蟻とスライムと画像フォルダー
陽平たちのクラスメイトが一応のパーティをつくって冒険を始めたその日の朝。
陽平はいつもの時間に目が覚めた。
特に目覚ましは設定していなかったが、起きたらいつも起きる七時だった。今日と明日は学校はお休みだ。なので二度寝ぐらいはいつもしているのだが、夢の中のゲームをした後の朝はすっきり目覚めて、二度寝も出来ない。
仕方なしにトイレに行ってから着替えようと部屋を出ると、朝食を取っていた両親に驚かれたりした。
陽平の家では学校のある日は朝食と昼の弁当を用意して貰えるが、休みの日には朝と昼は各自が好きにとる事になっている。
「あ、後で勝手にやるから」
朝食をどうするか聞かれたが、自分でやると言って部屋に戻る。
着替えてからどうするか考えたが、お気に入りの音楽を掛けて、夢の中のゲーム関連の掲示板を確認する事にした。
しかし新しい書き込みは何も無かった。おそらく、他のプレイヤーも今頃起きて、朝の支度をしているだけなのだろう。
実際に体験しているプレイヤーによる掲示板は、寝る前の時間がメインだと思われた。なので他のサイトを見てみる。
元々夢の中のゲームの噂は聞いても、実際に体験できていない連中が作ったサイトばかりなので、内容もほとんどが出鱈目だった。
『俺が行った所はNPCの女の子が可愛い子ばかりでウハウハだったぜ』なんてのは可愛い方で、何人も死んだとか、やつれて死にそうになってたとか、今もなお眠り続けている、なんて作り話も多い。
どれも根拠の無い話なので、数回、それっぽい書き込みをした後には書き込みが途絶え、突っ込みや罵りの書き込みばかりになるのがほとんどだ。
「この状況だと、夢の中のゲームの噂は消えていく傾向になっていくのかな」
実際に行けるヤツが書き込んでも『嘘松』とか言われるだけだろう。
落胆とも安心ともつかない複雑な気持ちになった所に佐藤一から電話が掛かってきた。
陽平は通話ボタンを押すといきなり切り出す。
「おはよう。今日の君の任務だが、現実世界での君の本体を探す事にある。例によって君、もしくは君の尊厳がどうなろうとも、俺は一切関与しない。では成功を祈る」
それだけを言って通話終了ボタンを押す。
スマホを置こうとした所で再び電話が鳴る。
「どうした?」
『どうしたじゃねぇ。なんだ? 今日の任務って!』
「そのまんまだが?」
『うむ。いつもの陽平に間違いないな』
「何を言う。俺は陽平十五号だ」
『まあいい。それでな、早速掲示板に昨日判った事を書き込もうと思ったんだが、何か秘匿する情報とか有るか?』
「やはり仮面が無いとノリが悪いみたいだな。個人名以外はそのまま出しても良いんじゃ無いか? 元々チュートリアルの一環みたいな街だったし」
『仮面が本体じゃねぇ! 伝える項目が多いんだが、全部一気に行くつもりだがいいよな?』
「仮面が本体と認められないとは。反抗期か? あっちの連中も全部知りたいだろうしな」
『反抗期でも思春期でもカンブリア紀でもねぇ。特にエリアボスの話は聞きたいだろうからなぁ』
「ハルキゲニアも本体だったのか。それより、山口たちが行けるようになった切っ掛けの方が知りたいんじゃないか?」
『ハルキゲニアも良いが俺はアノマロカリス推しだ。ああ、アレがあったか』
偽の魔法陣はしっかり消して、ダウンロードしたら同じ所に行けなくなったサイトの物を使う。さらに画面に出てきた魔法陣をしっかり見つめて、スマホを持ったまま眠りにつく。
それが要点だと陽平は言う。
「オパビニアの間抜けな顔も良いぞ。それと、これからちょっと昼寝出来ないか試して見るつもりだ。きっちり目がさえてあまり眠くは無いんだが」
『ドアノブかキノコかって言うあの目は間抜けだよな。そう言えば昼寝してないな。書き込んだら俺も試して見るわ』
そこで通話は終了。
