きいたらくる話
「その話をきくとくるんだって」
放課後、下駄箱の前で田中君が言った。また男子が変なことを言っている。
「何がくるの?」
ちょっと気になって聞いてみた。
「うん?知らないよ。だってオレその話きいてないもん」
何それ?じゃあ何が何だかわからないじゃない。やっぱり男子ってくだらない
でも眠る前に思い出しちゃった。気になると眠れなくなっちゃうのよね。
『その話』を聞くとくるらしい。
じゃあ何がくるの?やっぱりお化けかな?お化けってどんな?ちょっとこわくなっちゃった。かわいいお化けならいいのに。黒い長髪の女の人がくるとか・・っこわっ!忘れよう。
その何かは、きて何をするんだろう?くるだけ?驚かす?お話をする?良いことするってパターンもあるかも。鶴の恩返し的な?やっぱり殺されちゃうのかな?
それも結局今は分からないか。明日田中君に聞いてみよう
「田中君、昨日の話なんだけど」
「え?何?」
「ほら。話をきくとくるって」
「・・ああ。あれ?それが?」
「何がくるか知ってる?」
「だから知らないよ。おれ聞いてないから」
それはそうか・・。じゃあ
「その話、誰にきいたの?」
「だから聞いてないって」
「そうじゃなくて『その話をきくとくる』のを教えてくれたのは誰なの?」
「ああ、兄ちゃんだよ」
「ああ、中二の?」
「そう。もういい?」
「ありがとう」とお礼を言う前に田中君は校庭にサッカーに行ってしまった。
「田中君のお兄さんですか?」
その日の放課後、中学校の帰りに田中君のお兄さんを見かけた。ラッキー。
いろいろ聞いてみたけど田中君弟と対して内容は変わらなかった。でも、その話を高橋君が話しているのを聞いたらしい。
この高橋君はゲーセンとかにたむろしている少しやんちゃなお兄さんとして地区でも有名だ。
ゲームセンター「サンライズ」の前でどうしようか迷っていたら高橋君のほうからきてくれた。
「何だお前。さっきからチラチラみてんじゃねえ」
急に絡まれて目が熱くなるのがわかる。でも聞かなきゃ。
「あ、すみません・・でも、聞きたいことがあって・・」
「チッ。何だよ」
「あの・・うわさのことなんですけど・・・」
高橋君は『その話』をしてくれた。でもそれは私も知っている話で、それに何かがくるということが付け加えられている。何がくるのかは知らないらしい。
「その何かは何をするんですか?」
「それも知らねえ。ボコられるとかじゃねーの?オレはそんなの返り討ちにしてやるけどな」
・・ボコられるのか・・・
「じゃあ、その話は誰に聞いたんですか?」
「ん?だれだっけなー?・・ああ、リカ先輩だ。コンビニでアイス食いながらだべってたんだ」
また男子が話をしてる。今度は吉田君。陰キャな感じだけど、いろいろ知ってるの。
「あの高橋ってヤンキーいるでしょ?あの人が襲われたらしい」
「何で?」
「知らない」
「あー!」
「田中君どうした?」
「兄ちゃんがあのうわさ聞いたの高橋からだって言ってた」
「やばい。あのうわさ本当なんじゃ・・」
「やめろよ。こわいだろ」
田中君は相当ビビってる。
「大丈夫だよ。田中君は『その話』を知らないんだから大丈夫だって」
そうか・・『その話』の中身を知らなければいいんだ。
でも、私は知っちゃってる。
「ねえ、結局何が来たの?」
「え?・・それは知らないよ」
「そう・・」
うわさはかなり広まっているみたい。商店街で『その話』をしているおばさんを見かけた。
「あの高橋って子もバチが当たったのよ」
「物騒よね~」
「でもほら、、あの話を聞くと・・てうわさもあるじゃない?」
「何それ?」
「ほら、あの家の・・あら?何お嬢ちゃん?」
「すみません、そのうわさを聞くと何がくるか知っていますか?」
「あら。また変なことに興味もって。そーねー。言われてみると確かに知らないわ」
「じゃあ何をされるんですか?」
「それも知らないわね~」
「でも高橋って子がケガしたぐらいだから、もっとひどいこともあるかも知れないわね。でも、まあ、うわさよ。うわさ」
商店街だけじゃなく公園や喫茶店。カラオケボックスなんかでもうわさ話が聞こえてくるけど、答えは分からない。リカちゃんが何か知ってるのかな?
また吉田君が話してる
「やばい。かなりやばい」
「うん。どうしよう?」
「でも俺たちはまだ知らないから大丈夫のはずだ」
「オレ。殺されるのイヤだ」
「大丈夫だって。田中君のお兄さんも無事だろ?『その話』の中身を知らないからなんだ」
「じゃあ、もうこの話やめようよ」
「そうだね。それが正解かも」
「何?どうなってるの?」
「ああ、お前か」
「どうしたの?」
「この間のうわさが『その話をきくと何かに殺される』に変わったんだ。」
「えー?で、何が来るかわかったの?」
「それは分からない。」
「じゃあ、いいや。またね」
「ところであいつ田中君のクラス?」
「え?吉田君のクラスでしょ?」
「やっぱコンビニ前で食べるガリガリするアイスはうめーなー」
「そうっすね。リカ先輩」
「そーねー。ガリガリ様って感じね」
「そっすよねー。あ!リカ先輩あのうわさ知ってます?聞いたらくるとか?」
「なんそれ?」
「なんかーどっかの?家のー?話をすると?何か来て?殺されるって」
「しらねー。わけわかんねーし」
「あ、ほら、高橋が?ボコられたって知りません?あれもそのうわさのせいらしいっすよ」
「高橋?あー。何?あれ、うわさになってんの?」
「リカ先輩、知ってんすか?」
「うん。だって高橋にその話したのリカだもん」
「すげー!さすがリカ先輩っす」
「何か来て死ぬって何?それ知らねーよ」
「そーなんすねー。じゃあ、どんな話なんすか?」
「ん?うちの隣の家に小さい子がいてさー」
「あ、リカお姉ちゃん。久しぶりー」
「え?なんで?うん、久しぶり」
「リカお姉ちゃん。お話続けて?」
「え?でも・・」
「大丈夫。つづけて?」
「何すか?この子?」
「つづけて?」
「この子が隣の家に住んでたのさ。いまどうしてるの?」
「ふつうにしてるよ」
「あのあと大変だったでしょ?」
「んーん。大丈夫。続けて」
「あ!リカ先輩の隣の家って火事になったって」
「うん。大丈夫。つづけて」
「あ、ああ。火事の1週間後ぐらいに庭で母さんと話してたら〇〇ちゃんうちに来たよね?」
「うん!行ったよ!」
「あれさ。5年前のことだけど〇〇ちゃん変わらないね?」
「うん。そうだね。それでさー。リカお姉ちゃん」
「なに?」
「気になってしょうがないことがあるの。いろんな人に聞いたけど、教えてくれなかったんだ。教えてくれる?」
「リカに分かればね。何が気になるの?」
「その話を聞くと誰が殺しにくるの?」