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Logic Tale《剣豪神子は最強無双するより帰りたい》  作者: 時杜 境
第二章 魔城デストロイヤーズ
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07 蹂躙・鏖殺・撃滅ロード

「──ッ! 気を付けて! こっちに門番が来るわッ!」


 キリカさんからの忠告の通り──

 次の瞬間、前方の地面が道のように盛り上がり、そこから二対の頭を持つ大蛇が、阻むように現れた。


『ようこそ! ヨウコソ! 地獄の底へ!』

『我ら魔境の番人、ラタトスクの兄弟が牙試し──』


 全長約十エートルちょいの大型魔物。

 確かに魔境初心者ならば、丸一日は突破にかかりそうな「初見殺し」だ。コレはどこかの魔王の配下ではなく、魔境という土地に住み着いた、進化した魔物の一例──だが。


「抜刀理論・空斬説」


「抜刀式:空斬錬成」


 グレンが斬撃を飛ばすタイミングに合わせ、

 ボク側から、エーテルを彼の刀身に付加して、斬撃のリーチを延長する。


 〇.一秒の戦闘。

 瞬きの間に細切れにされた大蛇の兄弟は、断末魔すら上げる暇もなく絶命した。


『ギョエーッ! 大型ニュービーの参戦だぁー!』

『逃げます。さようなら。永遠に』


 ……通り過ぎるとき、エーテル波に乗る形でそんなメッセージが届いた気がしたけど無視。実際、グレンには聞こえていないだろう。


「あれが入国手続きか?」


「いや……うん……そんな感じで」


 番人ラタトスク。いわゆる魔境の“初心者狩り”を主とする魔物だけど、なんだかんだで魔境初挑戦者の生存率の向上に役立っている噂もあったりなかったりする。魔物なのに不思議だ。


「ひゅー! 合体技、かっこいー! なんで出来るのかがさっぱりだけど!」


「あの、今、一世紀に一度見るくらいの絶技を目撃したような気がするのですが……」


 その認識で合ってるよカオス先生。どうかその常識性を忘れないでほしい。感覚のマヒって怖いからね!


「グレン、前方注意! どこかの魔王軍!」


 ボクの視界には、二百エートル先の景色が映っている。

 ぞろぞろと蠢く、異形たちの進行軍。人型がベースになった竜頭、蛇貌、獣首を始めとした、四足歩行の獣魔たち。

 どこぞの魔王軍同士が争っているのだろう、ここからでも現場の悲鳴と怒号、狂ったような歓声が聞こえてくる。


 魔王たちは年中、最後の一人になるまで互いに領土を奪い合い、殺し合い、翌年の魔王長――大魔王とも呼ばれる存在を決定しているという。

 ……終戦した試しなんて、ここ数千年は聞いたことがないって話だけど。


「適当に突っ切っていいと思うか?」


「いいっていうか、それしかないと思う!」


 魔物たちの殺し合いは魔境の常だ。その中を、嵐のような第三者が蹂躙していくのも──魔境のよくあるワンシーンだろう。


「進め進めぇ! 我らが魔王様の行く手を阻むもの、生きるにあたわ──、ッ!?」

「総員警戒ッ! なにか来──速ェッ!?」


 ──数百を優に超える、幾百、幾千もの軍勢。

 軽く三つ……いや四つほどの別々の所属だろう魔王軍の戦線に、大型バイクの影が飛び込んだ。


「抜刀理論・空幻説」


 同時に、慈悲なく放たれる扇状の広範囲斬撃。

 その一閃だけで道路上の魔物たちが片され、また斬撃圏内の魔物たちが吹き飛ばされていく。ちょっとしたリアル無双ゲーの光景だ。


「おのれ何奴ッ! この魔王グライアが相手に──貴様はッ!?」


 文字通り雑魚軍を斬り殺し、ひき殺した先、堂々と眼前に立ちはだかったのは、豪奢な恰好をした角持ちの魔王個体。


 その目が、グレンの後ろで立ち乗りしていたボクを見て驚愕に染まる。


 おっと、知り合い発見。

 しかして思い出話をする時間なんてねーので、


「ワンキル」


 既に構えていた白い狙撃銃をぶちかます。

 弾丸は真っすぐに魔王グライアの頭部を撃ち抜き、素早く死体から、錬金術で素材を剥ぎとって通過する。すぐさまグライアの軍の魔物たちの悲鳴と怒りが聞こえてきた。実に良い魔力の源(負の感情)だ。


「知人?」


「ん、()()()()()()()()()()()()()()()だよ」


 ──魔王城攻略は、錬金術師にとって一つの資金稼ぎである。

 魔王が復活するたび、その居城には金銀財宝も再出現する。それを狙って、ラグナ大陸では毎年毎年、あらゆる錬金術師が、金に困った錬金術師が、一発逆転のチャンスを狙って「魔王攻略」に乗り出している。