陽平はキッチンに行き、カップ麺にお湯を入れて戻って来た。
食べ終わったら再び掲示板巡り。だが、そのどれもが適当にそれっぽく組み立てた物語だった。
諦めた陽平は音楽のボリュームを下げ、スマホに例の魔法陣を表示させて、じっくり魔法陣を見てから横になった。
しかし、いつまで経っても眠れる気配がしない。落ち着いてリラックスして体中の力を抜いて何も考えない、としてもいつの間にか他の事を考えていた。ならばとその考えに集中し、色々考えてみるのだが余計に頭がさえていくだけだった。
寝るのも諦めた陽平は部屋を簡単に掃除する事にした。掃除と言っても粘着テープのローラーを転がすだけだ。掃除機を掛けるような掃除は月に二度ぐらいの頻度でしかしない。まぁ、それで済むような使い方しかしていない部屋だった。
掃除、片付けも終わり、外に散歩にでも出かけるかと自問したが、イマイチその気になれず、机に戻って掲示板を見る事にした。
実際に行けてるプレイヤーのサイトの掲示板を開く。
【陽平と愉快な仲間たち】と言うスレの名前はどうにかならないかと思う。
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【陽平と愉快な仲間たち】
24 名前:三刀流が出来なかった剣士
マジで他のプレイヤーも参加出来るのか?
25 名前:早撃ちの一発マン
これって、ボス突破したら他のプレイヤーと会えると思ってた
26 名前:一
お待たせしました。重大な報告があるっす!
なんと陽平がボス突破してしまったっす!
しかも女六人連れたハーレムパーティっす!
27 名前:ぼっちの魔法剣士
おめでとうの前に言わせてくれ。もげろ!
28 名前:早撃ちの一発マン
おめでとう。腐れ!
29 名前:三刀流が出来なかった剣士
とりあえず潰れろ!
30 名前:一
ボスの構成は、虎の成獣並みの化け猫、化けイタチが二匹、毛羽毛現、鬼火と言う感じで、タンクと風魔法使い、火魔法使い、魔法を使った事があるガンナーという構成ならほぼ勝てるそうっす
31 名前:早撃ちの一発マン
銃しか鍛えてねぇorz
32 名前:ぼっちの魔法剣士
魔法を使った事があるガンナーって?
33 名前:一
化けイタチは幻を使った分身の術を使うっす。魔法を使った事があれば、幻を幻と見破れるっす
毛羽毛現は火魔法を使うと簡単に燃え上がって倒せるっす
鬼火も強い風を吹き付ければ消せるっす
34 名前:三刀流が出来なかった剣士
知らなかったorz ひたすら刀で切ってたよ(ToT)
35 名前:一
ボスを倒すと門が現れて外へと行けるようになるっす
外には草原が広がっていて、遠くの方に街や森や塔なんかもあるみたいっす
36 名前:ぼっちの魔法剣士
希望が溢れる情報なんだが、ぼっちが悲しい…
37 名前:早撃ちの一発マン
ぼっちを解消する手段は無いか? お願いだ!!!
教えてぷりぃず!
38 名前:一
ボスを倒すと八十リットルのマジックバックを貰えるっす
住居も無料貸与されるんで、月額十二万払う必要も無いっす
あと、復活も実装されるようになるっす
39 名前:三刀流が出来なかった剣士
だ────!
羨ましくて、恨めしくなる───!
ウラウラウラウラウラ!
40 名前:一
魔法陣をダウンロードしたサイトって、同じ場所に二度目が行けたっすか?
41 名前:ぼっちの魔法剣士
え? どう言う事?
42 名前:三刀流が出来なかった剣士
行けたような気がするんだが…
43 名前:一
本物の魔法陣があるサイトは、青地にダウンロードボタンだけの、見るからに怪しいサイトだったっす
でも偽物は他に色々書いてあるんで、一目で偽物と判るっす
本物の方のダウンロードサイトに行こうとしても、二度目は行けなかったっす
44 名前:ぼっちの魔法剣士
確かに!!!
