りで一番苦労した場所を覚えてるか?」

インディ「泥だらけになったところ?」

テイル「そうだ。あそこで落ち合おう」

インディ「なるほどね。オーケー、わかった」

   とテイル、インディの背から飛び降りて、別方向へと走っていく。

ミミー「え、何? どういうこと?」

インディ「勝負に出るってこと。それより、また来るよ!」

   とインディの背後からボーラ弾が飛んできて、近くの木に巻き付く。


◯インディの操縦室(夜)

   インディの操縦室には、操縦桿が一本と、背面カメラを映す「背面モニター」がある。インディのお腹の丸窓は出入り口だが、内側から見ると前面モニターの役割も担っている(窓に映る標的にターゲティングできる)。

   ミミー、真っ黒い背面モニターを見て、

ミミー「インディ! モニター見てるけど何も映らない!」

インディ「モードを切り替えて。横にボタンがあるから」

   ミミー、背面モニター横のボタンを押す。モニターが暗視モードに切り替わり、後方を追走する隊長機が見える。

ミミー「見えた!」

インディ「操縦桿で敵をマークして。あとは僕がなんとかする」


◯森の中(夜)

   隊長機、ボーラ弾を数発発射。

   インディ、かわしまくる。

クレメンティ「視野が広いな。反応も悪くない。同伴者による能力の向上。面白い種族だ。おっと、遊んでいるとまた部下に怒られてしまう」

   隊長機、肩のパーツが割れて、中から小型のミサイルランチャーが登場。即座に小型ミサイルが乱射される。

クレメンティ「さて、そろそろ終わりしようか」

   走るインディの周りでミサイルが炸裂。木々がなぎ倒される。

インディ「うわあ!」

   とインディ、大きくジャンプ。

クレメンティ「飛び上がったな。着地点はずらせないぞ」

   と隊長機、ボーラ弾で追い打ち。

   インディ、着地時の足を狙われる。ボーラ弾に両足を巻き取られ、地面に横倒しになって倒れ込む。

   ミミー、インディのお腹の丸窓から顔を覗かせ、

ミミー「イテテ……。ねえ、そっちは大丈夫?」

インディ「うん。大したことない」

ミミー「だけど、このままだとマズイよ。どうする?」

インディ「ミミー、安心して」

ミミー「?」


◯森の中・木の上(夜)

   高い木の上で、隊長機を見下ろすテイル。テイルの下を通るクレメンティはまだ気づいていない様子。

インディN『僕らはもう――合流している!』

   テイル、緊張と興奮が入り混じった顔で、ゴクリと唾を飲み込む。

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