 それに、錬金術師の端くれであるボクも参加したことがある──これはそれだけの話だ。


「魔王グライアって、上級魔王の【大罪王】の一人じゃなかったかしらー……スナック感覚で殺せちゃうものだったのかしら、アレー……」


 後ろに追従しているキリカさんから余計な情報があるけどスルー。

 ところで、彼女と先生はどうやって魔物たちを退けているのだろう──と目を向けてみると、


「グギャッギャァァ!? なんだこの影はー!?」

「退避、退避ー! 触れるとヤバい気配を感じるッ!」

「あの白いクルマ、悪魔が乗ってるぞー!」


 ──グレンとは別方向で無双ゲーしていた。

 カオス先生が放った影たちが、近寄る魔物を次々と飲み込み、素材化しているのだ。

 むしろあっちを先行させた方が楽だったかもしれない──いや、泣き叫ぶ魔物たちを見ながら進むのはちょっと精神的ショックが大きいから、これが最善か。


 そんなボクたちの快進撃に、他の魔王軍、魔物たちも怖れをなしたのだろう。

 続く先の道では、蜘蛛の子が散るようにして逃げ出す者、或いは闘志を燃やして襲いかかってくる馬鹿がいる。


「南から超抜級のイレギュラー進行中ー! 死ぬ前に逃げろー!」

「グライア様の仇を討てッ!! 突撃部隊続けぇ! アレを止めろーッ!」

「悪魔の錬金術師が二体いるぞ! 上物だ、首を狙えェェェ!」

「一体じゃね? っつーか、黒い方のコートのアレなに? アレが一番ヤバイって、百年の生存経験が訴えてるんだけど」

「ありゃ野生の理論持ち(ロジックホルダー)だ! それに後ろの白いの……見たことあるぞッ!? 前に魔王ロクボウを狩った『魔王殺し』じゃねぇか!?」


「まおうごろし?」


 野次馬の声が耳に入ったのだろうか、グレンからそんな声が聞こえる。

 ボクは視線を逸らしながら、余計なコトを口走った馬鹿を狙撃しておく。


「フ、なんの事かな」


「いや、誤魔化せてないぞ」


「二年前にちょっとね。ちょっと」


 ちょっと荒稼ぎしただけである。ボク悪くない。


「おっと、謙虚さは美点ですが過ぎれば傲慢とも言います。イリスさんは二年前、単独で三十六体もの魔王を葬った最多討伐記録者ではないですか」


 ちょっと先生。個人情報の流出は止めてもらいたいんですけど。


「三十六体……」


「ちなみに魔王はふつう、パーティを組んで挑むものよー。イリスくんが異常なのは、たった一人でそれだけの魔王を殺しまわった点ね。なにか癇に障ることでもあったのかしら?」


「ただの資金繰りだよ!」


 それで興が乗っちゃって、気付いたら狩りすぎてたってだけだ。自身の未熟さを噛み締めた一件でもある。以降、ボクは魔王城攻略からは手を引いた。本当にあれ以上やりすぎると、錬金術師側からも苦情が届きそうだったし。


「待て白い悪魔ッ! グライア様の仇──」


「『白の万象ホワイト・アルス・マグナ』」


 執念深く追ってきた魔物の軍勢に、ボクは指を鳴らす。

 瞬間、頭上背後の中空には三エートル大の白い砲身が二台展開し、ガゴン、と砲弾が装填された。


「ゴメンゴメン。首領(トップ)だけ殺すなんて、礼儀がなってなかったよね──」


 指の形を銃のようにし、人差し指を目標方向へと差し向ける。

 目標:グライアの眷属魔物。

 設定範囲:絶滅モード、っと。


「装填神弾、永続錬成開始。目標補足──発射」


 キュイン! と閃光が奔った。

 砲身から放たれた白い熱線が、一瞬にして追従してきていた魔物たちの影を消し飛ばす。それは目標全てが沈黙するまで自動的に射撃が続き、すっかり静かになった頃、周囲の十エートル付近に敵影は存在しなかった。


「うーん、まとめ狩りにしては上々の成果かな……」


 熱線が灼き滅ぼしたと同時、ボクの携帯工房……『白の万象』内に回収された素材を鑑定する。

 これは攻撃判定と一緒に、自分の錬金術式が主とする素材──ボクの場合は「光」を媒介にして、倒した魔物の素材の自動回収を行う機能である。


「あ、Aランクの鉱石心臓だ。先生いるー?」


「いえ、心臓の加工は不得手ですので……」


 そっかぁ、と返しつつ、ボクは立ち乗りの状態から、おとなしく席に腰を下ろす。


「魔王殺し……」


「蹂躙の悪魔……ね……」


 ヒドイ悪口が聞こえてきたけどボクは聞こえなかったコトにした。


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