45 名前:一
偽物の魔法陣がインストされている状態だと、本物の魔法陣を使っても夢に入れないみたいっす
つまり、偽物のアプリはきっちり削除して、本物の魔法陣をしっかりインストール必要があるってワケっす
さらに、寝る前にしっかり魔法陣を見つめ、スマホを手に持ったまま眠らないとならないっす
46 名前:ぼっちの魔法剣士
スマホを握ったまま、と言うのはやってたけど
47 名前:三刀流が出来なかった剣士
あ、なんか希望が見えてきた
48 名前:一
でも気をつけて欲しいっす
本物サイトの見つけ方を広めると、有象無象がやってくる可能性があるっす
49 名前:早撃ちの一発マン
それ! マジで懸念事項なんだよな
50 名前:一
誰が作ったか? 何の目的で作ったか? と言うのも不明っす
今プレイしている皆さんは理解してると思うっすが、有象無象が後から文句を言って来るという鬱陶しい事態も懸念っすね
51 名前:三刀流が出来なかった剣士
デスゲームの可能性か
やっぱ、あるのか?
52 名前:ぼっちの魔法剣士
あるだろ
それを踏まえても、ゲームを辞めないんだけどな
53 名前:早撃ちの一発マン
確かに
54 名前:一
身内を誘うなら、そこんところ、しっかり話さないとならないっすね
55 名前:三刀流が出来なかった剣士
今までぼっちだったのは、何かと気楽だったと判ったな…
悲しいけど
56 名前:ぼっちの魔法剣士
いっつぁん所の状況はどんな感じなんだ?
57 名前:一
ウチのクラス二十四人中二十三人は確認したっす
一人は人付き合いそのモノが苦手で、来てるのに会いに来ない可能性があるっす
二十三人の内四人は調合師、錬金術師二人、鍛冶師で、陽平がギルドを作って囲ってるっす
58 名前:ぼっちの魔法剣士
生産職キタ───(°∀°)────!!!
59 名前:早撃ちの一発マン
生産職ってどうやって判明したの?
60 名前:一
チュートリアル特典で飾り装備を選んで、それを鑑定すると色々判るっす
61 名前:三刀流が出来なかった剣士
チュートリアル特典。俺はナイフを選んだ…
62 名前:一
チュートリアルの最後で、出てきたモンスターを剣で切り倒すと剣系、石を投げて倒すと魔法系、弓とかボウガンを使うと銃系、石を転がすとか何かを組むとかだとクラフト系みたいっす
63 名前:ぼっちの魔法剣士
色々とダメ出しされたような気分だ
64 名前:早撃ちの一発マン
俺魔法系だったorz
65 名前:三刀流が出来なかった剣士
俺は剣士で合ってた
66 名前:ぼっちの魔法剣士
先ずは俺たちで検証だが、いっつぁん、この情報はどうする? 一般公開するか?
67 名前:一
特に広めようとは思わないっす。でも身内を大量に巻き込んだんで、どこからか漏れるのは仕方ないと考えるっす。皆さんも誰かを招待するのなら、ある程度は広まる事を覚悟してくださいっす
68 名前:三刀流が出来なかった剣士
だな。無理に秘密にしようとしてギスギスするのも面白く無いからな
69 名前:早撃ちの一発マン
確かに
70 名前:ぼっちの魔法剣士
とりあえず俺は、行きたがってる友人を誘ってみる
71 名前:三刀流が出来なかった剣士
俺も、自己責任をしっかり諭してから誘ってみるか
72 名前:一
ボスを突破すると門が現れて外に出られるっす
外に出ると、森があって、そこに自分たちの街の門が見れるっす
俺たちの街の門にはビギナータウンJ・318と書いてあったっすけど、初めの突破者が名前を変更出来て、陽平が『J・318 夢見の街ミイヤ』に改名したっす
そして森には、鎖で縛られた、まだ扉が開いていない門が多数あったっす
73 名前:早撃ちの一発マン
それって、ボスを突破したら他の街のプレイヤーとも会えるって事か?
74 名前:ぼっちの魔法剣士
情報量が多すぎて、もうお腹いっぱい
75 名前:三刀流が出来なかった剣士
いかに俺たちが遊び切れていなかったか、が判っちまうな
76 名前:一
今晩。寝る前にまたお邪魔するっす。質問はその時に
77 名前:ぼっちの魔法剣士
情報感謝!
78 名前:早撃ちの一発マン
乙でした
79 名前:三刀流が出来なかった剣士
乙~♪
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「まぁ、こんなモンだな」
陽平は佐藤一の書き込みをみて、とりあえず必要な事は伝えたな、と納得した。
そこに電話が入る。
通話は小泉澪からだった。
「はい。浦安に住む桃姫です。配管工さんですか?」
『その人は大阪か京都にいるはずです。陽平君は見ましたか?』
「ああ、見た! アレは確かにUFOだった」
『いえ。掲示板の事です』
「仮面の書き込みなら、今、見終わった所だ」
『………』
「どうした?」
『いえ。会話のテンションが陽平君と佐藤君との会話の様だったので』
「ああ、仮面が書き込む前に電話してきたから、それが残ってたか。すまん」
『いえ。それなら問題は無いんです。内容的にも話し合ってた事だったので、一応見ているかの確認で電話しました』
「そっか。これから小泉さんの方にも誰かから確認の電話が行くと思うんで対応よろしく」
『あ、そうですね。いっそ全員に通知しちゃいます?』
「そこまで速報性は無いとは思うけどな。それこそ週明けに学校で話せば良い、って程度の話じゃ無いかな?」
『そうなんですよね。でも何で教えてくれなかったのか、と言われるのも』
「まぁ、今回は皆が知ってる内容を他のプレイヤーに教える、って程度だから態々教える必要性を感じなかった、と言えば納得して貰えそうだけどな。この先もネタバレを好むのと好まないのもいるから、全部を押しつけするのも問題だしな」
『ああ、少ないとは思いますが、やっぱり自分で謎を解きたいと言う人はいますよね。ではネタバレのスレを立てると言うのはどうでしょう?』
「それが無難かな。無責任な様だけど、あのゲームに関しては出来るだけ責任は取りたくない」
『確かにそれだけを聞けば無責任に聞こえますよね。でも本当に何があるか判らないワケですから、それが当然何ですよね』
「進行状況ならまだしも、場合によっては命に関わったりするからなぁ」
『はい』
掲示板関係は佐藤一に丸投げするつもりしか無い陽平は、小泉澪との通話が終わった後は趣味の楽曲漁りに没頭することにした。
陽平はフリーのBGM素材というサイトに投稿された自作曲の中から好みの曲をスマホにダウンロードして聴いている。
流行の曲というわけでは無いので話題には出来ないが、最近はプロ並みの曲も多くて、コレクションは陽平の密かな自慢になっている。
アップロードされた新曲になかなか好みの曲を見つけたので、先ずはパソコンにダウンロードしてからスマホへとコピーしようとした。
スマホのミュージックホルダーの中に作ったフリーミュージックというフォルダーにロードするのだが、ふと、操作を誤り画像フォルダーを押して開いてしまった。
まぁ、良くある押し間違えだ。
陽平も気にせず、戻してミュージックホルダーを開き直そうとした。
だが、その一瞬、陽平は画像フォルダーの中に一つの作った覚えの無いフォルダーを発見した。その名も『陽平』。
気になってフォルダーを開いてみると、中には何も保存されていなかった。
しかし、それが陽平の考えに確信を与える。だが確かな証拠は無い。そこで陽平は一つ戻り、ピクチャーフォルダーの中から昔に撮りまくったくだらない画像の一つを選んで陽平フォルダーの中に移動させた。
陽平自身も撮ったことを忘れていた、佐藤一が変な格好している画像だ。
「まぁ予想が外れても、これはこれで使えるだろ」
どのように佐藤一をからかうかを想像しながら、音楽データを保存していく。
結局夕飯まではいつもの休日の様に過ごしてしまい、なんとなく納得出来ないモノを感じる陽平だった。
「今日まで濃い毎日だったから、特に何も無い一日というのは持て余す感じだな」
たった四日だったはずだが、日中は眠気も無く、ぼーっと過ごすことも無かったので一日が長かった。それが、あえてぼーっと過ごせと言われても、今ではどのように過ごして良いかも判らない。
「充実している毎日と言えば言えるはずだが、精神的なリラックスは出来ているのか?」
緊張状態が長く続けばそれだけ疲弊する。肉体的に疲労は無くとも、精神がリラックス出来なければ、最悪寿命を縮める事にもなる。
「まぁ、一般と比べたら丸一日が一日半と同じだからなぁ」
得をしているのか、損をしているのか、微妙な気持ちになる陽平だった。
夕飯を終えて部屋に戻り、いつもの掲示板を開くとなかなか盛況な事になっていた。
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【陽平と愉快な仲間たち】
80 名前:二刀流魔法使い
ボスが討伐されたと聞いて
81 名前:孤独のすねこすり擦り
過去スレ呼んで泣きました
82 名前:ひとりMMO
誰か実践出来たヤツはいないのか?
83 名前:鈴木さん(美人女教師)ラブ
もちつけ! まだ夜になってない
84 名前:臆病者
この世界、何故か夜にしか行けないからなぁ
85 名前:ひとりMMO
デスゲームでも良い。誰かとプレイしたい
86 名前:孤独のすねこすり擦り
他のプレイヤーも良いけど、NPCとお友達になれるのかな?
87 名前:鈴木さん(美人女教師)ラブ
鈴木さん! 再誕希望!
88 名前:一
お待たせしました
89 名前:二刀流魔法使い
待ってた
90 名前:ひとりMMO
お待ちしてました。いっつぁん様様
91 名前:鈴木さん(美人女教師)ラブ
NPCは?
92 名前:臆病者
落ち着け! ドウドウ
93 名前:鈴木さん(美人女教師)ラブ
す、すまん。俺のリピドーが真っ赤に燃えてしまった
94 名前:二刀流魔法使い
気持ちは判る。が、あの世界ですけべぇな事が出来るか判らんだろうに
95 名前:一
あ、すんません。陽平によると強姦って出来るらしいです
96 名前:二刀流魔法使い
がたっ!
97 名前:ぼっちの魔法剣士
ガタッ!
98 名前:鈴木さん(美人女教師)ラブ
ガッ、ゴリッ! …………$=#(!=~¥(泣
99 名前:臆病者
お前ら 落ち着け
100 名前:一
今のところ飲み食いトイレは必要無い見たいっすけど強姦は出来るみたいっす
ただ二つ名システムがあるみたいっす
101 名前:三刀流が出来なかった剣士
それは俺も聞いた
称号とかが無いが、二つ名が表示されるとか
102 名前:一
っす
悪い二つ名ほど付きやすくって 強姦でもしようモノなら『強姦魔○○』とか呼ばれるようになるとか
103 名前:二刀流魔法使い
あ、ヤバかった
さしずめ『鈴木さん(美人女教師)ラブ』なら、『ストーカー 鈴木さん(美人女教師)ラブ』になるのか
104 名前:鈴木さん(美人女教師)ラブ
『いちゃラブ 鈴木さん(美人女教師)ラブ』とかにする!
するったらする!
105 名前:臆病者
うん、頑張ってね(遠い目)
106 名前:ぼっちの魔法剣士
そっか~、ガンバレ(優しい目)
107 名前:早撃ちの一発マン
犯罪は犯罪です。犯人は犯罪者だ!
108 名前:孤独の剣士
ストーカーのことは放っておいて、いっつぁん様、生産職のことに教えてくれ
109 名前:鈴木さん(美人女教師)ラブ
ストーカーちゃう!
110 名前:一
生産職のことについてはほとんど判って無いっす
でも魔法屋に行って調合や錬金に関する書物を買えば、誰でも成れる可能性があるみたいっす
書物を買って開いて読んだら、必要な道具が判ったとか言ってたっす
111 名前:孤独の剣士
錬金は先が長そうだが、調合は覚えておいた方が良さそうなんだよなぁ
112 名前:早撃ちの一発マン
ドラッグストアで薬は手に入るけど、イマイチ効果が遅いんだよな
あれじゃ、自然回復に毛が生えたぐらいの意味しか無い
113 名前:鈴木さん(美人女教師)ラブ
最近はすねこすりに擦られても、大したダメージも無いから、薬も使って無かったなぁ
114 名前:ぼっちの魔法剣士
どのくらいのレベルなら行けるか、とか考えていたからレベルだけは上がったよな
115 名前:一
レベルも高く、金も持ってるなんて羨ましっす
イタチ、毛、火にタコ殴りされても平気なら、化け猫退治出来そうっすね
116 名前:三刀流が出来なかった剣士
あっ、確かに
でも、レベルで相手の強さが変わるとかは無いか?
117 名前:ぼっちの魔法剣士
毛は絡みついて動けなくなるとか、あったと思うが
イタチは結構痛かった
118 名前:孤独のすねこすり擦り
絡みついて状態異常(小)だったな。だが直ぐ治るし特に気にする程でも無かったが、集団戦だと意味が大きいか
119 名前:三刀流が出来なかった剣士
それだ。やっぱ、少なくとも二人以上はいた方がいいか
120 名前:ぼっちの魔法剣士
俺、リアルな友人が一人、今晩試して見るって言ってた
もしかしたらぼっち卒業かも
121 名前:臆病者
ダウト!
122 名前:早撃ちの一発マン
ダウト!
123 名前:三刀流が出来なかった剣士
いや、イマジナリーフレンドと言うモノがあるらしいから、一概にダウトとは言え無いかも
124 名前:ぼっちの魔法剣士
いるモン! 本当に生きた人間の友達だモン!
125 名前:一
あ、俺、そろそろ寝る支度を…コソコソ
126 名前:臆病者
お、俺も…
127 名前:三刀流が出来なかった剣士
じゃ、じゃぁ俺も ソソクサ
128 名前:ぼっちの魔法剣士
い、いるモン!(泣)
129 名前:一
じゃあ、夢の中で会いましょうwww
130 名前:孤独なすねこすり擦り
おやすみー
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「まぁ、実際に変化があるのは今夜以降か」
それにしても、と陽平は思う。
毛羽毛現が絡みついて状態異常を引き起こすことは知らなかった。知っていても知らなくとも結果は同じだった、とは言えるのだが、一人の時に油断していたらそれで終わりだった可能性もある。
まだ始めたばかりの四日目でボスを突破するのは時期尚早だった思いが強くなる。
ほぼ不可抗力ではあるけれど、勢いで進めるのもかなり危ういと再確認させられた。
○★△■
「と言うワケで、攻略を進めるのでは無く、ここで一旦立ち止まってレベル上げと金稼ぎを行いたいと思います」
陽平は眠りにつき、夢の中のゲーム世界へと入った折、小泉澪、鈴木千佳、中村梓、吉田恵、斎藤董子、岡田小梅を前にしてそう言った。
「陽平。と言うワケで、のワケが判らん」
まず代表として鈴木千佳が一番の疑問をぶつける。
「ぶっちゃけると、家に置くその他諸々を購入する費用を稼ぎたいから、ボスとか周回してみたいと思った」
「うん、なるほど。賛成」
「そのついでに生産職の四人のレベル上げと金稼ぎもすれば一石二鳥という、児童公園の砂場に掘ったトンネルよりも深い深謀遠慮が有ってのことだー! だー! だー」
「はーい、皆-、装備確認してねー」
「フォーメーションは昨日と同じだけど、撃てるならドンドン撃っちゃってねー」
鈴木千佳と小泉澪が生産職四人に指示する。
「昨日ぐらいから俺に対してちょっと冷たい気がするのは気のせいか?」
「気のせい、気のせい。さっさと稼げるとこに行っちゃって」
納得のいかない顔をしながら背中を突っつかれ、陽平は先頭を歩き出す。そして単体の敵モンスターが現れたら槍の石突きで強引に押さえつけ、生産職の四人に剣鉈を振るう練習をさせたりしながら進んだ。
向かうのはボスエリア。ボスの周回が可能か確認するためだった。まぁ、もしも周回が不可能であれば、敵モンスターが複数出てくる場所で経験値を稼ぐつもりだった。
そしてボスエリアに突入。
ボスは昨日と同じ構成だった。
大型犬の成犬と同じぐらいの化け猫を陽平が牽制している間に毛羽毛現などの取り巻きを六人の女子が対応。そして最後に化け猫を皆で袋だたきで倒した。
倒した後のドロップは二十グラムの金のインゴットだった。大凡で約十六万也。
これは美味しいと思った陽平たちだが、直ぐに次のボスとの再戦は出来なかった。おそらくボス自体も復活するのにある程度の時間が必要で、場合によってはクラスメイトのボス攻略を邪魔する事になるかも知れないと結論。
結局ギリギリのラインを見極めつつ、ボス以外の敵モンスターを狩り回る事にした。
そして例によって鈴木千佳が飽きたと連呼する頃には、生産職四人だけで河童二匹の戦闘をこなせるぐらいにはなった。
頃合いと見た陽平と小泉澪の判断で、門を出て外の敵との戦闘を経験することにした。
昨日は門のある森を一回りしただけだが、一回も戦う事は無かった。おそらく森の周囲は安全圏という扱いなのだろう。その安全圏の範囲も調べる必要があるため、一度戦ってみようと言う事になった。
そして森から少し離れた場所で敵と遭遇。
それはスライムだった。
アメーバ状では無く、半液体的で、液体の表面張力で丸く饅頭の様な形をした形状。目どころか、口や耳も無い。全体が均一な丸い塊、と言う印象だ。
「粘菌じゃ無く、クラゲの一種と考えれば良いのかもな」
「なるほど。陸上に特化して、触手の代わりに体表が消化器官になったと考えれば納得ですね」
「で、どうすれば良い? 撃って良いの?」
「粘菌だと銃なんか効かなかった可能性があるが、クラゲならダメージあるかな。試しに撃ってみて」
「おっけー。行っくよぉ」
鈴木千佳が合図と同時に二発の銃弾を撃ち込む。そしてスライムはあっという間に弾け飛んだ。
「水に石を投げ込んだ様に弾けたな。形状からすると当たり前なんだが、なんだか弱くない?」
「そうですねぇ。まるでRPGゲームの最初の敵の様な感じです」
そしてドロップを探してみたが、これといって目立ったモノは何も無かった。
さらに敵モンスターを探して進むが、同じスライムばかりだった。しかし進みすぎて、ビギナータウンがある森が見えなくなりそうな距離に来た時に変化があった。
スライムでは無く、家ネコの成猫ぐらいの大きさがある蟻だ。しかも三匹。
「真ん中俺。左右銃と魔法」
陽平が最短の言葉で指示を出して真ん中の蟻目掛けて突っ込む。
先ずは突きを入れて一気に致命傷を取りに行くが、固い甲殻で弾かれてしまった。その返しを利用して石突きで横っ面を叩こうとするが、これも失敗。
しかしその体勢を利用してジャングルブーツで蟻の顔面を蹴り上げた。
結果として陽平はバランスを崩してしまったが、たたらを踏んだ程度で取り戻せた。
陽平と蟻の次の一手が重なる。
槍の振り降ろし。そして突進しての噛みつき。
ギリギリ陽平の槍が早かった。しかし、蟻の頭の甲殻をヘコませる程度だった。
昆虫類が痛みを感じるかどうかは議論の余地があるが、少なくともこの蟻は怯むこと無く噛みつき攻撃の勢いは緩まなかった。
一度叩き付けたせいで跳ね上がった槍を、今度は脚に向かって振り降ろす。そして噛みつき攻撃にはブーツで防御。今度は蟻の脚を叩き切ることに成功した。
陽平は蟻との戦闘が長引きそうな気配に焦った。蟻は三匹いた。そのうちの一匹に陽平は手こずっている。他の二匹は?
「陽平。援護しようか?」
そこに鈴木千佳の落ち着いた声が掛かった。
一瞬だけ視線を後ろに回すと、二匹の蟻は煙を上げて燃えていた。おそらく火の魔法で倒したのだろう。残す所は陽平の相手をしている一匹だけだった。
「大丈夫! 今、決着を付ける」
陽平は援護を断ると、蟻の頭を蹴飛ばし後ろに下がり、槍を蟻に対して真っ直ぐ構えた。
そして突進してくる蟻に対して正中の突きを叩き込む。
狙いは頭のヘコんだくぼみ。先ほどは円形によって突きが逸らされたが、今度は引っかかりがある。そこに槍先を突っ込ませた。
そして見事貫通。
しかし、ただ貫いただけでは死なない。なので突き刺したまま蟻を持ち上げ、振りかぶってから地面に叩き付けた。さらに抜けた槍を突き刺しまくる。
蟻は悶えて暴れたが、攻撃では無いので刺し難いという程度の抵抗でしか無かった。
途中から陽平も攻撃では無く実験という感じで、槍を叩き付けたり、蟻の頭と胴を切り離したりもした。まるで残酷な子供のような遊びだが、頭を突き刺されても首を落とされても、蟻は悶えて動いていたのを見て他の六人もその恐ろしさを実感していた。
「この大きさでこのしぶとさ、ってのは恐ろしいな」
「大人の猫ぐらいの大きさでしたが、もっと大きいとかなり危険ですね」
「蟻だったからこの程度だったが、蜂とか蜘蛛だとかなりキツくなるな。とりあえずこの蟻は燃やしておこう」
陽平がそう言うと、直ぐに小泉澪が火の魔法で蟻の残骸を燃やした。
「やっぱ、大口径の銃が必要っしょ!」
「使い切れない武器は脚を引っ張るだけだと、何度も言うが、まぁレベルアップは必要か。俺も槍じゃ無くハルバートぐらいは欲しくなったしな」
「アタシには何が良いと思う?」
「うーん、マグナムはまだ早いと思うし、ここはショットガンとか試して見たらどうかな? 敵モンスターが大物になって来たらどうせ使う事になるはずだから、この機会に慣れておくのも良いと思う」
「ショットガンって、散弾銃ですよね? 一度に何発ぐらい出るんですか?」
「使う弾は自分で選べる。砂粒ぐらい細かいのがいっぱい詰まった弾とか、十何発とか数発とか。中には丸い弾丸一個というのまである。一度に出る弾が多い程範囲が広がるが、一つ当たりの威力は下がる、ってのはまんまだな。威力は無くとも範囲が広いのは競技用って感じで、一発だけってのは熊とかイノシシ用って言われてる」
「なんか、始めからショットガンでも良かった様な気がしますが」
「拳銃と比べると連射がしにくいし、すねこすりが出てくる距離とかだと、弾はほとんど広がらないからな。どうせ慣れていないのなら拳銃で数撃った方が当たると思ったが、これは、まぁ、個人の資質の問題もあるかもなぁ」
ショットガンを構える格好をする陽平。そしてポンプアクションをするジェスチャーをして、構えて、引き金を引いてズドンと言う。そしてまたポンプアクションをして、構えて、引き金を引く。
慣れない内だと、ショットガンで二発撃つ時間で、拳銃を四発ぐらい撃てそうだった。
「なるほど」
「それにやっぱ、散弾だとフレンドリーファイアーも怖いしな」
「それが一番だったみたいですね?」
「当然」
大凡の方針が決まった所で、ビギナータウンである夢見の街ミイヤに戻る陽平たちだった。